冷え込む夜に暖房をつけながら、ふと頭をよぎるのは、上がり続ける光熱費や日々の生活費のこと。「もし年金だけで生活できなくなったら……」という不安は、決して他人事ではありません。
日本の社会保障の最後の砦とも言われる「生活保護」ですが、実はその受給世帯の構成比において、最も高い割合を占めているのが「高齢者世帯」であることをご存じでしょうか。現役時代に懸命に働いてこられた方でも、病気や予期せぬ出費、あるいは長生きそのものが家計のリスクとなり、支援を必要とするケースが少なくありません。
今回は、生活保護を受給している世帯に占める高齢者の割合と、現在のシニア世代が実際に受け取っている年金の実情について、データを交えて詳しく解説していきます。
1. 「生活保護を受ける世帯の半数以上が高齢者」という日本の現状
厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和7年9月分概数)」によると、2025年9月時点での生活保護受給者数は約199万人です。
これは人口100人あたりに換算すると、約1.61人が生活保護を利用している計算になります。
被保護者の実人員および世帯数自体は前年の同じ月より減少していますが、新たに保護を申請した件数や、保護が開始された世帯数は以下のように増加しています。
- 保護の申請件数:2万2488件(前年同月比656件、3.0%増)
- 保護開始世帯数:1万9352世帯(前年同月比870世帯、4.7%増)
生活保護を受けている世帯の内訳は、次のようになっています。
【世帯類型別の世帯数と割合(保護停止中を除く)】
- 高齢者世帯:55.1%
単身世帯:51.4%
二人以上世帯:3.7%
- 高齢者以外世帯:44.9%
母子世帯:3.6%
障害者・傷病者世帯:25.4%
その他の世帯:16.0%
データから、生活保護を受給している世帯のおよそ半分が「単身の高齢者世帯」であることがわかります。
そこで次の章では、単身高齢者世帯の平均的な生活費と年金収入のバランスについて見ていきましょう。
2. 65歳以上の単身無職世帯における1カ月あたりの平均生活費は?
総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯における家計の収支状況を確認します。
【65歳以上 単身無職世帯の家計収支】
- 実収入:13万4116円
- 可処分所得(手取り収入):12万1469円
- 消費支出:14万9286円
- 毎月の赤字額:2万7817円
1カ月の生活費は平均で14万9286円ですが、税金や社会保険料を差し引いた手取り収入は12万1469円となり、毎月3万円弱の赤字が生じている状況です。
このデータでは、年金収入の額面は13万4116円とされていますが、これはあくまで平均値である点に注意が必要です。
実際に老後に受け取れる年金額は、個人の状況によって大きく異なります。
次の章では、年金の平均的な受給月額を詳しく見ていきましょう。
3. 「国民年金」と「厚生年金」の平均受給月額をそれぞれ確認
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、国民年金と厚生年金の平均受給額を見ていきます。
3.1 国民年金の平均月額
国民年金のみを受給している方の場合、平均年金月額は5万9310円です。
男女別に見ると、男性が6万1595円、女性が5万7582円となっており、大きな差は見られません。
しかし、受給額の分布を見ると、月額5万円に満たない層も一定数いることがわかります。
では、国民年金に上乗せして厚生年金も受給できる場合、平均的な年金月額はどのくらいになるのでしょうか。
3.2 厚生年金の平均月額
厚生年金(国民年金を含む)の平均受給額は、月額で15万289円です。
厚生年金の受給額は、現役時代の加入期間や収入によって決まるため、男女間で差が生まれやすいという特徴があります。
具体的には、男性の平均が16万9967円であるのに対し、女性は11万1413円と、約6万円もの差があります。
さらに、受給額の分布を見ると「月額1万円未満から30万円以上」と、個人差が非常に大きいことも見て取れます。
老後に受け取れる年金額によって、リタイア後の生活水準が大きく変わってくると言えるでしょう。
4. 制度を正しく理解し「もしも」の時の安心材料に
データを見ていくと、生活保護受給世帯の過半数が高齢者世帯であるという現実は、決して特別なことではなく、誰の身にも起こりうる「老後のリスク」の一つであることが分かります。
国民年金の平均受給額だけでは生活費を賄うのが難しい現状がある以上、貯蓄の準備と並行して、万が一の際のセーフティネットについて知っておくことは、心の安定剤にもなります。
生活保護は、決して恥ずべきことではなく、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営むための国民の権利です。
厳しい寒さが続くこの時期だからこそ、ご家族やご自身を守るための制度について正しく理解し、困ったときには役所の窓口や地域包括支援センターなどの相談先があることを、心の片隅に留めておいてください。それが、これからの長い人生を安心して歩むための備えとなります。
※当記事は再編集記事です。