厚生年金や国民年金は原則として65歳から受給開始となりますが、年金所得については公的年金等控除が適用できるため、所得を圧縮することが可能です。

所得が少なくなれば住民税が非課税になることがあり、実際に多くの年金生活者世帯が住民税非課税世帯に該当しています。

本記事では、65歳以上の住民税非課税世帯が知っておきたい3つの優遇措置について解説していきます。

和田 直子

 

現役時代を終えて年金生活に入ると、医療費や社会保険料などの固定費が家計の大きな負担になります。老後の年金は「公的年金等控除」によって所得が抑えられるため、多くの年金生活者世帯が「住民税非課税世帯」の対象となっています。該当すると日々の負担を大きく減らせる様々な支援策を利用できますので、まずはどのような優遇措置があるのかを一緒に確認していきましょう。

1. 3つのポイントの見出し

  •  住民税非課税世帯になると、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料が減免・減額され、固定費を抑えられます。
  • 医療費や介護サービスの自己負担額が通常より引き下げられますが、介護の支給限度額を超えた分は全額自己負担になるため注意が必要です。
  •  所得要件などを満たすと、年金に上乗せして「年金生活者支援給付金」が偶数月に支給され、生活の負担を軽減できます。

 

2. 住民税非課税世帯となる要件

住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税非課税に該当する世帯のことです。住民税は「均等割」と「所得割」の2つで構成されており、住民税非課税世帯になるためにはいずれも課されないことが要件です。

住民税非課税世帯になるための所得要件は自治体により異なります。東京都23区を例に確認してみましょう。

東京都23区で住民税非課税世帯に該当するのは、次のいずれかの場合です。世帯員全員がそれぞれの要件を満たしている場合、住民税非課税世帯に該当することになります。

  • 生活保護法による生活扶助を受給中の方
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下
    ※給与所得者の場合は、年収204万4千円未満
  • 前年の合計所得金額が次の金額以下の方
    ・生計を一にする配偶者や扶養親族がいる方:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
    ・生計を一にする配偶者や扶養親族がいない方:45万円以下

例えば、配偶者を扶養している2人世帯の場合、本人の前年の合計所得金額が101万円以下で、なおかつ配偶者自身の所得も非課税基準(45万円以下)に収まっている場合に、住民税非課税世帯となります。

では、65歳以上の住民税非課税世帯が知っておきたい3つの優遇制度について確認していきましょう。

3. 社会保険料の軽減・減免措置

65歳以上の方でも、国民健康保険料や介護保険料といった社会保険料が年金から控除されます。

しかし、住民税非課税世帯には、保険料の軽減・減免制度が設けられています。

3.1 国民健康保険料の減免制度

国民健康保険料の減免制度1/2

国民健康保険料の減免制度

出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」

国民健康保険料は応能分(所得割・資産割)と応益分(均等割・世帯割)で構成されています。

住民税非課税世帯など前年所得が一定基準以下の世帯は、このうち応益分が減免対象となります。

減免割合は、前年の所得や被保険者の人数によって、7割・5割・2割のいずれかです。

3.2 介護保険料の減免

介護保険料は、世帯の課税状況や前年所得などにより段階が決められ、住民税非課税世帯に該当すると、基準額よりも減額された金額になります。

例えば大田区では、住民税非課税世帯は所得等に応じて第1段階から第3段階に該当し、最も所得の低い第1段階の介護保険料は基準額の0.25倍になります。

段階の振り分け方や基準額は自治体により異なるため、詳しくは自治体の介護保険担当窓口で確認してください。

4. 高額な医療費・介護サービス費の自己負担軽減

65歳以上の住民税非課税世帯では、高額な医療費や介護サービス費用がかかった際の自己負担額も軽減されています。

低所得世帯であっても、安心して医療や介護サービスを受けられる環境が整備されています。

4.1 医療費負担の軽減措置

1ヵ月にかかった医療費が一定金額(自己負担限度額)を超えた場合、高額療養費制度により、申請すると後日超えた金額の還付を受けられます。

※現在は、病院の窓口でマイナ保険証(オンライン資格確認)を提示するか、事前に「限度額適用認定証」を提示すれば、最初から窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。

自己負担限度額は年齢や収入によって異なり、住民税非課税世帯は通常よりも引き下げられています。

住民税非課税世帯のうち70歳未満の世帯の上限額は3万5400円です。また、70歳以上75歳未満の世帯では、所得により2万4600円または1万5000円に軽減されています。

4.2 介護利用料負担の軽減措置

介護サービスの利用では、要介護度などにより1ヵ月に保険給付を受けられる上限額(支給限度額)が決められています。限度額内で利用した分の自己負担割合は1割〜3割ですが、住民税非課税世帯であれば1割負担で済みます。

また、この限度額内で生じた自己負担額には月額の上限が設けられており、住民税非課税世帯の場合は世帯で2万4600円(※)を超えた分が「高額介護サービス費」として後から払い戻されます。

ただし、支給限度額を超過して利用した分については、この軽減措置の対象外となり、全額がそのまま自己負担になるため注意が必要です。

(※注:非課税世帯のなかでも、本人の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の方などは、さらに低い「個人で1万5000円」の上限が適用されます)

5. 年金生活者支援給付金の支給

老齢年金生活者支援給付金の支給要件・給付額2/2

老齢年金生活者支援給付金の支給要件・給付額

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度 特設サイト 」

住民税非課税世帯といった低所得の年金生活者世帯には、要件に該当する場合、年金生活者支援給付金が支給されます。

年金生活者支援給付金とは、年金収入やその他所得の合計額が一定基準以下の場合に、年金に上乗せして支給される給付金です。

受給中の基礎年金の種類により支給される給付金が異なり、老齢年金を受給している方に支給されるのは「老齢年金生活者支援給付金」です。

老齢年金生活者支援給付金の支給は、次の要件をすべて満たしている方が対象です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金受給者である
  • 世帯内の全員が市町村民税非課税である
  • 前年の公的年金等の収入金額※1とその他所得の合計額が次の金額以下である※2
    ・昭和31年4月2日以後生まれ:90万9000円以下
    ・昭和31年4月1日以前生まれ:90万6700円以下
    ※1 障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まない
    ※2 以下の場合は「補足的老齢年金生活者支援給付金」の支給対象
    ・昭和31年4月2日以後生まれで80万9000円を超え90万9000円以下
    ・昭和31年4月1日以前生まれで80万6700円を超え90万6700円以下

支給額は月額5620円(基準額)で、老齢年金と同じタイミングで支給されます。つまり、年に6回、偶数月の原則として15日が振込日です。

6. おわりに

65歳以上の住民税非課税世帯には、社会保険料の軽減・減免措置や医療費・介護サービス料の自己負担軽減、年金生活者支援給付金の支給などの優遇措置が設けられています。

ほかにも、自治体独自の優遇措置が設けられているところもあるかもしれません。

65歳以上の年金生活者世帯では、住民税非課税世帯に該当するケースが多いです。今回の記事でご紹介したような優遇措置をもれなく活用し、生活の負担を軽減していきましょう。

和田 直子
金融メディアで日々このような一次資料を読み解く中で感じるのは、高齢者向けの優れた負担軽減策がある一方で、その多くが自ら確認や申請をしないと恩恵を受けられないという点です。特に介護サービス費の支給限度額超過といった注意点もあり、事前の正しい情報収集が欠かせません。こうした制度の仕組みを正しく把握し、お住まいの自治体の窓口や届いた通知をしっかり確認することが、老後の家計と安心を守るための大切なファーストステップになります。

参考資料

木内 菜穂子