投資先を検討するなかで、「オルカン」と「S&P500」のどちらを選ぶべきか迷う人は少なくありません。
どちらもインデックス投資の代表格として高い人気を誇り、長期で資産形成を考えるうえで有力な選択肢です。
一方で、投資対象や値動きの特徴、リスクの質には明確な違いがあり、単純に「リターンが高いから」という理由だけで選ぶのは注意が必要でしょう。
本記事では、それぞれの基本的な特徴や過去の運用実績を整理したうえで、30年間の長期運用を想定したシミュレーションを通じて、選択の考え方を解説します。
1. 「オルカン」と「S&P500」とは?まずは基本を整理
NISAの積立投資でよく候補に挙がるのが、「オルカン」と「S&P500」です。
どちらもインデックスファンドとして高い人気がありますが、投資対象や値動きの特徴は大きく異なります。
なかには「名前は聞いたことがあるものの、違いまではよく分からない」という人も多いのではないでしょうか。
まずは、それぞれがどのような市場に投資する商品なのか、基本的な特徴から整理していきましょう。
1.1 オルカン(全世界株式)の特徴
「オルカン(オールカントリーの略)」は、全世界の株式に分散投資するファンドを指します。
日本、米国、欧州に加え、新興国も含めた数千銘柄に分散投資されており、1本で世界経済全体の成長を取り込める点が特徴といえます。
最大のメリットは、国際分散が自動的に行われることです。
特定の国や地域の景気に左右されにくく、どこかの市場が不調でも、別の地域が補う構造になっています。
また、世界経済の構造変化に応じて、ファンド内の構成比率が調整されるため、「どの国が今後成長するか」を個人で判断する必要がありません。
このように、オルカンは安定感を重視しながら、長期で着実な成長を狙いたい人に向いた投資対象といえるでしょう。
1.2 S&P500の特徴
S&P500は、米国を代表する約500社で構成される株価指数です。
アップルやマイクロソフト、エヌビディアなど、世界的な影響力を持つ企業が多く含まれており、米国経済の成長をダイレクトに反映する点が特徴です。
過去の運用実績を見ると、S&P500は長期的に高いリターンを上げてきました。
特にIT企業を中心とした成長が株価を押し上げており、「資産を大きく増やしたい」と考える投資家から高い支持を集めています。
一方で注意したいのは、投資先が米国に集中している点です。
米国経済が好調な局面では大きな成果が期待できますが、景気後退や株式市場の調整局面では、資産の変動幅が大きくなる可能性もあります。
成長性の高さと引き換えに、値動きの大きさを受け入れられるかどうかが、選択のポイントになるでしょう。
2. 過去の運用成果を比較すると何が違う?
「オルカン」や「S&P500」をベンチマークとするファンドは複数ありますが、今回は三菱UFJアセットマネジメントが設定している下記2本の運用実績を比較してみましょう。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
2.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用実績
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、米国を中心としつつも、欧州・日本・新興国など世界中の株式市場に分散投資しています。
米国株が好調な局面ではS&P500にやや劣るものの、他の地域が下支えとなるため、値動きは比較的緩やかです。
三菱UFJアセットマネジメントが公表している月次レポートを見ると、以下のような騰落率になっています。
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の基準価額と純資産総額の推移
【2026年1月29日基準】
- 設定日:2018年10月31日
- 設定来リターン:+236.87%
- 直近5年リターン:+156.57%
- 直近1年リターン:+21.02%
- 直近6カ月リターン:+16.39%
- 直近1カ月リターン:+0.77%
2.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用実績
これに対して「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する約500社に集中投資するファンドです。
米国企業は成長力が高く、特にIT・ハイテク分野の拡大を背景に、長期的に高いリターンを上げてきました。
こちらも同じく三菱UFJアセットマネジメントが公表している月次レポートを見ると、以下のような騰落率になっています。
S&P500(eMAXIS Slim 米国株式)の基準価額と純資産総額の推移
【2026年1月29日基準】
- 設定日:2018年7月3日
- 設定来リターン:+291.04%
- 直近5年リターン:+186.67%
- 直近1年リターン:+14.31%
- 直近6カ月リターン:+13.16%
- 直近1カ月リターン:▲1.38%
2018年に設定されてからほぼ右肩上がりに上昇しており、設定来リターンは291.04%にまで達しています。
幅広い国や地域の株式に分散投資するオルカンに比べると、リターンの大きさは米国市場に集中投資するS&P500に軍配が上がります。
とはいえ、米国市場の動向によっては大きく値下がりするリスクもあるため、どちらが良いとは一概には言えません。
3. 「オルカン」vs「S&P500」100万円を30年間放置したらどうなる?
「オルカン」と「S&P500」の運用実績は前述のとおりですが、今後も同等のパフォーマンスを維持できるとは限りません。
投資では必ず価格変動のリスクが伴うため、あくまでも過去の運用実績であることを理解しておきましょう。
ここでは、「オルカン」と「S&P500」に100万円を投資し、30年間放置したらどうなるのかをシミュレーションしてみました。
※騰落率を年平均成長率(CAGR)に換算してシミュレーション
※CAGR(パーセント)=[(X年目の数値÷1年目の数値)^ {1 ÷(X-1)}-1]×100
3.1 「オルカン」に100万円を投資し、30年間放置した場合
まず、オルカンの騰落率を年平均成長率(CAGR)に換算すると、約18.3%となります。(2018年10月31日~2025年12月30日と仮定)
仮に、100万円を年率18.3%で運用できた場合、30年後の資産額は「約1億5500万円」となります。
3.2 「S&P500」に100万円を投資し、30年間放置した場合
こちらも同様に、騰落率を年平均成長率(CAGR)に換算すると、約20.1%となります。(2018年7月3日~2025年12月30日と仮定)
仮に、100万円を年率20.1%で運用できた場合、30年後の資産額は「約2億4000万円」となります。
3.3 なぜこれほど大きな差がついたのか?
一見すると、オルカンは年率18.3%、S&P500は年率20.1%であり、その差は1.8%ポイントにすぎません。
しかし、これを30年間・複利で回すと、結果は指数関数的に広がります。
結果として、元本100万円でも最終的な差は約9000万円に達しており、最大の要因は「年率リターンの差×複利効果」であることが伺えます。
4. 「オルカン」と「S&P500」はどちらを選ぶべき?投資判断のポイントを解説
ここまでのシミュレーション結果を参考に、投資判断のポイントを押さえておきましょう。
4.1 過去のCAGR(年平均成長率)を将来にそのまま当てはめない
今回の年率18~20%という数字は、歴史的にも極めて高い水準です。
特に、S&P500の20%超は、以下のように複数の追い風が重なった結果です。
- 超低金利
- 米国テック集中
- 円安
今後30年も同じ環境が続く保証はありませんので、今回のシミュレーションは「夢のある数字」「複利効果を示す例」として捉えるのが現実的です。
より現実的な視点として、運用利回りを年1~10%と仮定した場合に、30年後の資産額がどの程度になるのかをシミュレーションしたので、参考にしてください。
- 利回り1%の場合:約135万円
- 利回り2%の場合:約181万円
- 利回り3%の場合:約243万円
- 利回り4%の場合:約324万円
- 利回り5%の場合:約432万円
- 利回り6%の場合:約574万円
- 利回り7%の場合:約761万円
- 利回り8%の場合:約1006万円
- 利回り9%の場合:約1327万円
- 利回り10%の場合:約1745万円
※初期投資額100万円、福利計算にて算出
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません
4.2 S&P500のリターンの高さ=リスクの高さ
特にS&P500は高リターンが期待できる一方で、投資先は米国のみとなっており、投資セクターはテック比率が高くなっています。
そのため、30年という長期では、米国の覇権が揺らぐ可能性や、規制強化・税制変更などによって株価が長期停滞する可能性も否定できません。
高い期待リターンは、高い不確実性とセットであることを理解したうえで投資判断を行いましょう。
4.3 オルカンは「リターンの最大化」より「継続性」
オルカンの強みは、世界経済全体に投資するため、特定の国・企業に依存しにくい点にあります。
リターンはS&P500より控えめでも、暴落時のダメージを抑えられる可能性があるため、長期で持ち続けやすいのが特徴と言えるでしょう。
結論としては、リターン最大化を狙うなら「S&P500」、長期で淡々と続けたいなら「オルカン」が、それぞれの合理的な選択です。
「どちらが儲かるか」ではなく「30年間持ち続けられるか」を基準にしつつ、オルカンとS&P500を併用することも検討してみてはいかがでしょうか。
5. まとめ
オルカンとS&P500は、どちらも長期投資に適したインデックスファンドですが、性格は大きく異なります。
今回のシミュレーションでは、年率リターンのわずかな差が、30年という時間を通じて大きな資産差につながることがわかりました。
ただし、過去の高い成長率が今後も続く保証はなく、数字そのものを将来に当てはめすぎない姿勢が重要です。
最終的には、「どちらがより儲かるか」ではなく、「長期間にわたって持ち続けられるか」「値下がり局面でも保有を継続できるか」を基準に選ぶことが大切でしょう。
オルカンとS&P500を併用するなど、自分のリスク許容度に合わせた選択肢を検討してみましょう。
参考資料
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 月次レポート(2025年12月30日現在)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート(2025年12月30日現在)」
加藤 聖人