世界的な物価高が長引き、家計への負担が重くなるなか、政府・与党内で「給付付き税額控除」の議論が進んでいます。

給付付き税額控除は単なる現金給付ではなく、税額控除を基本に控除し切れない分を給付で補う仕組みです。では、いつから始まって、全額が現金給付になるのはどのような人なのでしょうか。

そこで今回の記事では、給付付き税額控除について、最新動向と基本的な仕組みについてお伝えします。記事の後半では、想定される給付パターンについても紹介しますので、さっそくみていきましょう。

1. いつから始まる?現時点では「未定」

給付付き税額控除の開始時期は、現時点では、まだ決まっていません。政府は社会保障国民会議などで制度設計を進めており、高市総理も導入に意欲を示しています。

一方、有識者会議では、年末調整と確定申告の仕組みを活用した給付付き税額控除であれば、早ければ来年から実施できるという案も示されています。

「早ければ来年」という見方はあるものの、話し合いが進行している段階であり、政府が開始時期を正式に決定したわけではありません。制度の詳細や実施時期は今後の議論次第になりそうです。

1.1 消費税減税の話はどうなった?

高市総理は、給付付き税額控除が施行されるまでの対応として、食料品にかかる消費税を2年間に限ってゼロにする案にも言及しています。

消費税をゼロではなく1%にする案なども出ていますが、現時点では課題や方向性を整理・議論している段階で、実現に向けた本格的な議論は行われていない状況です。

消費税をゼロにする場合、レジや会計システムの改修など、インフラ面での対応に加え、法改正や代替財源の確保が必要になります。外食産業からは客離れにつながるとの懸念が示されており、実現への課題は山積している状況です。

仮に実現できたとしても、納税額の多い高所得者も恩恵を受けやすくなります。低所得世帯を支える制度として最適かどうかは見極める必要があるという意見もあります。

2. おさらい|給付付き税額控除とは?

給付付き税額控除とは、所得税などの税額から一定額を差し引き、それでも控除しきれなかった分を現金給付として受け取れるようにする制度です。

税制には、大きく分けて「所得控除」と「税額控除」がありますが、給付付き税額控除は、このうち税額控除をベースにしています。

【所得控除と税額控除】

  • 所得控除:課税対象となる所得そのものを減らす仕組み
  • 税額控除:計算された税額から直接差し引く仕組み

まずは税額から一定額を差し引き、それでも控除しきれない場合は、給付するという仕組みです。

所得税を一定額支払っている方には「減税」として効果が出ます。一方で、所得が低く所得税額が少ない方や非課税の方は、控除しきれなかった分が給付として受け取れる可能性があります。

あくまで制度の中心にあるのは税額控除であり、給付はその仕組みの一部です。そのため、給付付き税額控除は、一律に現金を配る給付金制度とも、単純に税率を下げる減税策とも特徴が異なります。

「減税か、給付か」という二択ではなく、所得や納税状況に応じて、支援の届き方が変わる制度として捉えるとよいでしょう。

3. 全額が現金給付になる人は?3つのパターンで確認

給付付き税額控除は、所得や税額によって、支援の受け取り方が異なります。

制度の基本は、所得税などから一定額を差し引く税額控除です。控除額が税額を上回る場合には、控除しきれない分を給付する仕組みが想定されます。

ここでは、控除額を10万円と仮定し、受け取り方を3つのパターンで見ていきましょう。以下は税額控除の考え方をモデルケースとして示したものです。

3パターンの例1/1

給付の受け取り方3パターンの例

出所:LIMO編集部作成

3.1 ① 所得税額が30万円の場合

所得税額が30万円ある方は、10万円の税額控除をすべて「減税」として使い切ることができます。この場合、税額は20万円に減り、給付は発生しません。

3.2 ② 所得税額が8万円の場合

所得税額が8万円の方は、まず8万円が税額控除として差し引かれます。控除額10万円との差額である2万円は給付として受け取る形が想定されます。減税と給付の両方の組み合わせになる可能性があります。

3.3 ③ 非課税世帯の場合

非課税世帯は、所得税をほぼ支払っていないため、税額控除による減税効果を受けることができません。そのため、控除額10万円の全額給付が想定されます。

給付付き税額控除は税負担がない方ほど、給付の比重が高くなるのが特徴です。同じ制度でも、所得や納税額によって「減税」と「給付」の割合が変わる点を理解しておきましょう。

4. 給付付き税額控除が導入されたら?手続きや生活への影響

給付付き税額控除は、所得や税額に応じて減税額や給付額が変わる制度です。そのため、実際の運用では、所得や納税額を正確に把握する仕組みづくりが必要になるでしょう。

導入にあたっては、年末調整や確定申告の仕組みを活用する案も議論されています。会社員であれば年末調整、自営業者や副業収入がある人は確定申告を通じて、控除額や給付額を調整する可能性もあります。

一方で、速やかな給付には、マイナンバー制度との連動などのシステム整備が必要になるほか、安定した財源の確保や国民側の申告負担も課題となります。

給付付き税額控除は、まだ検討段階です。今後も引き続き、制度の具体化について見守る必要がありそうです。

5. まとめ|給付付き税額控除、消費税ゼロは議論の行方に注目

今回の記事では、給付付き税額控除について、最新動向と基本的な仕組み、想定される給付パターンについて紹介しました。

給付付き税額控除は、給付と減税のどちらか一方では対応しきれない状況を背景に議論されている制度です。制度上は幅広い所得層が対象となりますが、減税と給付を組み合わせることで、納税額がある方、税負担が少ない方、どちらにも支援を届けることができます。

支援の形は一律ではなく、所得や納税状況によって「減税」「給付」、あるいはその組み合わせに分かれます。

一方で、具体的な制度設計や実施時期、控除額などは、まだ決まっていません。制度の分かりやすさ、手続きの負担、財源の確保なども含めて、議論の行方を丁寧に見ていく必要があるでしょう。

参考資料