では「悪い借金」ってなんだろう。「悪い借金」とは返せる見込みがないのに借りてしまう借金や、高利の借金のことだ。

さっきのダイエット食品も、最初は売り上げ好調でも、ずっと売り上げが倍々ゲームで伸びていくわけではない。もし、倍々ゲームで伸びていくことを前提で借金をして、工場を増設したり人を雇ったり、はたまた広告宣伝費をかけすぎた挙句、売り上げや利益が落ちてくると、どうなるか。いままで楽に返せていた借金が、途端に返済できなくなるってことだ。

借金を順調に返しているうちは、銀行や金融業者も黙っているが、1回でも返済が滞ると黙ってはいない。返せないとなると、個人資産の差し押さえや自己破産さえも覚悟しなければならない。もっとも、究極のダイエット食品のようなアイデアでポン!と金を貸してくれるところは、ほとんどないだろうけれど(苦笑)。

だから、ビジネスを始めるときは安易に金を借りるのではなく、まず自己資金の範囲でスタートすることを勧めるよ。借金するにしても、そのビジネスの利益の中から返せる範囲でとどめておくべきだ。毎月の返済額が10万円だとすると、最低10万円の利益が出てないと借金は返せない。分かるよな。

こんな話をしていると、その昔銀行員時代に担当していた某駅前の小さな美容院のことを思い出す。そこの若主人はコツコツ預金を積み立てながら、銀行から借りた借金を着実に返済してくれていた。30歳前で自宅も店も構え、たいした若者だと思っていた。

この間そのお店のホームページを初めて見たら、今では関東圏に20店舗以上展開し、東京ガールズコレクションにまで参加する企業になっている。借金をしっかり返して信用を得て企業規模を拡大し、資産もしっかり残しているのだろう。つまり、彼は「いい借金」をしたということになる。

信用 × 勤勉 × 時間、結局これが資産形成の基本なんだ。

<<これまでの記事はこちらから>>

太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)