選挙には、公費ではなく候補者本人が負担する費用も発生します。

参議院議員選挙では、「選挙区」の候補者で3,000~6,000万円程度(16年の選挙ベース、選挙区により異なる)、「比例区」の候補者で5,200万円が、「選挙運動法定費用額」として支出額の上限に定められています。

具体的な支出項目は、選挙事務所の家賃、人件費、通信費(電話、FAX)、印刷費、広告費、などなど。

ただし、これは、「選挙期間」(参議院議員選挙では17日間)のみの費用です。

「選挙活動」(特定の選挙に特定の候補者を当選させるための活動)は選挙期間にしかできず、選挙期間外で「○○選挙では××候補に一票をお願いします!」なんてことを言うのはNGです。

しかし、選挙活動以外の「政治活動」は、選挙期間前から行うことができます。実際には選挙の数カ月前から事務所を構え、政治活動をするのがほとんどです。

選挙制度は変わる?インターネット投票の是非

これだけ膨大なコストのかかる選挙ですが、選挙制度は変わるのでしょうか?

選挙カー、ポスター、ビラ、ハガキ・・・若い方々から見れば、古い政治の象徴のように感じるかもしれません。最近は、SNSを中心に政治活動の報告を行う政治家も増えてきており、SNSが政治活動において重要なツールとなりつつあります。

選挙活動においても、13年にSNSの活用が解禁となりました。

しかし、「選挙活動」=集票という意味では、SNSはまだ活動のメインにはなっていません。SNS上の不特定(ツールによっては匿名)の人々よりも、選挙区に住んでいる有権者に直接訴える方が、やはり選挙には有効であると考えられるからです。

また、大きな声で名前を連呼し、「うるさいだけ」との批判も多い「選挙カー」ですが、「集票」には一定の効果があるという有名な実験結果(※2)もあり、使わないという選択肢をとることは、なかなか難しいのが現実です。

選挙では、情勢は刻々と変わり、事前予測がくつがえされることもあります。候補者としては、「当選に繋がる可能性がある活動は、全てやりたい」と、選挙カーも使うし、ビラもハガキも上限まで出す、SNSも毎日更新と、できることをフルでやらざるを得ません。

ルールとして一斉に制限・縮小化しない限りは、戦線が縮小することはありません。

一方で、投開票については、早ければ次回の参議院議員選挙から、まずは海外に住む日本人を対象に、インターネット投票の試行が検討されています。

セキュリティの観点などで課題も指摘されていますが、本格的に導入されれば、投開票にかかるコストは大きく削減されるはずです。

そして、それはまた、現役世代の投票率の向上に貢献することはもちろん、今後の高齢化社会を考えても、投票所まで足を運ばなくても投票できる仕組みを導入することは必須であると考えます。

おわりに

選挙には巨額の公費がかかっており、今後、コスト削減を含め、時代に応じた制度の見直しは検討される必要があります。

一方で、その巨額のコストを最終的に負担している私たち国民は、選挙を通して、自分たちの意思表示をしっかりと行っているでしょうか?7月21日に実施された参議院議員選挙では、投票率は48.8%と、全国規模の国政選挙では24年ぶりに50%を割る低水準となりました。

これだけ膨大な公費をかけて実施される選挙です。日本の未来のためにも、一票を無駄にしないで、必ず選挙に行ってほしいと思います。

【参考】
 ※1「第24回 参議院議員通常選挙 発表資料『参議院議員通常選挙結果調』」総務省
 ※2「選挙カーの名前連呼、効果どれほど? 教授が実際に研究」朝日新聞デジタル

広瀬 まき