上昇トレンドが続くNYダウは、頻繁に構成銘柄の入れ替えを行っていることが特徴です。しかも、その時々に合わせて、勢いのある銘柄や、いわゆる“旬”の銘柄を新たに組み入れています。

逆に言うと、業績悪化が続く企業、成長が見込めなくなった企業、市場からの注目度が大きく低下した企業は容赦なく除外されます。直近では、AT&Tが除外されてアップルが新規採用となり(2015年3月)、GEが除外されてウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが採用となりました(2018年6月)。

このように、わずか30銘柄の構成ポートフォリオをかなり大胆に入れ替えており、平成の30年間(1989年1月~)で25銘柄の入れ替えが実施されました。その中には、AT&Tのように除外→採用→除外となった銘柄もあります(買収後の社名変更含む)。

こうした構成銘柄の入れ替えに対しては、連続性という観点から異論や批判が少なからずあることは事実です。しかし、常に米国を“代表”する株価指数を堅持するという、強い姿勢も感じられます。こうしたダイナミズムは、米国株式市場の強みと言えましょう。

また、NYダウほど活発ではありませんが、他国の株価指数も銘柄の入れ替えを臨機応変に行っています。

構成銘柄の入れ替えに対して非常に保守的な日経平均株価

一方の日経平均株価はどうでしょうか?

日経平均株価も毎年秋に定期的な見直しを実施していますが、入れ替えなしという年が少なくありません。また、入れ替えたとしても、合併や経営統合に伴う消滅や経営破綻による上場廃止等に伴うものが多く、積極的に“旬”の銘柄を採用する動きは全く見られないのが実情です。

直近では、経営不振のパイオニアが上場廃止となったことに伴い、オムロン(6645)が新規採用となったのが良い例です。パイオニアのような銘柄がその時点まで構成銘柄だったことに驚きを禁じ得ません。

構成銘柄の入れ替えに対して、非常に慎重な、いや、慎重過ぎる株価指数であることは間違いないでしょう。これは、連続性や比較可能性などを重視した結果と推察されます

任天堂、日本電産、オリエンタルランド等は日経平均株価の対象外

もちろん、日経平均株価は東証1部上場銘柄を対象にするなどの選考基準があるため、大昔の大証単独上場銘柄が組み入れられなかった等の経緯は理解できます。

しかし、そういう経緯を考慮しても、任天堂(7974)、日本電産(6594)、村田製作所(6981)、キーエンス(6861)、オリエンタルランド(4661)、小野薬品工業(4528)、ユニ・チャーム(8113)、SMC(6273)、シマノ(7309)、ニトリホールディングス(9843)などの“日本代表”が組み入れられていないことに違和感を覚える人も多いはずです。

一方で、具体的な銘柄名への言及は控えますが、現在の225銘柄の中には、時価総額で1,000億円未満、持続的な成長が見込めない、今後の業界内再編で消滅危機にある、などの銘柄が決して少なくありません。

残念ながら「日本の株価=日経平均株価」は国内外の共通認識

このように日経平均株価は、良くも悪くも変化を好まない保守的な株価指数です。しかしながら、国内のみならず、課外でも「日本株の値動き=日経平均株価」は完全に定着しています。

残念ながら、平成30年間における日経平均株価の動きを見ると、“日本株は低迷した”“失われた30年間”と受け止められても仕方ないと言えましょう。

「令和」の時代は、日経平均株価を日本株の実態を的確に表すよう見直すべき

しかし、NYダウのようにダイナミックに構成銘柄を入れ替えることで、日経平均株価は日本株の実態をより的確に表すことが可能となります。

「令和」という新たな時代では、時価総額でバブル期を上回った日本株の実態を、世界に向けて的確に発信していくことが求められます。それを実現する1つの施策として、「日経平均株価」という株価指数の算出を根本的に見直すことは十分検討に値しましょう。

葛西 裕一