NISAが新制度に生まれ変わってから、「オルカン」と「S&P500」のどちらを選ぶべきか迷う人は一段と増えています。
どちらも低コストのインデックスファンドとして人気が高い一方で、投資先の広がりや値動きの特徴にははっきりした違いがあります。
NISAでは長期の非課税運用がしやすくなったからこそ、商品ごとの性格を理解して選ぶことが大切です。
特に「世界全体に広く分散したいのか」「米国の成長力に期待したいのか」によって、選び方は変わってきます。
過去の運用実績を見ると差が出ている場面もありますが、その数字をそのまま将来に当てはめることはできません。だからこそ、リターンの大きさだけでなく、リスクの取り方や続けやすさまで含めて考える必要があります。
本記事では、「オルカン」と「S&P500」の基本的な違いを整理したうえで、実際の運用実績や長期保有のシミュレーションを比較しながら、それぞれがどのような人に向いているのかを分かりやすく見ていきます。
1. この記事の3つのポイント
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投資対象とリスク分散の違い:オルカンは世界中の株式に広く分散投資(現状は米国が約6割)して国ごとのリスクを抑える一方、S&P500は米国の主要企業約500社に集中投資して高い成長力を狙います。 -
過去の運用実績の差(2026年5月29日基準):eMAXIS Slimの設定来リターンは、全世界株式(オルカン)が+277.4%、米国株式(S&P500)が+342.6%となっており、長期運用では米国株集中型が優勢となっています。 -
30年シミュレーションと注意点:設定来CAGR(全世界約19.2%、米国約20.7%)で100万円を30年間運用すると最終差額は約8,960万円に達しますが、これは近年の好相場を反映した極めて高い数値であり、将来も同様に続くとは限りません。
2. 「オルカン」と「S&P500」とは?まずは基本を整理
NISAの積立投資でよく候補に挙がるのが、「オルカン」と「S&P500」です。
どちらもインデックスファンドとして高い人気がありますが、投資対象や値動きの特徴は大きく異なります。
なかには「名前は聞いたことがあるものの、違いまではよく分からない」という人も多いのではないでしょうか。
まずは、それぞれがどのような市場に投資する商品なのか、基本的な特徴から整理していきましょう。
2.1 オルカン(全世界株式)の特徴
「オルカン(オールカントリーの略)」は、全世界の株式に分散投資するファンドを指します。
日本、米国、欧州に加え、新興国も含めた数千銘柄に分散投資されており、1本で世界経済全体の成長を取り込める点が特徴です。
最大のメリットは、世界中の企業へ幅広く分散投資できることです。
ただし、現時点では組入比率の約6割を米国株が占めており、組入上位銘柄も米国の大型IT企業が中心となっています。そのため、分散投資とはいえ、運用成績は米国市場の動向に大きく影響を受ける側面があります。
一方で、日本や欧州、新興国などにも投資しており、世界経済の構造変化に応じてファンド内の国・地域別構成比率が自動的に見直される仕組みです。そのため、「今後どの国が成長するか」を自分で判断しながら投資先を入れ替える必要はありません。
このように、オルカンは世界中に幅広く投資しながらも、現状では米国市場の影響を大きく受ける商品です。長期的な資産形成において、世界全体へ分散投資したい人に向いている投資対象といえるでしょう。
2.2 S&P500の特徴
S&P500は、米国を代表する約500社で構成される株価指数です。
アップルやマイクロソフト、エヌビディアなど、世界的な影響力を持つ企業が多く含まれており、米国経済の成長をダイレクトに反映する点が特徴です。
過去の運用実績を見ると、S&P500は長期的に高いリターンを上げてきました。
特にIT企業を中心とした成長が株価を押し上げており、「資産を大きく増やしたい」と考える投資家から高い支持を集めています。
一方で注意したいのは、投資先が米国に集中している点です。
米国経済が好調な局面では大きな成果が期待できますが、景気後退や株式市場の調整局面では、資産の変動幅が大きくなる可能性もあります。
成長性の高さと引き換えに、値動きの大きさを受け入れられるかどうかが、選択のポイントになるでしょう。
3. 過去の運用成果を比較すると何が違う?
「オルカン」や「S&P500」をベンチマークとするファンドは複数ありますが、今回は三菱UFJアセットマネジメントが設定している下記2本の運用実績を比較してみましょう。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
3.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用実績
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、米国を中心としつつも、欧州・日本・新興国など世界中の株式市場に分散投資しています。
米国を中心に世界中の株式へ分散投資していますが、米国株の組入比率が高いため、現状では米国市場の動向が運用成績に大きく影響するファンドといえます。
三菱UFJアセットマネジメントが公表している月次レポートを見ると、以下のような騰落率になっています。
【2026年5月29日基準】
- 設定日:2018年10月31日
- 設定来リターン:+277.4%
- 直近3年リターン:+106.4%
- 直近1年リターン:+43.7%
- 直近6ヵ月リターン:+15.4%
- 直近1ヵ月リターン:+5.1%
- 設定来リターン:+227.34%
3.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用実績
これに対して「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する約500社に集中投資するファンドです。
米国企業は成長力が高く、特にIT・ハイテク分野の拡大を背景に、長期的に高いリターンを上げてきました。
こちらも同じく三菱UFJアセットマネジメントが公表している月次レポートを見ると、以下のような騰落率になっています。
【2026年5月29日基準】
- 設定日:2018年7月3日
- 設定来リターン:+342.6%
- 直近3年リターン:+112.0%
- 直近1年リターン:+43.1%
- 直近6ヵ月リターン:+13.5%
- 直近1ヵ月リターン:+5.4%
2018年に設定されてからほぼ右肩上がりに上昇しており、設定来リターンは+342.6%にまで達しています。
設定来など長期的な視点で見ると、幅広い国や地域の株式に分散投資するオルカンに比べ、米国市場に集中投資するS&P500の方がリターンの大きさで上回る傾向にあります。しかし、直近の期間(過去半年や1年など)ではオルカンがS&P500を上回る成長を見せることもあり、常にS&P500に軍配が上がるわけではありません。
米国市場の動向によっては大きく値下がりするリスクもあるため、どちらが良いとは一概には言えません。
4. 「オルカン」vs「S&P500」100万円を30年間放置したらどうなる?
では、「オルカン」と「S&P500」に100万円を投資し、30年間放置したらどうなるのかをシミュレーションしてみます。
なお、投資では必ず価格変動のリスクが伴うため、あくまでも過去の運用実績であることを理解しておきましょう。
※設定来の騰落率を年平均成長率(CAGR)に換算してシミュレーション
※CAGR(パーセント)=[(X年目の数値÷1年目の数値)^ {1 ÷(X-1)}-1]×100
4.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に100万円を投資し、30年間放置した場合
まず、オルカンの設定来の騰落率を年平均成長率(CAGR)に換算すると、約19.2%となります(2018年10月31日~2026年5月29日と仮定)。
仮に、100万円を年率19.2%で運用できた場合、30年後の資産額は「約1億9,300万円」となります。
4.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に100万円を投資し、30年間放置した場合
4.3 なぜこれほど大きな差がついたのか?
一見すると、オルカンは年率19.2%、S&P500は年率20.7%で、その差は1.5ポイントにすぎません。
しかし、これを30年間・複利で回すと、結果は指数関数的に広がります。
結果として、元本100万円でも最終的な差は約8960万円に達しており、最大の要因は「年率リターンの差×複利効果」であることが伺えます。
4.4 【注意】設定来のCAGR(年平均成長率)を将来にそのまま当てはめない
今回のシミュレーションに使用した年平均成長率(CAGR)は、あくまでも近年の好調な相場を反映した数値になっています。
年率19~20%台という数字は、歴史的にも極めて高い水準であり、今後も同様のパフォーマンスが続くとは限りません。
より現実的な視点として、運用利回りを年1~10%と仮定した場合に、30年後の資産額がどの程度になるのかをシミュレーションしたので、参考にしてください。
- 利回り1%の場合:約135万円
- 利回り2%の場合:約181万円
- 利回り3%の場合:約243万円
- 利回り4%の場合:約324万円
- 利回り5%の場合:約432万円
- 利回り6%の場合:約574万円
- 利回り7%の場合:約761万円
- 利回り8%の場合:約1006万円
- 利回り9%の場合:約1327万円
- 利回り10%の場合:約1745万円
※初期投資額100万円、複利計算にて算出
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません
5. まとめ
オルカンとS&P500は、どちらもNISAで人気の高い投資先ですが、重視するポイントは異なります。
世界全体に広く分散したいならオルカン、米国の成長力に期待してより高いリターンを狙いたいならS&P500という考え方になります。
過去の運用実績ではS&P500が優勢でしたが、それは米国株の好調さに支えられた結果でもあります。将来も同じ差が続くとは限らず、値動きの大きさや地域分散の有無まで含めて判断することが大切です。
また、シミュレーションではわずかな利回り差でも、長期の複利運用では最終的な資産額に大きな差が生まれることが分かります。
ただし、高い実績利回りをそのまま将来に当てはめるのは現実的ではありません。大切なのは、過去の数字に期待しすぎず、自分が続けやすい商品を選び、長期で積み立てていくことです。
6. 参考:オルカンとS&P500の運用成績を比較してみる
ここでは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のその後の値動きを含めた直近(6月22日時点)のチャート推移も確認してみましょう。
6.1 オルカンの運用実績
オルカンの基準価額及び純資産総額の比較

出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」をもとにLIMO編集部作成
6.2 S&P500の運用実績
続いて、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の実績を見てみましょう。
運用成績は市場環境によって変化するため、短期の実績だけで判断せず、長期的な視点で比較することも大切です。
