貸金業法や銀行法、労働基準法との関係などは、会社と給与前払システムの運営会社が決めることなので、利用する従業員としては特に気にすべき点ではないでしょう。
従業員が給与前払システムを利用するときに心にとめておきたいことは、何より計画性を喪失させないことです。キャッシングを利用する際にも、「ご利用は計画的に」ということが決まり文句となっています(そもそもキャッシングを利用する時点で、半分くらい計画性が喪失していると思うのですが…)。
月1回で支払いを受ける給与にも、それなりの意味はあります。手取りの枠内で、毎月の家計を回していくということは、計画的にお金を使っていくことと不可分のことです。
たとえば一人暮らしであれば、決められた日に給与が振り込まれて、それを貯蓄や、家賃、食費、電話代、水道光熱費代、クレジットカードの引き落としなどに割り振って、残ったお金を自分へのお小遣いとして1カ月を過ごしていく、というように、自分で自分のお金の計画を立てて、割り振っていくということが必要なのです。
このように、月1回で給与が振り込まれるということは、計画立てて家計を組み立てていくうえで、非常に重要な要素なのです。
その点、給与の前払システムは、あくまで自分へのお小遣いを前借しているのだという意識をもって利用することが重要です。つまり、もともと立てている家計のやりくりを崩さないように行うことが大切なのです。
普段キャッシングなどは利用しないような人も、給与の前払システムがあまりにも便利ということで利用しすぎて、家計の固定費部分を侵食してしまうと、それこそキャッシングの利用につながってしまうかもしれません。たとえば、冠婚葬祭費が必要な時だけ使う、ボーナスの月だけ使うなどというように、自分なりにルールを決めて給与の前払システムを利用していくのがよいでしょう。
「老後は2,000万円必要」などという言葉が話題になりました。この金額の是非はさておき、お金を貯めるためには、自分を律するということと、計画性を持つということが大切なのです。
渋田 貴正