2019年6月4日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社フュートレック2019年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:株式会社フュートレック 代表取締役社長 浦川康孝 氏
会社概要
浦川康孝氏:フュートレックの代表取締役社長の浦川でございます。これより、株式会社フュートレックの2019年3月期の決算説明をさせていただきます。
最初に株式会社フュートレックの会社概要ですが、設立は2000年4月17日で、2020年で20周年を迎えます。本社所在地は大阪で、代表取締役は私、浦川康孝です。資本金は7億3,397万円となります。また業務内容は、とくに音声認識技術を利用したサービスの企画・提案、およびCRMソリューションの提供、システム設計等を生業としております。
沿革
会社の沿革です。2000年4月に株式会社フュートレックを設立いたしました。その後、2005年12月にマザーズに上場しております。併せてこの頃、NTTドコモさまとの仕事が始まり、2006年5月に資本業務提携契約を締結しました。その後、まずフィーチャーフォンの音源チップ、音声認識の事業を進めてまいりました。
2014年頃から、ビジネスの軸足を人手翻訳と機械翻訳にある程度広げようという思いで、会社を買収いたしました。なお、音声機械翻訳に関しては、Googleさまが性能のよいものを無料で公開してることもあり、2017年10月に撤退することを決心いたしました。ただし、ログバーの「ili(イリー)」など小型の機械翻訳は継続しております。
この頃より、音声認識、またCRM事業に注力するという内容で選択と集中を行い、2018年9月にグローリーさまと資本業務提携契約を締結し、現在弊社の筆頭株主になっていただいております。
過去10年の業績推移(連結)
過去10年の業績の推移ですが、我々はスマートフォンや携帯電話のビジネス等に非常に依存していましたので、その流れがこの推移に表れております。(スライドの)グラフが上がり調子の2011年が、iPhoneに「Siri」が搭載され、音声認識が大きく注目を浴びた時期でございます。そこでビジネスが拡大いたしました。
2015年に急激に(業績が)下がるのですが、この頃はNTTドコモさまのiPhoneやスマートフォンの台頭、またゼロ円端末の販売禁止等もあり、携帯電話の出荷台数が落ちるという状況になりました。端末1台あたりのライセンスビジネスといわれる我々にとっては(マイナス影響となり)、その頃から売上が落ちてきました。
その後、機械翻訳、またインバウンドも含めて、さらに事業を広げるかたちで拡大を進めてまいりました。その結果、Googleの影響等もあり機械翻訳のビジネスが難しくなりましたので、一旦、事業をシュリンクして現在に至っております。2019年に関しましては、別途後半で説明させていただきます。
過去5年の事業別業績推移(連結)
過去5年間の推移にその状況が如実に表れております。
翻訳事業を始めたものの厳しくなり、翻訳事業をシュリンクしました。一方で、映像関係に軸足を移しまして、映像制作というビジネスが含まれることになったのが過去5年間の推移です。ここまでが過去のご説明でございます。
報告セグメントの変更
これより、2019年3月期の報告をさせていただきます。
弊社では(今期より)セグメントを変更いたしました。2018年3月期までは「ライセンス事業」「翻訳事業」「映像・メディア事業」「その他事業」でセグメント分けをしておりましたが、2019年3月期から「ソフトウエア開発・ライセンス事業」「映像制作・メディア事業」「その他事業」として、プロモーション事業分野という名称でセグメントを変更しております。
2019年3月期 業績の概況(連結)
2019年3月期の決算状況です。売上高は31億100万円でした。そのうち、「ソフトウエア開発・ライセンス事業」は13億1,200万円で、「映像制作・メディア事業」が14億3,600万円となり、「その他事業」は3億5,200万円であります。
営業利益は、残念ながら若干の未達となり、2,800万円の赤字という状況でございます。経常利益はマイナス1億1,400万円です。これには、グローリーさまにTOBをかけていただいた際の手数料が含まれております。
当期純利益はマイナス3億円です。これは、過去に出資したイスラエルのVocalZoom Systems Ltd.という会社の株式に関しての評価損と、もう1社さまも評価損が出ましたので、そちらを今回計上させていただきました。
したがいまして、経常利益、純利益の手数料および評価損に関しましては今期限りのもので、これが来期、再来期に影響するものではございません。
2019年3月期 セグメント別利益
セグメント別の売上です。「ソフトウエア開発・ライセンス事業」は、音声認識事業とCRM事業、子会社のスーパーワンという会社のソフトウエア事業です。これらの売上高は13億1,200万円で、セグメント利益は3,200万円となりました。2018年3月期は2,100万円でしたので、1,000億円の改善となっております。
「映像制作・メディア事業」は、売上高は14億3,600万円で、セグメント利益は2,200万円でした。2018年3月期がマイナス5,000万円でしたので、ここも改善となっております。「その他事業」として、プロモーション事業ですが、売上高は3億5,200万円でセグメント利益はマイナス8,300万円でした。2018年3月期はマイナス1億6,100万円でしたので改善されたのですが、プロモーション事業はかなりビジネスを厳しくしたという状況でございます。
ここまでが、2019年3月期の説明でございます。
グローリー株式会社と資本業務提携
ここからは2019年3月期のトピックスと、今後フュートレックがどのように会社を経営していくかということを説明させていただきます。
フュートレックとして一番大きかった案件が、グローリー株式会社さまとの資本業務提携でございます。もともとフュートレックは音声認識を手がけている時に、音声認識というのは「耳」であり、「目」である画像認識と組むことで、さらに性能向上を図ることができるだろうと考え、パートナー企業さまを探しておりました。
そのなかでグローリーさまが……キャッシュディスペンサーや紙幣で有名なのですが、実は画像やPepperの顔認証を持っているというお話もあります。
そこで、顔認証と音声認識、さらに声紋認証を組めたらシナジーがあるのではないかという話から始まり、最終的にはTOBをかけていただき、筆頭株主になっていただいているという状況でございます。2019年3月31日時点で、グローリー株式会社さまは、(持株数)379万3,200株で、(持株比率)40.53パーセントの筆頭株主となっております。
そういった経緯で、当社はグローリー株式会社の持分法適用関連会社となっております。この提携……それから6月の株主総会で承認された場合、グローリーさまから取締役2名、監査役1名の方が、新たにフュートレックの経営陣として加わることになります。
これからも音声認識事業を中心に、グローリーさまとのシナジーを追求していきたいと思っています。業務提携のなかで、生体認証やビジネスの相互販売等、さまざまな項目を発表しておりますが、そのストーリーに合わせていろいろなお話をさせていただいております。
注力する事業 ~音声認識・既存事業の拡大~
以上を踏まえまして、これからのフュートレックが注力する事業としましては、まずは音声認識・既存事業の拡大を基本として挙げたいと考えております。最近のAIや働き方改革を含め、人手から機械に転換するという流れのなかで、我々の会社に対しても、コールセンター等から議事録を取りたいというようなお問い合わせがあります。
しかし残念ながら、我々の音声認識は、それまでは「機械と話す」「スマートフォンと話す」という、例えば「今日のお天気は何ですか」「このへんにレストランはありますか」という細かい単語で機械に話すのを得意としておりました。
一方で、議事録や会議のような普通の話し方・話し言葉のモデルに関しては我々は不得意で、なかなかどうにもできないという状況がありました。そのため、これまではコールセンター、また会議録(の分野)には、ビジネスを展開したくてもできずにいました。
今回、事業提携もあり、NTTテクノクロスさまのコールセンターが持っている技術を我々もライセンスを受け、晴れてこれからコールセンターならびに会議録というビジネスに乗り出せる状況になりました。2019年は会議録、コールセンター(のビジネス)を重点的に進めてまいりたいと思っております。
また会議録については、さまざまな音声認識があるなか、我々の特徴でありますサーバー型、それからスタンドアローンといいますか、ローカルでできるような会議録も考えております。会社の中でも、重要な会議の時に音声が外に流れることでセキュリティ上の問題があるというようなユースケースもあると思いますので、あわせてエッジ側のソリューションである会議録を今後開発したいと思っております。
注力する事業 ~音声認識・新規取り組み~
スライドは新規事業になります。音声認識の「声による本人認証技術の開発・製品化」でございます。1つ目として先日、「声認証 SDK for パーソナライズ」を発表させていただきました。これは、人の声紋をチェックして人物を特定するというものです。少人数であれば話者の特定ができます。これが10万人、100万人、1,000万人であっても聞き分けができるようになると声紋認証というかたちで、声紋によってユースケースが異なります。そのなかでまずは、ご家庭や少人数の間で話者の特定ができないかというビジネスを展開しております。
以前は、テレビ等の機器はみなさんで共有していましたが、それがスマートフォンに変わり、個人個人で使うようになりました。その後、さらにAIスピーカーなど、車や個室の中でみなさんがシェアするようなビジネスに変化してきました。
ただ、(ビジネスを展開するにあたり)覚えている音声に対してどう切り分けるかについては、例えばこの声はお父さんだからこのページを見ようだとか、この声は子どもさんだから子ども向けのページにしようといったパーソナライズを含めたサービスができるように、応用を進めていきたいと思っております。これから、音声認識含めさまざまな技術の開発を進めたいと思っております。
2つ目として、現在、グローリーさまと共に声認証と顔認証を組み合わせたハイブリッド認証技術を開発しております。顔認証、それから声の認証だけでは、やはり指紋、静脈に対しては精度がかなり厳しいところがあります。
ただし、顔と声が合わさると、例えばマスクだけでは駄目な時も、声だけでは駄目な時も、同時にそれを破らない限りセキュリティは突破できないという方法もあります。最近はハイブリッドが徐々に主流になりつつありますが、我々もこの顔認証と声の認証、さらに様々なパスワードを合わせて多重化することによって、セキュリティを上げるという方法に取り組んでおります。
この内容に関連して、2019年2月に、グローリーさまが東京金融賞「都民ニーズ解決部門」の3位に入賞されました。そのなかでフュートレックは、声認証の部分で協力させていただいております。現在、この技術の実用化に向けて、グローリーさまと協力して進んでおります。
注力する事業 ~CRM~
次の柱としましてはCRMで、カスタムリレーションサービスのビジネスでございます。我々は統合型CRMソリューション「Visionary」を販売しております。「Visionary」の売上は、月額利用料と都度発生するカスタマイズ業務の売上がメインとなっております。
とくに重要なのが月額利用料で、お客さまが増えるとサブスクリプションモデルとしてどんどん積み上がっていきます。ライセンスと同じように、投資に対する回収が大きくなりますので、CRMに関しても今後、月額利用料およびサブスクリプションを上げていく方向で進めようと思っております。
フュートレックの「Visionary」は何が評価されているかといいますと、お客さまごとのカスタマイズ、ニーズに合わせて自由に作るところが評価されております。一方で、それにより販売時に我々の開発リソースのコストがかかりますので、ある程度、対応には限界があることもあります。今後「Visionary」に関しては、2つのことを重点的に進めたいと思っております。
まず、これまでのご要望によりカスタマイズした機能を取り込んで、さらに魅力ある製品にします。加えて、カスタマイズなしでAs-Isで(そのまま)販売していただき、それがサブスクリプションモデルにつながるように、なるべく工数を下げて販売できるモデルにしたいと思っております。
また、とくに(スライドの)2番目が今のお話なのですが、労働集約型ではなく、あくまでもライセンス型を目指してまいります。引き続き、新規開拓を強化し、「Webプロモーション」と「販売パートナーの開拓」によりCRMを伸ばしていきたいと考えております。
プロモーション事業の事業譲渡
プロモーション事業です。2019年5月17日に発表いたしましたが、プロモーション事業は譲渡することを決議いたしました。譲渡先は、株式会社ホワイトホールラボで、譲渡金額は7,200万円です。
プロモーション事業は、展示や作業のような「一品料理」のため、ある一定の売上が上がるのですが、ライセンス事業に比べると、大きな利ざやを稼ぐことができません。
会社の中で、ヒト・モノ・カネ、とくにお金をどこに投入するかという判断をした時に、やはりCRM、音声認識、声紋認証にかけるべきだという経営判断に至り、今回譲渡しております。
先ほどの売上を見ましても、やはりプロモーション事業がかなり落ちていることもありましたので、今回はこういった決断をさせていただきました。
まとめますと、(これからは)音声認識、CRM、声紋認証等のライセンス事業に邁進することとし、それ以外のシナジーの出なかった事業は、2018年および2019年で整理させていただいたという状況です。
2020年3月期 業績予想・配当予想(連結)
以上を踏まえまして、2020年3月期業績予想および配当予想を発表いたしました。2020年3月期の予想は、売上高28億円、営業利益8,000万円、経常利益7,500万円、純利益6,000万円でございます。また、配当は、1株あたり3円とさせていただきました。
配当性向は、少し高いのですが、やはりしばらくの間、無配のなかフュートレックを応援していただいた株主さまへの感謝の気持ちもあり、また2019年こそはこの3円が妥当であるという売上を上げるという、経営陣の覚悟の現れとして3円と設定させていただいております。
今後の目指す先
今後のフュートレックの目指す先についてお話しします。途中計画はざっくりしているのですが、大まかにこれが、今後3年間において我々がどういう活動をするかである、と見ていただければと思います。今までは、スライドの一番上の短文音声認識を進めていましたが、これについてはは、先述しました話し言葉の開発を進めてまいります。
また、スライドの声認証(話者識別)は、数名やご家族のなかでお父さん、お母さん、お子さんを認識するというパーソナライズの部門です。その後が少額決済、さらに声紋認証によるセキュリティへと進めていきたいと考えております。完全にできるというのではなくても、用途用途で使えるものを含めてビジネスを広げたいと思います。
これは、2019年、2020年、2021年と、機能を向上していこうと考えております。また「Visionary」の多機能化についても今後、作業していきます。プロモーション事業は、事業譲渡をしております。
この3年間で、音声認識、話し言葉への事業拡大、それから声紋認証を合わせて進めていくのが、フュートレックの今後の目指す先でございます。
フュートレックの経営理念
フュートレックの経営理念は、「社会の変化に柔軟に対応して、その時代に求められる商品を追求し、継続的に発展する会社を目指す。」というものです。これは、「社会」の変化を「ビジネス」の変化と置き換えても考えることができます。
(フュートレックの)「商品」は技術であり、ビジネスの変化に柔軟に対応して、その時代に求められる「事業」それから「技術」を追求して、継続的に発展する会社を目指すということです。
今回も、一度会社を買収しましたが、事業に合わないということになれば、経営陣の判断によって柔軟に対応して、経営理念を守っております。
以上、2019年3月期の決算説明をさせていただきました。どうも本日はありがとうございました。