5月も下旬を迎え、日中は汗ばむ陽気の日が増えてきました。
夏のレジャーや帰省の計画を立て始める方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、依然として続く物価高の影響で、日々の家計のやりくりに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
老後の暮らしを支える重要な収入源である公的年金は、来月の6月15日に4月・5月分が支給される予定です。
この記事では、70歳代の二人以上世帯に焦点を当て、貯蓄額の平均や中央値、年金の受給額、そして実際の生活費について、公的なデータを基に詳しく解説していきます。
ご自身の状況と照らし合わせながら、今後のライフプランを考えるきっかけにしてみてください。
1. 70歳代・二人世帯の貯蓄事情|平均額と中央値はどのくらい?
はじめに、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」から、70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額を見ていきましょう。
この調査には、金融資産を保有していない世帯も含まれています。
※ここでいう金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険なども含んだ金額です。
ただし、日常的に出し入れする普通預金の残高は含まれていません。
調査結果によると、「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は2416万円でした。
しかし、この平均額は一部の資産を多く持つ富裕層によって引き上げられている可能性があり、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
より実態に近いとされる中央値は1178万円です。
これは、多くの世帯の貯蓄額がこの金額周辺に集まっていることを示しています。
世帯ごとの詳しい貯蓄額の分布は、以下の通りです。
- 金融資産を保有していない:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100万円~200万円未満:5.1%
- 200万円~300万円未満:3.7%
- 300万円~400万円未満:3.9%
- 400万円~500万円未満:2.9%
- 500万円~700万円未満:6.4%
- 700万円~1000万円未満:6.7%
- 1000万円~1500万円未満:11.1%
- 1500万円~2000万円未満:6.7%
- 2000万円~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
70歳代の二人以上世帯のうち、金融資産を全く保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ」の世帯は10.9%にのぼります。
その一方で、3000万円以上の金融資産を持つ世帯が25.2%も存在しており、資産状況に大きな格差があることが見て取れます。
分布を見ると、貯蓄額が300万円未満の世帯が合計で17.2%いる一方で、1000万円以上の資産を持つ世帯も多く存在します。
このように、老後の貯蓄額は現役時代の収入や退職金の有無、相続、健康状態など、さまざまな要因によって大きく変わってきます。
公的年金の受給額も、これまでの加入状況によって個人差が生じます。
もし貯蓄が少ない場合、年金収入だけで生活を維持していくのは難しいかもしれません。
老後の生活を安定させるためには、それぞれの世帯の状況に合わせた生活設計が不可欠です。
例えば、健康であれば短時間の仕事を続けて収入を確保したり、資産運用による収入を考えたりするなど、早めに準備を進めることが将来の安心につながるでしょう。
2. 厚生年金と国民年金の受給額はいくら?平均と分布をチェック
次に、厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、厚生年金と国民年金の平均的な受給月額を確認します。
厚生年金にはいくつかの種類がありますが、ここでは主に民間企業の会社員などが加入する「厚生年金保険(第1号)」のデータを取り上げます。
※この記事で紹介する厚生年金の月額には、基礎年金である国民年金の部分も含まれています。
2.1 厚生年金の平均受給月額
- 全体平均:15万289円
- 男性平均:16万9967円
- 女性平均:11万1413円
2.2 厚生年金の受給額別・人数分布
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
3. 国民年金(老齢基礎年金)の受給額はいくら?平均と分布を確認
続いて、自営業者や専業主婦(主夫)など、厚生年金の加入期間がない方が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額を見ていきましょう。
3.1 国民年金の平均受給月額
- 全体平均:5万9310円
- 男性平均:6万1595円
- 女性平均:5万7582円
3.2 国民年金の受給額別・人数分布
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
仮に、「厚生年金の平均額を受給する夫」と「国民年金の平均額を受給する妻」という夫婦モデルで考えてみます。
この場合、世帯の年金収入は月額で合計22万7549円(16万9967円 + 5万7582円)となります。
月額約23万円の年金収入で、夫婦二人の生活費をまかなうことはできるのでしょうか。
4. 65歳以上・夫婦のみ無職世帯の家計簿|1カ月あたりの生活費は?
総務省統計局が公表する「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を参考に、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」における標準的な家計収支をみてみましょう。
4.1 収入の内訳:月額25万4395円
■うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
4.2 支出の内訳:月額29万6829円
■うち消費支出:26万3979円
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
■うち非消費支出:3万2850円
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
4.3 毎月の家計収支は赤字?
- ひと月の不足額:4万2434円
- エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.9%
- 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):119.2%
このモデル世帯の月間収入は25万4395円で、その大半を公的年金などの社会保障給付が占めています。
それに対して、月間の支出は合計で29万6829円です。
支出の内訳は、食費や光熱費といった生活に直接かかる消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円となっています。
収入から支出を差し引くと、毎月4万2434円の赤字になる計算です。
この不足分は、これまでに貯めてきた貯蓄などから補填する必要があります。
年間に換算すると、約51万円を貯蓄から取り崩していくことになります。
シニア世代は現役時代のように安定した収入を得るのが難しくなるため、このような慢性的な赤字は、長期的に見ると貯蓄を大きく減らしてしまう原因になりかねません。
現在の貯蓄額を把握したうえで、家計の支出を見直したり、健康状態に合わせて短時間でも働いたりするなど、できることから対策を講じることが、老後の生活を安定させる鍵といえるでしょう。
5. まとめ:70歳代の家計と老後資金計画
今回は、70歳代の平均貯蓄額や世帯ごとの分布について解説しました。
平均貯蓄額は2416万円である一方、中央値は1178万円と、世帯間で資産状況に大きな開きがあることが明らかになりました。
また、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見ると、平均して毎月約4万円の赤字が発生している状況です。
もちろん、これらの数値はあくまで平均であり、実際の生活費は個々のライフスタイルによって変動するため、赤字額がさらに大きくなる可能性もあります。
「将来もらえる年金額で、自分たちの生活はまかなえるのか」という点を、なるべく早めに確認しておくことが大切です。
早い段階で現状を把握できれば、不足分を補うための対策も余裕をもって始めることができます。
この記事が、ご自身の老後について考える一つのきっかけとなれば幸いです。
※当記事は再編集記事です。



