「ハーフの子を産みたい方に。」炎上と「男ウケ意識してる?」の呪縛について思うこと

写真は本文と関係ありません

先日、銀座にある老舗呉服店「銀座いせよし」が2016年に公開した広告ポスターが、ツイッターを中心に批判を集めました。着物を着た女性の横にあったのは「ハーフの子を産みたい方に。」という文字。現在、銀座いせよしはこのコピーの掲載を取りやめていますが、今なお各メディアではさまざまな関連記事が掲載されるなど余波が続いています。

着物を着れば外国人がナンパしてくる?

「銀座いせよし」のポスターに使われたコピー表現は、特に差別的だと多くの人が怒りの声をあげた「ハーフの子を産みたい方に。」のほか、「着るという親孝行もある」「ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる」「着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる」の4つ。

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これらのコピーに対しツイッター上では、「着物を着れば年収の低い日本人ではなく年収の高い外国人がナンパしてくるということ?」、「着物を着た女性なら男性はチヤホヤしてドアも開けてくれる。だから着物を着ようだなんて、とんでもないメッセージ」といった否定的な意見が散見されています。

そして、波紋を呼んだのはその差別的な表現だけが理由ではありません。このコピーが日本を代表する有名広告代理店・博報堂の女性コピーライターが作ったものであること、さらには広告業界における新人賞でもある東京コピーライターズクラブで新人賞を受賞したこと。

昨今炎上する広告表現は、「男性が女性を差別的に描く」といった構図で批判の的になることが多かったものの、今回は違います。批判や怒りの声の中には「同じ女性なのにどうして…」といったがっかり感も多く混じっていたように感じました。

「男ウケ意識しているんでしょ?」という呪縛

今回の銀座いせよしのコピー問題で筆者が思い出したのは、自分の髪の毛に関する出来事でした。

筆者は、産まれた時から髪の毛が真っ黒でした。美容院に行けば、したことがないのに「最近黒染めしましたよね?」と言われるほどの色は黒というよりももはや漆黒。この真っ黒い髪の毛は成長していくにつれて次第に自分が誇れるアイデンティティになっていきました。

そして大学に入学して周囲が茶や金、赤など思い思いの髪色になっていく中で、自分はこの黒髪を貫こうと思って過ごしていました。そのため、学校やサークル、髪色が自由だったバイト先では「なんで染めないの?」「茶髪似合いそうなのに」と言われることは少なくありませんでしたが、そのたびに「自分の生まれ持った髪色が好きなので」と答えていました。

しかし、バイト先のとある男の先輩がこう言ったのです。「でも、男の人は黒髪好きだからね~。特に外国人とか、男ウケ意識してるでしょ?」と。先輩なりの冗談だったのかもしれません。しかしその時、筆者は「自分は周囲に、モテるために黒髪でいると思われているんだ」と、ハッとしました。自分の黒髪が「モテたい」アピールだと思われるくらいなら、染める方がマシだ…。こう思い、筆者は次の日に金髪にしました。

筆者の感覚は被害妄想だったかもしれませんし、「男ウケ狙ってる?」なんて言われたとしても、自分の信念を貫けばよかったのかもしれません。しかし、18歳だった筆者にそんな強さはなく、とにかく「男ウケを狙ってる黒髪」から抜け出したかった。髪の毛というその人の印象をおおかた決めかねない見た目で、自分の信念が思わぬ方向に捻じ曲げられて判断される状況が耐えられなかったのです。

そして、その先輩の「黒髪=男ウケしている女性」という認識は、何が作り出したものなのか。それはもしかしたら先輩自身の体験ではなく、アイドルや芸能人といったメディアや広告イメージの力によるものも大きいのではないかと感じました。

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秋山 悠紀

早稲田大学文化構想学部出身。女子高でサッカー部、フリーター、演劇活動、編集プロダクションなどを経て独立。
子育てへの不安から1年半の保育園勤務の後、第一子を出産。
現在、長男を育てながら女性の生き方、子育て、ジェンダー、社会、旅、ドラマ、映画について執筆中。