5. 毎年変わる年金制度。変化を確認しておこう|働き方・家族構成の変化に対応

公的年金制度は、一度決まった仕組みが長く続く制度ではありません。社会環境や働き方、家族のあり方の変化に合わせて、定期的に見直しが行われています。

2025年6月には、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を目的とする法改正(「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」)が成立しました。

この改正では、年金を「受け取る段階」だけで捉えるのではなく、現役時代の働き方や生計の立て方も含めて、制度全体を調整する方向性が示されています。特定の年齢層だけを対象としたものではなく、現役世代から高齢期まで、幅広い世代の将来設計に影響する内容を含んでいるものとなっているのです。

ここからは、主な改正の考え方を整理しておきましょう。

5.1 主な改正内容

社会保険の加入対象の拡大

これまでの年金制度は、長時間・フルタイムで働く人を中心に設計されてきました。

近年の改正ではその前提が徐々に見直され、短時間勤務や中小企業で働く人も、厚生年金や健康保険に加入しやすい方向へと制度が調整されています。

将来の年金額が増える可能性がある一方で、現役時代の保険料負担とのバランスをどう考えるかが、これまで以上に重要なテーマとなっています。

在職老齢年金の見直し

年金を受け取りながら働く場合、一定以上の収入があると年金が減額される在職老齢年金の仕組みは、就労意欲を抑える要因として指摘されてきました。

在職老齢年金制度の見直し9/9

在職老齢年金制度の見直し

出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」

近年の見直しでは、この減額が生じにくくなるよう基準の調整が進められ、年金と収入を両立しながら働き続けやすい方向へ制度が修正されています。

遺族年金の見直し

遺族年金については、これまでの制度に残っていた男女差の是正や、子どもが給付を受けやすくする観点からの整理が行われています。

家族構成が多様化する中で、従来の世帯モデルに依存しない制度へ移行しつつある点は、今回の改正の特徴の一つといえます。

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

保険料や年金額を算定する際に使われる賃金の上限も引き上げられます。これにより、収入が一定以上ある人は、現役時代の賃金により近い形で保険料を負担し、その分、将来の年金額にも反映されやすくなります。

負担と給付の関係を明確にすることで、制度の納得感を高める狙いがあります。

その他の見直し

そのほか、子どもに関する加算や脱退一時金の見直し、iDeCoの加入年齢上限引き上げなど、私的年金を含めた制度全体の調整も行われました。

これらを踏まえると、公的年金はもはや「老後にもらうお金」だけの話ではありません。

現役時代の働き方、収入の得方、そして老後にどのような生活を描くかまで含めて、早い段階から考える必要がある制度へと変わりつつあります。