2026年度の年金改定により、障害年金の支給額が見直されました。

障害年金を受給している人は65歳を迎えると、老齢年金の受給権も発生し、「どちらを選ぶべきか」で悩むケースが少なくありません。原則として年金は1人1年金ですが、組み合わせによっては併給できる場合もあります。

そこで本記事では制度の基本から選択のポイントまで、初心者にもわかりやすく整理します。

1. 3つのポイントの見出し

  •  65歳以降は「1人1年金」の原則に特例が加わり、障害基礎年金と老齢厚生年金などの併給が可能になります。
  •  基礎年金は老齢の満額以下なら障害基礎年金が有利になりやすいですが、加算の有無による逆転にも注意が必要です。
  •  厚生年金は障害認定日以降の就労期間によって有利な方が変わるため、個別の見込み額での比較が不可欠です。

 

2. 障害年金の改定額(2026年度)

公的年金のうち、障害年金は「障害の程度」によって等級が分かれており、支給額も等級によって異なります。2026年度の改定では次のようになりました。

  • 1級:月8万8260円
  • 2級:月7万608円

    上記は、昭和31年(1956年)4月2日以後生まれの方の金額です。昭和31年4月1日以前生まれの方は金額がわずかに異なり、1級が年額105万6125円、2級が年額84万4900円となります。

3. 年金は原則「1人1年金」

先ほど障害年金の2026年度受給額を紹介しましたが、日本の公的年金には、障害年金も含めて次の3種類があります。

  • 老齢年金(65歳前後から受け取る年金)
  • 障害年金(障害状態になったときに受け取る年金)
  • 遺族年金(家族が亡くなったときに受け取る年金)

原則として、公的年金は「1人1年金」です。

年金制度は「1人1年金」が原則1/2

年金制度は「1人1年金」が原則

出所:日本年金機構「年金の併給または選択」

つまり、複数の受給権があっても、基本的にはどれか1つを選択します。

4. 65歳以降に特別適用される「併給ルール」とは?

先ほど「1人1年金」の原則を紹介しましたが、65歳以降になると一定の条件のもとで「組み合わせての受給」が可能になります。ポイントは「基礎年金は1つだけ」というルールです。

日本の年金は、1階部分=基礎年金、2階部分=厚生年金という構造になっています。そのため、他の基礎年金と他の厚生年金という組み合わせは認められる場合があります。65歳以降は、次の組み合わせから選択が可能です。

年金の併給について2/2

年金の併給について

出所:日本年金機構「年金の併給または選択」

4.1 65歳以降の年金受給の選択肢

①障害基礎年金 + 障害厚生年金
②老齢基礎年金 + 老齢厚生年金
③障害基礎年金+老齢厚生年金

ただし、「障害基礎年金 + 老齢基礎年金」という「基礎年金どうし」の同時受給はできないため注意しましょう。

5. 「障害年金」と「老齢年金」どちらを選択するのがお得?

65歳以上で、障害年金と老齢年金両方の受給権が発生した場合に、どちらを選択したほうがお得なのかを判断する必要があります。

5.1 障害基礎年金と老齢基礎年金、どちらを選ぶ?

多くのケースでは「障害基礎年金」を選ぶほうが有利になります。なぜなら、金額の水準が高く設定されているためです。

2026年度(1956年4月2日以後生まれの人)の月額は次のとおりです。

  • 老齢基礎年金(満額):月7万608円 
  • 障害基礎年金2級:月7万608円
  • 障害基礎年金1級:月8万8260円(2級の1.25倍)

老齢基礎年金の月7万608円は、40年間きちんと保険料を納めた場合の金額です。保険料の未納や免除期間があると、老齢基礎年金は満額より少なくなります。

そのため、老齢基礎年金が満額を下回る人は、原則として障害基礎年金のほうが受給額は多くなります。特に障害基礎年金1級であれば、老齢基礎年金より明らかに高い水準です。

ただし例外もあります。老齢基礎年金に「振替加算」や「付加年金」が上乗せされ、年額が障害基礎年金2級を上回る場合は、老齢基礎年金のほうが多くなる可能性があります。

つまり、老齢基礎年金が満額以下なら、障害基礎年金のほうが有利になりやすい、加算によって老齢基礎年金が増えると、逆転することもあるという関係です。

最終的には、自分の老齢基礎年金の見込み額と障害基礎年金の金額を比べて判断することが大切です。

5.2 障害厚生年金と老齢厚生年金、どちらを選ぶ?

障害厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権がある場合は、必ず金額を比較して選びます。どちらが有利かは「いつまで厚生年金に加入していたか」で変わるからです。

障害厚生年金は、障害認定日までの厚生年金加入期間をもとに計算されます。一方、老齢厚生年金は、原則65歳までの加入期間すべてをもとに計算されます。

つまり、障害認定日以降も長く働いて厚生年金に加入していた人は、老齢厚生年金のほうが多くなる可能性があります。反対に、その後あまり加入期間が増えていない場合は、障害厚生年金のほうが有利なこともあります。

最終的には、年金事務所などで具体的な見込み額を確認し、合計額で比較することが大切です。

6. 自分の「基礎」と「厚生」を分けて比較することがカギ

2026年度は、障害基礎年金1級が月8万8260円、2級が月7万608円に改定されました(昭和31年(1956年)4月2日以後生まれの方)。

65歳以降は老齢年金との選択が必要ですが、基本は基礎年金も厚生年金もそれぞれ1つまでというルールです。そのうえで、制度上認められた組み合わせ(例:障害基礎+老齢厚生など)の中から有利なパターンを選びます。

特に老齢厚生年金は加入期間が長いほど増えるため、働いた年数で結論が変わります。自分の見込み額を確認し、合計で比較することが大切です。迷った場合は、年金事務所などで具体的な見込み額を確認し、制度を正しく理解したうえで納得のいく選択を取りましょう。

和田 直子
障害年金と老齢年金のどちらが有利になるかは、これまでの加入期間や就労状況によって一人ひとり異なります。金融メディアで日々こうした一次資料を読み解く中でも、一見複雑に見えるルールを正しく整理することが、最適な選択への近道だと感じています。特に厚生年金部分は、障害認定日以降にどれだけ長く働いたかで結論が大きく変わるため、事前のシミュレーションが欠かせません。まずは年金事務所などでご自身の具体的な見込み額を確認し、納得のいく選択を取るためのファーストステップにしてください。

参考資料

苛原 寛