年々右肩上がりで増え続ける、若年無職者やフリーター。中でも、自宅に引きこもって社会生活に身を投じない「ひきこもり」は、日本全国に100万人以上いるといわれます。今回は、40歳以上の“大人のひきこもり”にフォーカスし、そのリアルと社会復帰に向けた取り組みをご紹介しましょう。

■全国に60万人以上!?大人のひきこもりの悲惨な現状

内閣府が公表した「令和元年版 子供・若者白書(全体版)」によると、自宅に半年以上引きこもっている40歳〜69歳の人は、全国に推計61.3万人いることがわかりました。これまで40歳以上の“大人のひきこもり”は対象に含めておらず、今回の調査をもって、ひきこもりの長期化および高齢化が浮き彫りとなった形です。

彼らがひきこもりになった主な原因は、「退職(定年退職)」・「人間関係がうまくいかなかった」・「病気」・「職場になじめなかった」・「就職活動がうまくいかなかった」などさまざま。
長期のひきこもりにより、社会との接点を失ったり、家族関係が悪化したり、精神疾患を発症したりする人も少なくありません。その結果、高齢化した親とともに心中を図る人や、孤独死を迎える人もいます。

また「ひきこもり=男性」というイメージの人が多いかもしれませんが、現実は異なります。同調査によると、“大人のひきこもり”の23.4%が、女性であることがわかりました。これまで女性のひきこもりは、殆ど表面化せず「家事手伝い」や「専業主婦」というマスクで見過ごされてきたもの。しかしその裏には、経済的な自立の失敗をはじめ、職場でのいじめやメンタル不調で社会復帰できず、苦悩する女性達の姿があります。長期のひきこもりによる弊害は、私達が想像するよりも生々しく、悲惨なものです。

■ひきこもりの社会復帰に必要なのは支援

これまで筆者は、数々のひきこもり当事者や支援団体の取材を行ってきました。その結果からいうと、“大人のひきこもり”が単独で社会復帰を果たすのは、極めて困難です。厚生労働省が設置した窓口への相談、ハローワークによる就労支援、ひきこもりの社会復帰支援に特化した民間団体などのサポートが必要でしょう。

ただし、これらの支援の多くは、ひきこもり当事者が現地に赴く来所形式で行われています。ただでさえ外出の機会が少ない人にとって、交通機関での移動やフェイスツーフェイスでのコミュニケーションは、ハードルが高く感じられるもの。今すぐ支援を受けたいのに、受けるまでに乗り越えなければならない壁がいくつも存在するわけです。つまり来所形式による支援は、当事者の気持ちを考慮していない“矛盾を抱えた支援”であるともいえます。

そんな従来の支援に異を唱え、独自のアプローチを展開する支援団体もあります。愛知県・一宮市に拠点を構える「社会復帰支援 アウトリーチ」は、“大人のひきこもり”の支援に特化したNPO法人です。

最大の特徴は、一般的な支援団体とは違い、無料電話相談や相談窓口を設けていないこと。公式サイト上にLINEの友達追加用QRコードや支援登録の専用フォームを設置し、当事者とのやりとりをオンラインで完結させています。それに加え、希望者にはデータ入力などの在宅ワークを提供したり、地元企業と連携して会社見学を実施したりするのも特徴。二人三脚のサポートにより、ひきこもり当事者を社会復帰へと導きます。

今現在、半年以上に渡って引きこもっている人、また家族にひきこもりがいる人は、上記のような支援団体に頼るのも有効です。ひきこもり期間が長ければ長いほど、第三者の手なくして社会復帰を果たすのは、難しくなるでしょう。

■人の弱みに付け込んだ“ニセ支援団体”の存在