この記事の読みどころ

1月7日(木)深夜2時の米FOMC議事録に注目です。

FOMC声明文と議事録の内容の「ズレ」を読み解きましょう。

米政策金利の利上げペースは、これまで通り経済指標次第になりそうです。

2016年1月7日(木)深夜2:00発表予定の米FOMC議事録に注目

米FRB(連邦準備制度理事会)が開催するFOMC(連邦公開市場委員会)では、声明文をFOMC開催最終日に公表し、議事録を3週間後に公表しています。

ここで重要な点は、声明文発表直後に市場参加者が読み取った内容と、議事録で示される内容に「ズレ」が生じ、マーケットが一時的に混乱に陥ることがあることです。この「ズレ」は集計用語の順位付けの読み違い等からも発生します。

例えば、参会者やメンバーの支持数を表すMany(多くの)という表現は、Several(幾人かの)よりも多いがMost(大部分の)より少ないといった具合に、議事録を厳密に読み解いていく必要があります。

また、FOMCの出席者は、政策決定の投票権を持つMember(メンバー)とParticipant(参加者)に分けられます。この「メンバー」が話した内容なのか「参加者」のコメントなのかによっても、発言の重要度は変わります。

余談ではありますが、現メンバーの1人であるスタンレー・フィッシャー副議長は、前イスラエル中央銀行総裁を務めており(同氏は米国とイスラエル両国の市民権を保有)、MIT教授時代の教え子には、ベン・バーナンキ、マリオ・ドラギ、ローレンス・サマーズ、グレゴリー・マンキューといった錚々たる人物がいます。

米政策金利の利上げペースは、これまで通り経済指標次第か

約9年半ぶりの政策金利の利上げとなった12月のFOMC声明文では、「FF(フェデラル・ファンド)金利の道筋は、今後発表される経済見通し次第」、「FOMCは経済活動の見通しと労働市場に対するリスクは、ほぼ均衡していると見ている」とありました。

また、FOMC声明文の後、イエレンFRB議長は、「利上げのペースはデータ次第」、「緩やかな利上げは機械的で均等なタイミングを意味しない」と発言しており、今後の米政策金利の利上げペースは、これまで通り経済指標次第で臨機応変に対応していくということになりそうです。

1月6日発表のFOMC議事録では、これら声明文の内容との「ズレ」を確認することになりそうです。同議事録を精読してみたら、市場予想よりも利上げのペースが緩慢になりそうだと判断されれば、米国株式市場全体にとっても支援材料となるでしょう。

なお、英語圏以外のニュースで議事録の内容を確認する際は、翻訳=記者の意訳となるケースがほとんどなので、少なくとも市場参加者(証券会社のエコノミストなど)の大半が、今後の利上げ時期についてどう捉えているか等の情報を掴んでいくことが大事です。

【参考情報】米FOMC議事録の基礎知識

そもそも、米FOMC議事録とは?

米国の金融政策の最高意思決定機関である米FRB(米連邦準備制度理事会)が開催する米FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録は、約6週間毎に年8回行われるFOMCの最終日から3週間後(詳細部分を含めた全記録は5年後)に公表されます。

この議事録には、米国の政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標、景況判断、今後の政策方針等が記録されています。

FOMCの構成メンバー

FOMC委員は、以下の12名(現在、空席2名のため10名)で構成されています。

  • 委員長:FRB議長
  • 副委員長:ニューヨーク連邦準備銀行総裁
  • 委員:FRB理事6名(副議長を含む)、およびニューヨークを除く11行の連邦準備銀行総裁の中から4名の計10名

なお、4つの連邦準備銀行総裁枠(①ボストン、フィラデルフィア、リッチモンド、②クリーブランド、シカゴ、③アトランタ、セントルイス、ダラス、④ミネアポリス、カンザスシティ、サンフランシスコ)については、1年ごとの輪番制となっています。

議事録の作成過程

同議事録は、米FOMCのいくつかの重要な詳細部分が5年後の全記録公表でしか明らかにならないことに加え、難解な専門用語や言い回しが用いられているため、市場参加者にも読み違えられやすくなっています。

議事録の作成過程は以下の通りとなっています。

  1. 米FRBの少数スタッフが初稿を準備
  2. FOMC後の週後半に議長の点検を受け、FOMC当局者全員に配布
  3. 翌週までに修正や補足の提案を受け、第2稿がまとめられる
  4. 議事録公表前日の正午までに最終的な承認を受ける

※元データの確認は、米FRB(米連邦準備制度理事会)のウェブサイトをご参照ください。

【2015年1月4日 投信1編集部】

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岡野 辰太郎