3. 働き方やキャリアはどう変わる?「年金制度改正」の注目ポイントを解説

実は、公的年金は「老後の受給額」だけの話ではなく、働き方やキャリアプラン、人生設計とも深い関わりがあります。

2025年6月13日、国会で年金制度改正法が成立しました。

今回の改正の見直しポイントのうち、働く人々の「仕事と暮らし」に深く関わるものを紹介しましょう。

3.1 社会保険の加入対象の拡大①短時間労働者の加入要件の見直し

  • 賃金要件の撤廃:3年以内にいわゆる「年収106万円の壁」撤廃へ
  • 企業規模要件の撤廃:10年かけて段階的に対象の企業を拡大(※)

※2025年7月時点では「51人以上」

3.2 社会保険の加入対象の拡大②個人事業所の適用対象の拡大

  • 2029年10月から個人事業所の社会保険の適用対象(※)が、従業員5人以上の全業種に拡大(2029年10月時点における既存事業所は当面除外)

※2025年7月現在「常時5人以上の者を使用する法定17業種」は加入必須。(法定17業種とは:①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業

3.3 在職老齢年金の見直し

2026年4月から、年金が減額される基準額(※)が「月収51万円(2025年度の金額)→65万円」に緩和。働きながらでも年金を満額もらいやすくなります。

※支給停止調整額:年金を受給しながら働くシニアの「賃金+老齢厚生年金」の合計がこの金額を超えると、年金支給額が調整される。

3.4 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

厚生年金などの保険料や年金額の計算に使う賃金の上限(※1)を「月65万円→75万円」へ段階的に引き上げ(※2)。従来よりも現役時代の賃金に見合った年金を受給できるようになります。

※1 標準報酬月額:厚生年金や健康保険の保険料、年金額を計算するために、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った基準額のこと
※2 2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に引き上げ

4. まとめ

今回は、老齢年金や雇用保険に上乗せして支給される、シニア世代にとって重要な給付金や手当について解説しました。

今回ご紹介したお金は自動的には振り込まるものではなく、自ら動いて「申請」をしなければ受け取ることができません。

まずはご自身が支給対象に該当するかどうかを確認し、書類が届いた際や要件を満たした際には、速やかに手続きを行うよう心がけましょう。

昨今は、物価の高騰に加えて医療費の負担増なども重なり、セカンドライフの家計に対して不安を感じている方も少なくないでしょう。

これからの時代は、国や自治体の支援制度を限界まで活用しつつも、それだけに頼り切るのではなく、早い段階からの資産運用や保険の見直しといった「自助努力」による生活防衛がますます重要になってきます。

最新の制度改正の波を味方につけながら、賢く情報収集を行い、ゆとりある安定した未来の暮らしを今から築いていきましょう。

参考資料

菅原 美優