3. 公的年金制度に関する3つの代表的な誤解

ここからは、公的年金制度についてよく聞かれる3つの誤解を取り上げ、解説していきます。

3.1 誤解1:公的年金制度はいずれ破綻する?

日本の公的年金制度には、「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みが備わっています。これは、社会の状況、例えば少子高齢化の進行や平均寿命の延伸といった変化に応じて、年金の給付水準を自動的に調整する機能です。

このように、財政の安定性を維持するための設計が制度自体に組み込まれているため、「ある日突然、年金の支給が停止する」といった事態は想定しにくい構造になっています。

したがって、議論の焦点は「破綻するか否か」という二元論ではなく、将来にわたってどの程度の給付水準を維持していくかという点にあると言えるでしょう。

3.2 誤解2:年金保険料は将来さらに引き上げられる?

厚生年金の保険料率は2017年を最後に18.3%で固定されており、制度上、これ以上無制限に引き上げられる計画はありません。

また、近年では女性や高齢者の就労参加が進んだことなどにより保険料収入が増加し、年金積立金の残高は当初の想定を約70兆円上回る見込みです。

このように、保険料の負担だけが増え続けるという単純な話ではないことも、理解しておきたい重要なポイントです。

3.3 誤解3:「支払った保険料の元が取れない」は本当か?

公的年金は、自身が支払った保険料を積み立てて将来受け取るだけの、単純な貯蓄制度とは異なります。

  • 老齢年金(長生きすることによる経済的リスクへの備え)
  • 障害年金(病気やけがで働けなくなった際の保障)
  • 遺族年金(加入者が亡くなった場合に遺族の生活を支える保障)

これら3つの機能を備えた、社会全体で支え合う「社会保険制度」としての側面を持っています。

世代と世代の支えあい6/7

世代と世代の支えあい

出所:日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」

さらに、公的年金には所得再分配の機能があり、現役時代の収入の差が、そのまま老後の年金受給額の差にならないように調整されています。

公的年金の所得再分配機能7/7

公的年金の所得再分配機能

出所:厚生労働省「令和6(2024)年財政検証関連資料①」

そのため、「支払った保険料の元が取れるか」という損得勘定だけでは、公的年金が持つ本来の役割や価値を正しく評価することは難しいでしょう。