3. 「普通のサラリーマン」という幻想。ひろしは実はすごかった
野原ひろしは、作品の中で「ごく普通のサラリーマン」として描かれることが多い人物です。
家ではみさえに頭が上がらず、しんのすけに振り回され、満員電車で通勤する姿にもどこか親しみがあります。
だからこそ、多くの人がひろしに対して「どこにでもいるお父さん」という印象を持つのでしょう。
しかし、改めて設定を見てみると、ひろしは決して平凡そのものとは言い切れません。
35歳で商社に勤め、係長という役職に就き、埼玉県春日部市でマイホームを持ち、専業主婦の妻と子ども2人を養っているからです。
しかも、年収は600万円とされることが多く、現在の統計に照らせば、これは男性全体の中でも十分にしっかり稼いでいる水準です。
もちろん、ひろしが超高年収エリートというわけではありません。
ですが、「普通の会社員」という言葉から多くの人がイメージするより、実際にはかなり安定した立場にいる人物だといえます。
今の日本で、30代半ばで家族を支えながら持ち家を持ち、年収600万円台に届く会社員は、決してありふれた存在ではありません。
作品が始まった1990年当時は、こうした家庭像が「一般的な中流家庭」のイメージと重なりやすかったのかもしれません。
しかし、時代が変わった今では、その姿はむしろ「ちゃんとすごいお父さん」に見えてきます。
野原ひろしは、親しみやすさのあるキャラクターでありながら、収入や働き方の面では、実はかなり健闘している存在だったといえるでしょう。
参考資料
加藤 聖人