ブラック企業という言葉もすっかり生活に溶け込んで、多くの人が日常的に使う言葉の一つになっているのではないでしょうか。今回は、そんなブラック企業に勤めていたけれど、いまは「転職してよかった」と思える職場で働いている人に話を聞いてみました。彼らが転職を決意したのは、何がきっかけだったのでしょうか。

身を粉にして働いたのに「代わりはいくらでもいる」

ある建設系の会社で働くAさんは、体力的にも精神的にも限界が来て転職を決意しました。Aさんの会社では夜勤シフトがあり、それを巧みに使って1か月で32連勤などという事態になるのだと言います。

つまり、日中のシフトと夜勤シフトがつながっていて、ほとんど休みがないという勤務があるということです。22営業日しかないのに32連勤のシフトが組まれるとか、17日間ずっと地方で1日の休みもなく、夜通し働き続けるなどの無理のある働き方ばかり。

Aさんは現場監督の仕事ですが、この人手不足の影響で自分も一緒に手を動かして作業しながら現場の指揮を執るので体力勝負になります。それにもかかわらず、休みが1日もないまま17連勤となると、体力が激しく消耗し、精神的にも限界が来るのだと言います。

Aさんは日中、立って仕事をしているにもかかわらず意識が途切れたり、車の運転中に意識が遠のいたりして恐怖を感じ、上司に休みを申請。しかし、「この忙しい時期に休むのか、周りのことを考えろ。別にやめてもいい、お前の代わりはいくらでもいる」と言われて転職を決意しました。

いまもAさんは建設系の会社で働いていますが、そこは社員に無理をさせないスタンスで非常にやりやすいといいます。給料も高くなり、社員が多いので休みもきちんと取れるなど、働き方が大きく変わったと言うAさん。転職をきっかけにまっとうな生活が送れるようになったと喜んでいました。

先輩の陰湿で粘着質なパワハラでうつ病に

ある金融機関では働くBさんは、先輩社員からの陰湿なパワハラでうつ病の一歩手前の状態にまで精神的に追い詰められて転職を決めました。それも、自分では転職の判断ができずに、当時付き合っていた恋人に強く勧められ、なんとかその職場を抜け出したのだそう。

先輩は6つ年上の男性社員で、Bさんの異動で同じ部署で働くことになりました。隣の席になり、一緒に仕事をする機会が増えるにつれ、大きな声でBさんのことを怒鳴るように。

Bさんも最初は「イヤな先輩の隣になってしまった」と思うだけだったようですが、あるとき同僚の話で、誰も先輩の隣に座りたがらないから異動してきたばかりのBさんが隣の席になったという話を聞いたのだそう。

先輩は違う部署の人には外面がよく、ニコニコしていて明るく面倒見のいい先輩として通っているので、Bさんが元々いた部署の同僚に先輩の愚痴を言っても「意外だなあ」と言うだけでなかなか信じてもらえなかったと言います。

それでも日常的に「なんでそんなに頭が悪いの?」「どうやって生きてきたの?」「一回死んで人生やり直して来い」「お前の親はこんな姿を見てどう思うだろうな」など、Bさんの人格を否定するようなことばかり言っていました。それも席が隣なので、職場にいるほとんどの時間をBさんはパワハラを受けながら過ごしたのです。

次第に朝起きられなくなり、会社に行こうとすると電車の中で具合が悪くなるようになったBさんは、恋人の勧めを聞いて病院へ行くことに。うつ病の一歩手前の状態だと診断されて、退職しました。いまは休養期間を経て、別の会社に転職しています。

こうした粘着質ないじめは、最初は耐えられるものの次第に心をむしばんでいくもの。我慢すると事態が悪化する一方なので、早めに見切りをつけたいところです。

先輩社員の「頭が悪いんだから体を動かせ」の一言