3.1 高齢者世帯の家計赤字、その原因は「浪費」ではない
70歳代の世帯収支を見ると、1カ月あたり約2万7000円から3万7000円の赤字が発生しています。
しかし、この赤字を単純に「支出が多すぎること」と考えるのは早計です。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」では、高齢世代の支出が生活に不可欠な項目に多く充てられていることが示されています。
ここで、65歳以上の無職夫婦世帯における主な支出項目の内訳を見てみましょう。
実収入の月額平均:25万4395円
■うち社会保障給付(主に年金)22万8614円
支出の月額平均:29万6829円
■うち消費支出(いわゆる生活費):26万3979円
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
・ うち諸雑費:2万2047円
・うち交際費:2万3257円
・うち仕送り金:1135円
■うち非消費支出:3万2850円
月々の家計収支の結果
この夫婦世帯のケースでは、1カ月の実収入25万4395円に対して支出の合計は29万6829円となり、月の収支は4万2434円の赤字です。
食費や光熱・水道費といった生活に最低限必要な費用に加え、保健医療費が月に約1万8000円を占めているのが特徴的です。
これらの支出は、生活の質を下げても削減が難しく、現役世代と比べて固定的になりやすい傾向があります。
また、家計には日々の消費支出だけでなく、税金や社会保険料といった非消費支出も含まれます。
年金から天引きされる介護保険料や医療保険料は、高齢になるほど負担が避けられず、家計に継続的な影響を与えます。
近年の物価上昇も無視できません。
総務省の消費者物価指数によれば、食料品やエネルギー価格の上昇が続いており、生活必需品ほど影響を受けやすい状況です。
このように、高齢者世帯の赤字は無駄遣いが原因ではなく、「削減しにくい支出が重なった結果」として生じている場合が多いと考えられます。
そのため、老後の家計を考える上では、節約だけに頼るのではなく、ある程度の貯蓄を前提とした生活設計が重要になるといえるでしょう。
著者
マネー編集部貯蓄班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、大手証券会社やメガバンク等の金融機関にて勤務経験のある編集者が中心となり、金融庁や総務省など官公庁の公開情報等をもとにお金の課題に寄り添う専門チームです。
主なメンバーは野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか、地方自治体職員出身の太田彩子、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵、日本生命保険相互会社出身の村岸理美など。
編集者の多くは、金融機関にて個人リテール業務を経験。若年層からシニア層、富裕層に至るまで、幅広い顧客に対し、投資信託・保険を中心とした総合的なライフプランニングを実行してきた。なかには、リテール営業で社内トップの実績を持ち、行内で表彰された実力者も。人材育成や社内教育にも携わるなど、金融知識と実務経験の両面で信頼される編集者が在籍しています。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。(最新更新日:2025年6月23日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
LIMO編集部記者/一種外務員資格(証券外務員一種)/元証券会社社員
1985年生まれ。福岡県出身。筑紫女学園短期大学英文科(現・筑紫女学園大学)を卒業後、2005年に日興コーディアル証券株式会社(現・SMBC日興証券株式会社)に入社。一種外務員資格(証券外務員一種)保有。ファイナンシャルアドバイザーとして、主に富裕層の個人顧客や法人に向けて、株式や債券、投資信託、保険商品などライフプランに寄り添った資産運用を提案する業務に従事。
現在は、株式会社モニクルリサーチのメディア編集本部・LIMO編集部に所属。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」では、人事院、内閣府(金融庁、消費者庁、こども家庭庁)、デジタル庁、総務省、法務省、財務省(国税庁)、文部科学省、厚生労働省、農林水産省(林野庁)、経済産業省(中小企業庁)、国土交通省、環境省といった官公庁の公開情報など、信頼性の高い情報をもとに厚生労働省管轄の公的年金(厚生年金保険と国民年金)、年金制度の仕組み、社会保障、退職金、資産運用や貯蓄、NISA、iDeCoなどをテーマに企画・編集・執筆を行う。また、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」でも執筆を行う。(2026年7月11日更新)