大幅安を招いたパウエル議長とトランプ大統領の発言

2019年8月2日の日経平均株価の終値は、前日より453円83銭安の21,087円16銭となりました。下げ幅は3月25日(650円)以来、約4か月ぶりの大きさで、令和に入り最大です。午後には一時、節目となる21,000円も割り込みました。

背景は大きく2つ。まず31日、米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、約10年半ぶりに政策金利を0.25%引き下げました。市場では織り込み済みでしたが、パウエルFRB議長が記者会見で、「長期的な利下げ局面ではない」と発言したことから、投資家からは追加緩和に積極的ではないと見られ、同日の米国株は大幅に下落しました。

もう一つの下げ要因はまたもやトランプ米大統領の一言でした。トランプ氏は1日、中国からの約3000億ドル相当の輸入品に「第4弾」の追加関税を課す方針を示しました。米中貿易摩擦が再燃すると懸念され、1日の米株式相場は大幅に下落し、日本株も連れ安となりました。

今週以降の動きはどうなるでしょうか。心配なのは、これまで最高値を更新し続けていた米株が明らかに調整局面に入ったことです。2日のダウ平均は前日比98ドル安の26,485ドルとなり4日続落となりました。1週間で700ドル以上下げたことになります。日本株は上昇局面では米株と比べて出遅れ感があるのですが、下降局面ではむしろ敏感に反応します。

もう一つ注意すべきは為替相場です。前週末の円相場は1ドル=108円後半でしたが、利下げ観測の後退や対中関税「第4弾」の発動で、ドルが売られ円が買われて、1ドル=106円中盤まで、2円あまりの円高となりました。輸出関連企業などの業績に影響が出るだけに、週初から日本株が売られる展開になることも予想されます。

ただ、マイナス材料が多いにもかかわらず終値ベースでは21,000円台に踏みとどまっていることから、投資家の間でも売り買いが拮抗していると見られます。まずは週初の動きを見極めたいところです。

主要な移動平均線を割り込むが、21,000円付近では買い戻しも

先週の日経平均の値動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。前週は週初から陽線となって上昇。25日移動平均線、75日移動平均線、200日移動平均線と、主要な移動平均線をすべて突破しました。そのまま高値圏でもみ合う動きが続いていましたが、7月31日にはローソク足の実体が25日線を割り込みました。

8月1日にはさらに、大きく窓をあけて下落し、75日日線も下回りましたが引けにかけては回復しました。しかし2日にはまた窓をあけて下落。今度は陰線引けとなり、戻りませんでした。

今週以降の展開はどうなるでしょうか。大きく下落したことからさらに調整が進むという見方もありますが、注目すべきポイントは、目先意識されやすい21,000円付近ではしっかりと買いが入って下値がサポートされていることです。

直近の安値である7月18日の安値(20,993円)を一時割り込む動きもありましたが、すぐに回復しました。2日のローソク足も下ヒゲが長く、このあたりでは押し目買いが入っていることを示しています。

今週は方向感が出しづらいところですが、まずは21,000円を割るかどうかが判断のポイントになるでしょう。ここを下抜けると、目立った節がなく、6月4日の安値(20,289円)あたりまで、するすると下がってしまう可能性があるので注意が必要です。

逆に、21,000円で下値サポートされたことから、今週、上昇して始まることも考えられます。その場合の上値メドは、8月1日と2日の間の窓埋めとなる21,361円、目先意識されやすい21,500円あたりになるでしょう。

下原 一晃