常に一緒だった幼児期とは違い、小学校以降は子どもだけで日中を過ごす時間も増えるため、突然現れるメンタルの波に慌ててしまう親も少なくありません。
思春期が近づくと口数も減り、なぜ落ち込んでいるのかということも聞き出しにくくなるもの。それでも、“私たちはあなたの味方だ”という姿勢を常に見せておくことが、親である大人にとって一番大切なポイントなのです。
3歳違いの兄とともに、共働き家庭で育った女性のエピソードをご紹介します。
小学校高学年頃から、家庭内での自分の存在について自問自答を繰り返すようになった彼女。原因は、両親が何気なくとっていた態度にあったのです。
思春期を迎えるころ、お兄さんが中学校のテストで優秀な成績をおさめてきました。両親は、“よくやった!”“さすがお兄ちゃん!”などと声をかけていたようですが、妹であるその女性はその頃から疎外感を感じるようになったそう。自分が両親に何か話をしても適当にあしらわれているように感じ、だんだん“自分はいらない子なんじゃないか”と考えるようになったのです。
ふさぎこみがちになっていく娘を見て、両親は“なぜあんなにふさぎこんでいるのかわからない”状態に。「どうしたの?」と声を掛けられても、心を閉ざしてしまった女性は「なにもない」と答え素直な気持ちを伝えなかったそうです。
女性の母親が、大学入学を機に自宅を離れる娘のため準備をしていたある日。娘が、小学校のころに書いた手紙を発見します。そこには、「私なんて生まれなければよかった」と一言書かれていたそうです。
兄への期待が、妹である娘に寂しい思いをさせる原因となっていることにようやく気づき、娘への謝罪。会話の時間をたくさん設け、やっとの思いでお互いの心を通じ合わせることができたのです。
きょうだいがいてもいなくても、日々のあわただしさから子どもの言葉をなんとなく聞き流してしまうことはよくあるもの。子どもが何かを話してきていても、「うんうん」とうなずくだけになってしまうときってありますよね。「はっ!」とあとになって気づく人も、多いのではないでしょうか。メンタルの波が大きなしこりとなってしまわないためにも、できるだけ子どもの言葉に耳を傾け付き合ってあげられるようにしたいものです。
メンタルの波にはしっかり付き合おう
親である大人にとって何の悪気もない行動が、子どものメンタルに影響を及ぼしていることもあります。とはいえ、親である大人も人間。常に正しい行動ばかり取れるわけではありません。
もちろん、専門医でないと対処できないようなメンタルの不調があるもの事実です。しかし、日ごろのちょっとした変化は、親である大人が一番に気づいてあげたいもの。子どもの年齢に合う方法で寄り添って、メンタルの波にできるだけ付き合ってあげられるようにしたいですね。
川西 まあさ