今から3年前には大きなニュースとなりましたが、それ以降も、輸入に頼らざるを得ない原材料価格の高騰などにより、アイスクリームの値上げが数多く見られているのです。また、国内における一部の乳製品不足も一因と考えられます。こうした値上げが、結果的に販売価格上昇に繋がっていることは否定できません。
今年10月には再び消費増税の実施が予定されています。相次ぐ値上げが、アイスクリーム市場の安定成長に歯止めをかける懸念は残ったままと言えそうです。
最後に、アイスクリーム事業を展開する企業の採算性を見てみましょう。最大手のロッテを含めて非上場企業が多いこと、上場企業でも「アイスクリーム」の利益率を開示しているケースが少ないことなどから、採算性を一概に判断することは困難です。
しかし、大手の一角である江崎グリコ(2206)の決算情報を見ると、アイスクリーム事業(注:事業名表記は「氷菓」)の営業利益率が開示されています。それによると、当該事業の2018年3月期の利益率は6.9%となり、主力の菓子事業の7.8%に次ぐ高い収益性となっています。
ただし、その前年度(2017年3月期)の9.1%からは悪化しました。これは、9.1%がやや出来すぎという面の他に、前述した乳製品を中心とした原材料価格高騰の影響を受け、さらに一部製品のニーズが想定以上に高まって増産コストがかさんだためです。とはいえ、それでも安定した高採算事業であることがわかります。
普段、何気なく食べているアイスクリームですが、こうして見てみると、なかなか奥が深いのかもしれません。しかし、これから暑くなる時期に、おいしく食べられればそれで満足ですね。
葛西 裕一