休日の過ごし方として様々な選択肢が増えた今、楽器演奏も現代の趣味として少しずつ変化しているようです。
外に出たくても出られなかったコロナ禍に、家でもできる趣味として人気があったことも記憶に新しいのではないでしょうか。
では、楽器を始めた人がどのような想いで楽器を手に取り、日々の生活にどのような変化を感じているのでしょうか。今回は、楽器演奏を始めた人の深層を紐解いていきましょう。
1. 楽器演奏のトレンドとは?
Music Diversityが実施した「Z世代・ミレニアル世代の楽器学習に関する実態調査」を見ていきましょう。
1.1 調査概要
- 調査タイトル:Z世代・ミレニアル世代の楽器学習に関する実態調査
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:ここ3年以内に楽器を始めた10代後半〜40代前半の男女 300名
- 調査期間:2025年12月15日〜12月17日
- 調査地域:全国
- 調査主体:株式会社inote
- 注記:本アンケートは複数回答を含む設問があるため、合計が100%にならない場合があります
1.2 デジタル化で気軽になった「楽器への入り口」
楽器を始めたきっかけ
- 昔やっていた楽器の再挑戦: 26.7%
- YouTubeやTikTokの演奏動画を見て: 18.0%
- 自宅で過ごす時間が増えたから(暇つぶし): 18.0%
- 好きなアーティストアイドルの影響(推し活): 10.7%
- ストレス解消・デジタルデトックス: 10.0%
- アニメや映画、マンガの影響: 7.0%
- その他: 9.7%
楽器を始めるきっかけとして、最も大きな割合を占めているのが「昔やっていた楽器への再挑戦」で26.7%に上ります。
一度は挫折したり離れたりした経験がある人が、再び音楽をやってみようとするリターン層の厚さがわかります。
一方で、「YouTubeやTikTokの演奏動画を見て」と「自宅で過ごす時間が増えたから(暇つぶし)」が18.0%で同率となっています。
デジタルメディアの普及が楽器演奏への心理的なハードルを下げ、暇つぶしの選択肢となるような、手軽に始められる環境を後押ししているようです。
2. 多様化する選択肢と「王道楽器」の根強い人気
Z世代・ミレニアル世代が始めた楽器ランキング TOP10
- ピアノ: 34.0%
- アコースティックギター: 17.0%
- エレキギター: 10.0%
- ウクレレ: 8.3%
- ベース: 6.7%
- ボイトレ: 4.3%
- ドラム: 4.3%
- サックス: 2.7%
- バイオリン: 2.3%
- フルート: 2.3%
- その他: 8.0%
具体的に選ばれている楽器の種類においては、ピアノが34.0%と他を大きく引き離して1位となっています。
次いでアコースティックギターが17.0%、エレキギターが10.0%と続いており、メロディと伴奏の両方を一人で奏でられる「弾き語り」が可能な楽器が好まれる傾向にあります。
またウクレレが8.3%となっているのは、弾き語りができるのみならず、ボディが小さいことから置き場所の心配が他の楽器より少ないということもあるでしょう。
さらに、コロナ禍にはできなかったカラオケができるようになっていることからも、ボイトレを始める人が一定数いることもよくわかりますね。
3. 「タイパ」を重視する独学中心の学びスタイル
楽器の練習方法
- YouTubeなどの動画で独学: 60.7%
- 教則本・楽譜サイトで独学: 42.7%
- 対面式の音楽教室: 18.0%
- アプリで独学: 6.3%
- オンラインレッスン: 1.7%
現代の楽器練習において、最大の特徴と言えるのがその学習方法です。
「YouTubeなどの動画で独学」が60.7%と圧倒的であり、「教則本・楽譜サイトで独学」も42.7%と約四割になっています。
対面式の音楽教室は18.0%にとどまっていることからも、多くの人が自分の好きな時間に好きなペースで学びたいと考えているようです。
以前はピアノなどを「習う」というイメージがありましたが、その印象は少しずつ変わってきているのかもしれませんね。
4. デジタル疲れを癒やす「音楽」のメンタル効果
楽器を始めてから、生活・メンタルの変化
- ストレスが減った: 29.7%
- 自己肯定感が上がった: 22.0%
- スマホを見る時間が減った: 16.3%
- 特に変化はない: 15.3%
- 仲間ができた: 10.3%
- 挫折しそう: 4.7%
- その他: 1.7%
楽器演奏がもたらす生活やメンタル面への影響は、非常にポジティブな感覚として現れているようです。
最も多くの人が実感しているのは「ストレスが減った」ことであり、29.7%にも上ります。
次いで「自己肯定感が上がった」が22.0%、「スマホを見る時間が減った」が16.3%と続いています。
興味深いのは、単なる精神的な満足感だけでなく「スマホを見る時間が減った」という具体的な行動変化が生まれている点です。
SNSなどの情報の波にさらされ続ける日常から離れ、楽器の練習を通して「自分自身と向き合う時間」を持つことができていることがわかります。
5. 「おうち時間」と楽器需要の高まり
「楽器(部品を含む)」の月間支出額
- 2024年: 131
- 2023年: 136
- 2022年: 186
- 2021年: 139
- 2020年: 199
- 2019年: 147
- 2018年: 130
こうした楽器への関心の高まりは、家計の支出データからも垣間見えています。
総務省の家計消費状況調査によると、「楽器(部品を含む)」への1世帯当たりの月間支出額は、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年に199円と、その前後の年と比較しても突出しています。
外出自粛という制限された生活の中で、多くの人が「家で楽しめる新しい趣味」として楽器を選択していたようです。
その後、支出額は落ち着きを見せているものの、一度手にした楽器が現在のメンタルケアや自己研鑽のツールとして、今の生活に深く根付いていることでしょう。
6. まとめにかえて
楽器演奏は単なる「習い事」を超えて、現代人の「セルフケア」へと進化しています。
動画視聴がきっかけで始めた人が多いことや、YouTubeでの独学派が6割を超えていることから、こうした動画が楽器演奏のハードルを下げていることがわかります。
コロナ禍の「おうち時間」で急増した楽器演奏が、今ではスマホから離れ自分と向き合う「デジタルデトックス」となっているようです。
参考資料
LIMO・U23編集部