米国のトランプ政権が中国の通信機器大手ファーウェイに対し制裁措置を行ったことで、米中貿易戦争は新たな事態に突入したようだ。それもそのはず米国では「技術の冷戦」と言った呼び方をする者もおれば、「デジタル版・鉄のカーテン」といったもっと過激な呼び方をしているからです。

これからいったい何が起ころうとしているのか。ある専門家に言わせれば、このトランプの制裁は世界を2つに分断し技術を閉鎖させた空間での「デジタル版・鉄のカーテン」だと指摘しているのです。これに同調したかのように『ニューヨーク・タイムズ』でも、「技術の冷戦が始まった」という見出しで書いている程です。

■ 最悪のシナリオのままで今年5月の追加関税に突入した米中

中国の輸入品2000億ドル分に対し米国は25%の追加関税をしたかと思えば、一方の中国も報復としてそれに対し5月21日に即アメリカの輸入品600億ドル分に10~25%の追加関税を引き上げたのは皆さんご承知の通りです。

仮にグーグルが本気で携帯電話用OS(アンドロイド)の提供を止めたら、中国でもファーウェイが独自にOSや半導体を作るとは言っても、各国にとっては不安が残るのでファーウェイ製品を購入しなくなる公算は避けられないと思います。そうなれば折れない強気の中国とアメリカとの経済戦争は結局、親中国派になるか親米国派になるかの2つに分断されていく可能性が今後は高くなって行くことは明らかです。

なぜならトランプ大統領がファーウェイ製品を単なるビジネスの話と割り切れないのには理由があるからなのです。この問題の肝は世界の覇権をめぐる米中2大国による新冷戦時代の突入になるのではという危険性をはらんでいるからなのです。

そこで思い出すのが米国のロス商務長官も言っているように、この問題は米国の安全保障政策そのものであり、通信機能なり機密情報といった機密漏洩の問題に発展するからなのです。別の言い方をするなら、ビジネスであれば交渉事なので双方の妥協で成立する局面の可能性もあるが、これは米国の安全保障政策そのものなので絶対に譲れないと言っている事を意味しているからなのです。

■ 追加関税第4弾の計画をも発表した強気のアメリカ

究極的にはファーウェイを米国と同盟国から追い出し、貴方の国はどちらに組み入りますかと問いかけているのと同じなのです。もし第4弾の対中関税を引き上げれば中国輸入品の全てが制裁関税の対象となって仕舞うのです。

米国企業はこれまで中国に委託生産させていた消費者への影響が大きい、スマホ、衣服、靴といった商品は追加関税の対象から外してしまいましたが、仮に第4弾が発令されれば殆ど全ての商品が対象となる事になります。

この問題になる前にもペンス副大統領は昨年の10月4日に演説の中で南シナ海での軍事基地建設問題や人権侵害問題を指摘していたように、トランプ政権は当初から周到に「中国との新冷戦」を示唆して来ていたのです。このことからトランプ政権が中国に対しどこで妥協するのかといった心配をする各界論者もおります。

しかし米中対立の本質をビジネスや縄張り争い的な発想で捉えて、両国の歩み寄りを期待したかのように論ずるやり方では、論者の無責任発言を毎回露呈しているだけであり、この問題の肝に対する認識に乏しいことになります。

■ トランプ政権は周到にファーウェイを追い詰めている