この記事を読んでいる方の中には、喫煙者が一定数いらっしゃるのではないでしょうか。以前は吸っていたけど禁煙に成功した、という方もおられるかもしれません。中には、禁煙することは諦めて、せめてアイコスやグロー、プルーム・テックなど、いわゆる「新型タバコ」に変えたという方もちらほら……。

「紙巻きタバコと比較して、健康への被害がずっと少ない」といわれている新型タバコ。しかし、本当にそうなのでしょうか。先日、WHO(世界保健機関)が、以前から疑問視されていた「電子タバコの健康的被害」について、見解を発表しました。ここでは、その詳細をご紹介するとともに、電子タバコや加熱式タバコは健康に害を与えるのかどうかを見ていきましょう。

電子タバコと加熱式タバコ

まとめて「新型タバコ」と呼ばれている電子タバコと加熱式タバコですが、この2つを混同してしまっている方も多いのではないでしょうか。

電子タバコとは、VAPE(ベイプ)とも言い、リキッドと呼ばれる香り付きの液体を加熱して霧状にしたものを吸う器具です。法規制の関係で、日本国内で販売されている電子タバコリキッドには、ニコチンが含まれていません。

一方で加熱式タバコとは、タバコの葉を加熱して発生した蒸気を吸い込むもので、ニコチンが含まれています。この2つは似ているためによく混同されますが、まったく別のものです。日本でよく知られている、先に挙げたアイコスなどの3つの新型タバコは、加熱式タバコに分類されます。

電子タバコや加熱式タバコに対するイメージ

そもそも電子タバコや加熱式タバコについて皆さんはどういった印象を抱いているのでしょうか。ネット上でよく見られるのは、次のような意見です。

「禁煙への足掛かりとして吸う」
「まわりに迷惑が掛からないように紙のタバコから変えた」
「ストレスで禁煙に失敗しちゃって」

新型タバコの多くは、「紙巻きタバコと比較して、健康への被害が少ない」というのを売りにしています。そのため、「禁煙への第一歩」や、「受動喫煙という形で周りに迷惑をかけないように」といった理由で、紙巻きたばこから電子タバコに変更する人も多いようです。

しかし、これに対して否定的な意見も見られます。

「どんな害があるのか正確にわかっていない」
「電子タバコなら禁煙の場所でも吸うことができるのは疑問」

場所によっては、禁煙であっても新型タバコであれば吸うことが許可されているところがあります。健康的被害があるかどうか明確にされていないものを公共の場で利用することに対して、不快感を抱く人も少なくないようです。

WHOの見解は?

ここからは、海外における電子タバコ(ニコチンが含まれないVAPEは除く)に対するWHOの見解を見ていきましょう。このあとご紹介するWHOの見解において「電子タバコ」とされているものは、日本の電子タバコとは異なり、新型タバコの中でニコチン等の有害物質が含まれるものを指しています。そのため、有害物質が含まれないVAPEはその対象から外れているので、注意してください。

2016年9月に発表された日本禁煙学会の「電子タバコに関する世界保健機関報告書」によると、「喫煙よりは害が少ないかもしれないが、本当のところは未解明である」という報告が見られます。電子タバコであれば、有害物質が多くは含まれていないから健康に被害を及ぼすことはないだろう、と楽観視してはいけないことは、少なくとも以前から指摘されていたようです。

しかし、2019年7月26日、WHOは最新の報告で「電子タバコは明らかに有害であり、取り締まりの対象とするべきである」と言明しました。発表によると、「ニコチンを含んでいるのであれば、確実に人体に有害であるため、具体的なリスクの定量化はまだできていないが、取り締まりをするべきである」ということでした。これまで、電子タバコの有害性についてはあいまいな見解を示していましたが、はっきり「規制すべきだ」と断言したのです。

先ほども述べたとおり、この報告はニコチンを含まないVAPEは対象とされておらず、日本国内における「新型タバコ」にむやみに当てはめてしまうのは、やや短絡的ではあります。とはいっても、先にも触れたように、アイコス等は加熱式タバコに分類され、ニコチンも含んでいます。そのため、日本とはまったく無関係の話だともいえません。

新型タバコをめぐる研究の実際のところ

新型タバコの有害性については、未だ研究段階にあるといわれています。無害と断定することはなかなかできませんが、かといって有害である根拠や、具体的なリスクを断定することもできていないというのが実際の状況です。

しかし、日本呼吸器学会の見解によると、電子タバコ・加熱式タバコには、「エアロゾル」という健康に害を与える可能性のある物質が含まれているとされていて、「紙巻きタバコよりも健康的被害がずっと少ない」という一般的なイメージには、疑いの余地があるようです。

また、新型タバコを用いた禁煙の有効性も疑われています。国立がん研究センターが2017年12月12日に報告した、「紙巻きたばこの禁煙方法と有効性の調査」の結果によると、「電子タバコでの禁煙は有効性が低い」とされています。電子タバコや加熱式タバコを使って禁煙をすることは、多くの人が思っている以上に有効性がないのかもしれません。

ここまで見てきたように、電子タバコ・加熱式タバコには、ニコチンやタール以外の有害物質が含まれている可能性があり、また「禁煙に役立つ」というイメージも覆されています。「紙巻きタバコよりずっと健康的だから」という理由で新型タバコを選んでいた人にとっては、むやみに頼るのも考えものかもしれません。

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