4. 「貯蓄」「収入」「支出」の平均値で見た生活
これまで確認してきた3つの数値を基に、老後の経済状況を考察してみましょう。
65歳以上の夫婦二人世帯では、平均収入が約27万3000円、支出が約28万6000円となっており、通常の生活で月々約1万3,000円の赤字が生じます。この状況で、平均貯蓄額2509万円を有している世帯であれば、理論上は約160年分の赤字をカバーできるため、経済的な不安は少ないと言えるでしょう。
一方で、全体の1割以上を占める貯蓄200万円未満の世帯では、同じ赤字が続けば約12年で貯蓄が尽きる計算となり、長期的な老後生活に不安を抱える可能性が高くなります。
5. 今から始める老後の生活設計
ここまでのシミュレーション結果を見て、将来について改めて考えた方も多いのではないでしょうか。
もし今回の結果に不安を感じたとしても、悲観する必要はありません。大切なのは、現状を冷静に把握し、今から備えることです。ここからは、安心して老後を迎えるために、現役世代のうちから取り組むべきポイントを解説します。
5.1 月の支出の見直し
老後のための家計を考える第一歩は、自分の世帯の「お金の流れ」を把握し、支出の見直しをすることです。「家計を絞る」「節約する」だけではなく、日々の支出を振り返ることで、必要なものとそうでないものを振り分けるための「整理整頓」を行うことが重要です。
具体的には、まずは家計簿アプリなどを活用して、月の支出を目で見えるようにしましょう。支出を「固定費(毎月一定額が支払われる支出)」と「変動費(生活によって金額が大きく異なる支出」に分けると、整理がしやすくなります。
固定費は毎月発生する支出のため、金額を抑えることができれば年間で大きな削減を行うことも可能です。まずは固定費の見直しを行い、過剰に支払っているサブスクリプションや契約代金がないかを確認しましょう。そのあとで、月々の変動費の中で、無駄に感じられるものがないかを見直していくのがお勧めです。
無理して支出を抑えるのではなく、生活の中でムダがないかを改めて確認していく作業を、定期的に行うことが非常に重要になります。
5.2 老後に備えた貯蓄
今回確認した貯蓄額の統計では、200万円未満の世帯が約11%と、10世帯に1世帯以上の割合となっている一方で、中央値は1658万円と、50%以上の世帯が1600万円以上を保有していることが明らかになっています。
貯蓄は、一朝一夕で出来上がるものではありません。できるだけ早いうちに、コツコツと資産を作っておくことで、老後を豊かに暮らすための生活資金を育てることができるのです。
現代においては、個人の投資を促進するための新NISA制度やiDeco制度など、様々な優遇税制が誕生しており、「自分で資産を育てる」というハードルが徐々に下がってきています。
老後が始まってから「やっておけばよかった」という後悔をしないよう、少しずつお金を育てていくことを意識するようにしましょう。
5.3 収入(年金)額の増額
支出の見直しや貯蓄・資産投資と並行して、老後の収入の中心となる「年金」を増やす工夫も重要です。
公的年金は、基本的に現役時代の働き方によって支給額が決定します。
「厚生年金の加入期間を延ばす」「報酬額を増やす」ことなどによって、将来の年金額を増やすことが可能です。さらに、受け取り時期を繰り下げることで、年金額の割り増しをすることができるため、月に受け取れる年金額を増やすことができます。
ただし、現在の制度では原則として65歳に開始できる年金の受け取りを、さらに遅らせることになるため、受け取り年齢までの資金的な余裕を検討する必要があります。
自営業者やフリーランスの場合、会社員が加入する「社会保険」の制度が適用されないため、年金額を増やしたいと考えた時は、その他の制度を活用する必要があります。
例えば、国民年金では、月々400円の保険料を上乗せして納める「付加年金」という制度があります。これにより「200円×付加保険料納付月数」の金額が将来の年金に加算され、2年以上受け取れば元が取れるお得な制度です。さらに、国民年金基金やiDecoを活用することにより、将来年金のように受け取れる金額を増やすことが可能です。