最近は、役所や公民館、学校、ショッピングセンターや映画館といった公共施設を中心に、AED(自動体外式除細動器)を置いているところも多くなりました。ただ、もし目の前で倒れてしまって動かない人がいたら、あなたは躊躇(ちゅうちょ)なくAEDを使うことができますか?
自動車教習所などで「いちおうAEDの使い方は習ったことがある」という方もいらっしゃると思います。「そもそも使い方がわかるか」という点もあるかもしれませんが、特に女性や高齢者が倒れているときなどに、
・女性の服を公衆の面前で勝手に脱がしてもいいのか……?
・「胸骨が折れるぐらいの勢いで」心臓マッサージするように教わったけど、本当に折れちゃったらどうしよう……?
といった疑念が浮かんで躊躇してしまう方も多いようなのです。では、一体どう行えばいいのでしょうか?
救命処置の手順
まず、本題に入る前に、以下に救命処置(心肺蘇生法とAEDの使用)の手順をごく簡単に記します。
1.肩などを優しくたたきながら「大丈夫ですか?」など呼びかけを行う
2.周囲の人に119番通報とAEDの調達を依頼する(1人の場合はそれらを自分でやったあとに「3」以降の手順を行う)
3.呼吸の確認をする。ない場合、わからない場合は「4」の胸骨圧迫(心臓マッサージ)へ
4.胸の真ん中あたりで1分間100~120回のテンポで胸骨圧迫を30回行う。その後、気道確保と人工呼吸(2回)。普段どおりの呼吸が戻るまで、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返す
5.AEDが到着したらAEDの電源を入れる
6.AEDパッドを指示通りに貼る
7.AEDが解析し、必要と判断された場合、電気ショックを実行する
8.胸骨圧迫を再開する
※ 東京消防庁・日本赤十字社・日本医師会などのウェブサイトの情報をもとに執筆者作成
さて、先ほども触れた通り、上の手順の中で、「AEDパッドを貼る段階」や「胸骨圧迫」で躊躇する人が多いかもしれないと見られているのです。
AED救命に「男女の差」が30%も
京都大学などの調査によると、学校内で心肺停止した生徒に対し、AEDによる救命が使われたかどうかに関して、高校生以上では男女で差があるということが明らかになりました。
具体的には、小・中学生においては男女の差がない一方で、高校生・高専生において、心肺停止した生徒でAEDのパッドが貼られたのは男子のうち83.2%、女子のうちでは55.6%と、実に約30ポイントの差があることがわかったのです。
この差の原因としては、「女性の服を脱がすこと」に抵抗感があるのではないかと推測されており、実際、ネット上でも躊躇する声が多く見受けられます。
ためらいの声
女性へのAED使用に関しては、倒れた女性本人からの申し立てよりも、その周囲の目などを気にする方も少なくないようです。
「“セクハラ“ってよぎるとちょっと躊躇うと思う。服脱がす時、下着剥がす時、パッド貼るとき」
「本人の許可なく女性の肌を勝手に晒すのにはちょっとなぁ」
「意識が少しでもあれば、AEDのために脱がせたとしても痴漢だと思われそう」
「(AED使用中に)スマホで写真撮る野次馬もいそう」
また、女性へのAED使用だけでなく、高齢者などへの使用に対して不安を覚える人もいるようです。たとえば、次のような声が上がっています。