2019年4月15日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社ほぼ日2019年8月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料 質疑応答パートはこちら
スピーカー:株式会社ほぼ日 代表取締役社長 糸井重里 氏
株式会社ほぼ日 管理部長 鈴木基男 氏
株式会社ほぼ日とは
鈴木基男氏(以下、鈴木):こんにちは。お越しいただき、ありがとうございます。本日、ほぼ日の第2四半期の上半期の決算ということで、説明会を開催させていただきます。管理部長の鈴木と申します。よろしくお願いします。
まずは、毎度申し上げていることですが「株式会社ほぼ日とは、一体何をしている会社なのか?」といったところをご紹介します。
株式会社ほぼ日とは、「人々が集う『場』をつくり、『いい時間』を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売する会社」です。「いい時間」をみなさんに感じていただけるような「場」をつくって、その「場」で「いい時間」を感じていただけるように、コンテンツを提供し続けるといったところを考えています。
コンテンツとは、いわゆるインターネット上のメディアのコンテンツに限らず、「番組・出し物・たのしみ」であったり、「読みもの、キャラクター、画像、イベント、モノのかたちの商品」といった、アイデアを詰め込むことにより、それを通して「いい時間」を過ごせるようなものすべてを総称して、コンテンツと言っています。
ほぼ日の提供するおもな場
「いい時間」を感じる「場」として、私たちが丁寧に育てているものとして、現在8つほど展開しています。まず「ほぼ日刊イトイ新聞」。これは1998年に創刊して、もうすぐ21周年となります。ここではオリジナルのコンテンツを毎日更新しているので、その記事を読んだり、そこでのストーリーを感じることで、「ああ、いい時間だな」と感じながら過ごしていただけるようなものです。
そうした、いろいろな「いい時間」を過ごす「場」をしっかりと育てていき、そこに「いい時間」を感じられるコンテンツを入れていく。そして、そこが徐々に輪として広がっていくことで、そこに集う人を増やしていくということを目指しています。人が集まってくるようになれば、そこで何らかの価値を提供することで、対価(を得る)ようなことがやりやすいのではないかというところもあります。
ここは、「一気に収益に向けてグッと拡大しましょう」というよりは、丁寧に、丁寧に育てていくことに注力しています。
サマリー
今日のトピックのサマリーになります。上半期に関しましては、手帳のシーズンがありましたので、第1四半期とあまり代わり映えしない部分にはなるのですが、簡単に触れたいと思います。
上半期に関しては、売上高は前期比同水準で推移しています。利益ベースでは、約1割の増益となっています。
そして、「ほぼ日手帳」の2019年版の販売を開始しました。「ほぼ日手帳」は、卸を中心に好調に推移しています。また「生活のたのしみ展」は、上半期としては第1四半期で出張巡回展として、大阪で開催しています。これが上半期のサマリーになります。
下半期以降の取り組みです。本日、プレスリリースを出させていただきましたが、秋にリニューアルオープンする渋谷PARCOで、2つの場所で同時出店が決まっています。それから、第4回「生活のたのしみ展」ということで、明後日(4月17日)、東京・丸の内で開催します。日曜日(4月21日)までの5日間になります。
「ほぼ日の学校」では、通学する99人でのクラスですが、ダーウィン講座で第4回を開催することが確定しています。
【上半期の事業報告】P/L 前年同期比較
まず、上半期の数字からご説明します。売上高については、前年同期比でプラス4.0パーセントで微増です。金額でいきますと、34億6,700万円となっています。第1四半期では、昨年比で約14パーセントくらい伸びていたところですが、ここの場でもお伝えしましたとおり、去年の第1四半期ではなかったような新商品が、第2四半期に発売されました。
それが、今期に関しては第1四半期から販売していたため、「売上が前に寄ったかたちで数字ができています」とお伝えしていましたが、まさにそのとおりで、第2四半期までで、前期比でプラス4.0パーセントとなっています。通期の業績予想ではプラス4.7パーセントと出していますが、おおむね想定どおりに進捗しています。
内訳としましては、「ほぼ日手帳」が23億500万円で、昨年比で7.2パーセントプラスで動いています。「ほぼ日商品」に関しましては8億7,100万円で、昨年比でマイナス5,000万円ほどショートしています。こちらに関しては、昨年はこのシーズンに「ほぼ日のアースボール」が出たばかりで、そこで売上がけっこう作られていたため、その差分が出ている状況になっています。
各段階利益についてです。営業利益は8億2,700万円、昨対比でプラス10パーセントとなっています。こちらも通期の業績予想と比較しても、ほぼ想定どおりで推移しています。
【上半期の事業報告】P/L 販路別売上高
続いて、売上をブレイクダウンしていきます。上半期累計での直販比率は62.9パーセントとなっていまして、前年同期比で3.9ポイント下落しています。この上半期でいきますと、卸販売に関しては、ロフトおよびAmazonなどの主要な卸販路で好調に推移しており、こちらが大きく増加しています。
一方で、直販に関しては、先ほども申し上げたような「ほぼ日商品」での減少があり、5,500万円程度の減少で推移しています。
【上半期の事業報告】P/L 地域別売上高
続いて、地域別になります。上半期の海外売上比率は21.4パーセントで、前年同期比で1.3ポイント増加しています。直販の海外売上が引き続き好調なのに加えて、卸販売ではアメリカのAmazonが好調に推移しました。
中国向けに関しては、昨年のこの期間の2億4,400万円に対して、今年は2億2,400万円で、前年比で2,000万円ほどマイナスです。中国への展開に関して、もともとは「ほぼ日ストア」の直販で、中国への出荷が徐々に増えていっているところがありました。
「中国にいる日本人の方々が買ってくれているのかな」と思っていたのですが、販売が増えていくうちに、「けっこう中国の現地の方々が買ってくれている」というところも見え始めてきました。
そこで、より中国での販売を強化すべくと言いますか、お買い求めがしやすいようにということで、2018年版の手帳から、中国の代理店を通じて「WeChat」上に公式アカウントを開設し、そこで販売するなどして強化していたところです。
もう少し私たちらしい販路の拡大の仕方を模索したいところもあり、代理店との取り組みを抜本的に見直していこうというところで、今回のタイミングでいくらか返品していただきました。
あとは、この四半期に関しては、中国の税関強化に伴って、今まで個人で買っていただいた方が、税関で関税がかかるため受け取りを拒否するかたちで戻ってくるケースが多く発生しました。そういったこともあって、(中国の売上は)減少しています。
ただし、これは私たちの今の解釈ですが、一時的な商流の乱れによるものと思っており、中国での需要自体が変化してこうなっているとは考えていませんので、これから2020年8月期の手帳の販売に向けて、抜本的な販売の仕方の見直し等々を行っています。
【上半期の事業報告】B/S 対前期末比
B/Sに関しては、前期末に残っている棚卸資産が売上および現金と利益になっていくかたちで、順調に推移しています。
【上半期の事業報告】ほぼ日手帳について①
ここから、トピックスを簡単に共有します。「ほぼ日手帳」についてですが、9月1日に「ほぼ日手帳2019」の販売をスタートしています。
【上半期の事業報告】ほぼ日手帳について②
今回、売上を伸ばすところを牽引しているものは、今年の新商材となっています。「ほぼ日手帳」の大きいものや、「ひきだしポーチ」の新しいラインである「ひきだしポーチ・姉」といったものが売上の増加を牽引しています。
【上半期の事業報告】ほぼ日手帳について③
これも前回お伝えしましたが、糸井が「お礼行脚」ということで、手帳づくりに関わる全国の26ヶ所を訪問しております。
【上半期の事業報告】生活のたのしみ展①
こちらは「生活のたのしみ展」の第3回の出張巡回展で、9月に大阪で開催したものになります。
【上半期の事業報告】生活のたのしみ展②
規模(の変化)について、面積で言いますと(第1回から)「500平方メートル弱」「1,000平方メートル」「1,200平方メートル」「700平方メートル」となっており、出展数も(スライドのとおりの)推移をしています。後で、今回東京で開催する部分に関してもお伝えしますので、頭に留めておいていただければと思います。
【上半期の事業報告】ほぼ日の学校①
「ほぼ日の学校」です。こちらは今、絶賛「万葉集講座」をやっています。先日も、俵万智さんが講師として来てくださいました。また、ちょうどこのタイミングで新しい元号である「令和」が発表されたこともあって、テレビの取材が来るなど、少しだけ社内は沸きました。
【上半期の事業報告】ほぼ日の学校②
そして、オンライン講座ですが、少しずつ講座のラインナップが増えるにしたがって、申し込んでくれるお客さんも少しずつ増えているのが現状です。
【上半期の事業報告】ドコノコ
「ドコノコ」についても、迷子探しをより効果的にやったり、オフ会などが自然に開催されたりと、少しずつ広がりを見せています。
【下期以降の取組み】渋谷PARCO × ほぼ日
続いて、下半期以降の部分になります。先ほど少し申し上げましたが、渋谷PARCOが(2019年秋に)リニューアルオープンして、こんな(スライドのような)かたちになります。こちらに私たちも出店させていただくことになります。
もともと南青山と京都で「TOBICHI」というリアルの場を持っていて、そういったリアルの場を活かして、イベントやワークショップを通じて私たちのことを知ってもらい、楽しんでもらっていましたが、さらに新しい場ができるということです。これまでと比べてもかなり人通りのある場所ですので、新しいお客さんとの出会いを期待しています。
【下期以降の取組み】生活のたのしみ展
続いて、明後日(4月17日)から始まります「生活のたのしみ展」についてです。テーマは「東京と世界」。9月のラグビーワールドカップや、来年は東京オリンピックなどが控えていますので、その前に「東京と世界」というテーマで「生活のたのしみ展」を開催します。
今回は開催場所は3ヶ所で、丸の内の仲通り、丸ビル、TOKIAガレリアとなっています。総面積は1,460平方メートルで、面積としてはこれまででもっとも大きくなっています。
出展者数も60店舗で、今回新しく出展いただくのが32店舗と、半分以上が新しいところとなっています。実は私も、初めて運営サイドとして参加するのでドキドキしていますが、明後日から始まりますので、ぜひお越しください。
【下期以降の取組み】ほぼ日の学校
続いて、先ほどお話しした「ほぼ日の学校」です。「ダーウィンの贈りものⅠ」ということで、ダーウィンシリーズを5月から開催します。
【下期以降の取組み】「カレーの恩返しカレー」
また、本日お手元にカレーが配られているかと思うのですが、そちらはレトルトカレーです。これまで「カレーの恩返し」というスパイスを販売していたのですが、「レトルトができたらな」ということで、ずっと糸井も考えていました。そして、納得のいくものがついにできたということで(発売しますが)、とてもおいしいです。
社内では毎週給食があるのですが、社員には先んじて、試食も兼ねて提供しました。なかなか反響がよく、非常にいいものができました。ぜひ、(会場にお越しの)みなさんにもご賞味いただければと考え、本日お持ちしています。
こちらは、明後日の「生活のたのしみ展」で先行販売し、5月の下旬からWebで販売しますので、パッケージの取り扱いにご注意いただければと思います。初めて販売されるのが明後日となっていますので、お気をつけください。
【下期以降の取組み】ほぼ日手帳
「ほぼ日手帳」ですが、2年目の「ひきだしポーチ」のラインナップということで、手帳カバーで使っていた生地や素材をポーチに活かしており、「ほぼ日手帳2019」のカバーから新しいデザインが出ています。
下半期以降のトピックスとしては、以上となります。ここから、糸井にバトンタッチします。
糸井重里氏より、ほぼ日が展開している現在の事業について
糸井重里氏(以下、糸井):こんにちは。四半期決算をこんなにやったほうがいいのかどうかということで、よくご意見があるのですが、今回もこうしてやっています。
「なにもないときがあるんじゃないかな」と思いながら、心配していたんですが、今回は一応、みなさんにもニュースとして取り上げていただけるようなものが、秋のPARCOの出店です。
もともとは、いわばEコマースのお店と捉えていた方がおられると思んですが、状況がだいぶ変化してきました。「ほぼ日刊イトイ新聞」が始まってから20年。いわゆるEコマースというかたちでネット通販を始めてから、もう20年近くが経っています。
その中で、どんなふうに我々の仕事を展開していくのかについて、ずっと危機感と期待を持ってやってきたわけですけれども、人から見たらアンテナショップと見えるかもしれない「TOBICHI」の成果、あるいは仕入れてくださる方々のご希望みたいなものをいろいろ見ております。
例えば、スパイスミックスも、ネット通販でどうのこうのというだけではなく、スーパーマーケットやコストコなどにも置いてあります。このルートがどうなっていくかを、少しずつ、「ノック」をして試してきた状況です。
手帳もそうなんですが、我々がBtoCのかたちでやってきたネット通販から、BとBを結びつけてCにたどり着くという、かなり複雑な商品ルートをたくさん試してきたつもりでおります。
手帳の場合ですと、限られた手帳を扱ってくださるところに卸します。具体的にはロフトが中心だったんですけれども、そのほかにも、今で言うとAmazon、あるいは各種文房具を扱ってくれる本屋で、ほかの商品である「weeks」を置いて、何がどう動くのかということを少しずつ見てきたわけです。Eコマースの通販にこだわらなくてもやっていけるビジネスモデルをずっと探している最中です。
当たりがよいところがけっこう出てきまして、「TOBICHI」での実験などもだいたい見通しがついてきたということで、思い切って今回は渋谷の真ん中で、ずいぶんやる気になっているPARCOさんとお話が進みまして、お店というか……「あんまり詳しく言ってくれるな」という状況なのですが、2ヶ所出すことになりました。
その先、どうなるかについても実験を兼ねながらやっていくと思いますけれども、我々はあくまでもコンテンツを売るのが本業だと思っています。さて、PARCOの中で我々がどういうコンテンツで人に喜んでいただけるか。
買い物ではないですけれども、我々の「喜ばれている」という実績が、どんなふうにそこで展開されていくのか、そして商品やサービスというかたちで、どのように実を結んでいくのか。ここを皮切りに、また大きく展開できるのではないかなと思っています。
(開催まで)いよいよ48時間を切りましたということで、社内は沸いておりますけれども、今回は丸の内でやります。(第3回を開催した)恵比寿は、サッポロ不動産開発さんとのBtoBの仕事がベースにあったのですが、今回は三菱地所さんとの提携ですので、丸の内にお勤めの会社の方々が、我々と直に接していただくよい機会になるのではないかと思っております。
もともとは、直接会ったり出向いていかなくてもできる仕事としてスタートしたはずのインターネットビジネスであると、みなさんも考えられたかと思うんですけれども、20年も経つと、だいぶいろいろなものが複雑になってきます。
インターネットだけでやっていくことの限界と可能性。それは、今でもどっちにバランスをかけるのかということで、いろいろな会社が苦労しているところだと思いますけど、私たちの場合には、そのバランスのテストを小さい規模でずっとやってきております。
もちろん「生活のたのしみ展」も、具体的な数字を挙げていませんけれども、うまくいっております。今までになかった「大家賃」を払うところから出発して、はたしてそれができるのかということで、心配なさった方もいらっしゃるかもしれません。
とくに、前回の阪急うめだ店の取り組みがいい勉強になりまして、今度は三菱地所さんということで、我々が丸の内に出かけていく。これがまた新しい販路を作るということでもあり、同時に、仕入れ先をまた増やすきっかけになるのではないかと思っています。
学校のビジネスもそうですし、「ドコノコ」というアプリもそうですし、「生活のたのしみ展」も、みんな同じなんですけれども、仕入れの仕事として、とても大きなものです。
例えば学校で言いますと、「今、我々が集めている講師の方々や、賛同して来てくださっている講師の方々を、大学で集めたらどうなるだろう? 昔のように出版社で集めたらどうなるだろう?」と考えたときに、たぶん、こんなプログラムはとても組めないと思います。ここに集まってくださる生徒さんたち(は感じているかも知れませんが)、こんなふうに集まってくださる方々のバラエティ(の豊かさ)は、おそらく今までのカルチャーセンターにはないと思います。
新しいエンターテインメントのかたちとして、「学問」というとちょっと違うかもしれないですが、知的な興味を夕方以降に満たしてくれる場所があって、そこを入口にして、学ぶことや考えることが楽しくなるような学校という場所ができました。そして、今までは(授業を)聞いていないかもしれない学生(を相手)に講義をしていた方々や、カルチャーセンターで同じ顔ぶれの人たちに同じような授業をなさっていたような方々も含めて、ここで大きな盛り上がる場を作って、講師と生徒が一緒になって、知の興味の中に飛び込んでいくような場所ができたということで、学校の可能性も非常におもしろいところに来ています。
同時に、これは「ほぼ日刊イトイ新聞」のコンテンツとして、例えば万葉集に関わるコンテンツが、これからは自由に、いろいろなことができていくということを表しているとも言えるわけです。
次のテーマである「ダーウィン」の学校も、生き物や生態系といったことも含めて、たくさんの講師の方々が、ここで思いっきり知の興味をぶつけてくださいますので、そこを中心にしたコンテンツの仕入れ先として、「ほぼ日の学校」が大きな意味を持っているわけです。
大手の出版社がそれをやろうとすると、どうしても学術文庫などに縛られてしまう。でも我々は、それが本として売れるかどうかは関係なく、ここで成り立つ学校の仕事として、みなさんにお声をかけてやっていけるということになります。
まったく違う知のエンターテインメント……「エンターテインメントと知」みたいなものが、ここから出発して、「映画館に行こうか」「ほぼ日の学校に行こうか」というようなことが起こる可能性を、この先に夢見ております。
実際に、今まで集まってきてくださった方々は、1回講座に出ると、次の講座にも必ず出たくなるので、抽選で外れたりして残念がられています。だんだんと素地が見えてきましたので、よく言われることで「ポスト糸井はどうなのですか?」という話があるんですけれども、コンテンツの仕入れについてはさまざまな受け皿体制が着々とできておりますので、「生活のたのしみ展」は、僕個人がいなくても、どんどん仕入れられるようになっています。ユニークな商品づくり、あるいはテクニック、教えることを持っている人がたくさん集まっています。学校も同じことです。
地球儀の「アースボール」などについては、どこと一緒に組むといったように、BtoBのさまざまな展開が行われています。1年を4分割したところで、どんな進行があったのかについては、アッと驚かせるような大儲けがあったわけではありません。しかし、上場した直後に申し上げたとおりで、「上場したらまず何をしますか?」というところでも「人です」と断言したつもりです。
人々が、どんどん集まってくださっています。まだ言えない人も含めて、ここに若い人、ベテラン、もっと言えばお年寄りも含めて、この場所に可能性を感じて来てくださっている方が、どんどん増えている状態です。単なる種、シードだったものが、もう苗木として育ち始めていますし、「生活のたのしみ展」に至っては、もう実を結び始めております。
そういう意味で、1日、2日、1年みたいなところでの我々の事業展開に過剰な期待を寄せてくださるよりは、相変わらず長い目で見て、育っている様子をご報告させていただこうかなと思って、今日はやってまいりました。
「とくにおもしろいのは何?」みたいなところでいうと、組織論的に力をかけているのは「生活のたのしみ展」です。これを1回経験すると、ものすごく人が育ちます。つまり、自分の頭で考えることと、チームワークが育ちます。
同時に、お付き合いくださっている、コンテンツの源を作ってくださっている作家の方やお店の方、職員さんたちともやり取りをして、ロジスティックの勉強もする。力の配分をすることも含めて、いろいろなことで大変勉強になります。
ですから、「生活のたのしみ展」は、かけた労力ほど儲かっていないということもあるかもしれない……実際はそんなこともないんですけど、大変なことを経験して人が育ついい場所になっているという意味で、「生活のたのしみ展」はすごい発明だったと思っています。
また、オリンピックを前にした「アースボール」は、水面下でいろいろ動いています。もう少し具体的に発表できることがありましたら、また発表します。「アースボール」については、「伝えること」についてのコストを少しかけていく必要がある。その時期が、もうすぐやってくるのではないかと思っています。
「ドコノコ」は、なくてはならないものになるというところが、1つの中期目標でしたが、僕はそこに近づいているのではないかなと思っています。犬と猫のテーマは、世界に広がる可能性がいつでもありますので、そこも少し育てていきたいなと考えています。
手帳ですけれども、足元を固めている時期です。この業界に詳しい方だったらわかると思うんですけど、あらためて工場見学などを行って、クリエイティブなお手伝いをしてくださる方に直にお会いして痛切に感じたのが、やっぱり真似のできない手帳を作っています。
今から大会社が「ほぼ日手帳を潰すぞ」と言ってやってきても、恐らく駄目だと思います。いわゆる、大きなサロン化したところで扱っている商品だからという説明をする方がいらっしゃるんですけれども、そうじゃないと思うんです。
今から、商品としてこれを作るのは、ちょっと無理だと思います。そういうところまで来ているということを確認する意味でも、いい商品を作るために一緒にがんばりましょうという意味でも、全会社を回ったのは、足固めとして非常にいい経験になったと思っています。
中国については、まだ準備段階なんですけれども、アメリカも一緒に伸びていて、とてもおもしろい市場だということは確かであると……そのあたりまでしか言えないのは残念ですが、おもしろいところにあります。
相変わらず「手帳がメインで食っている会社でしょ?」と言われるんですけれども、手帳からスピンアウトした「ひきだしポーチ」という、手帳の表紙の材料を使ったポーチ……これは整理バッグで、よそ(の会社)では、バッグインバッグは案外裏の商品として捉えていたものを、我々は表の商品として捉え直すということで、これは持って歩けるバッグインバッグなんです。
ですから、僕らが想像した以上に人気が出まして、これがこんなふうに飛び立つということは想像していなかったことではあるんですけど、ありがたいことに、末っ子が育ったみたいなところがあります。今度の「生活のたのしみ展」でも大量に発注しておりますので、その人気ぶりを見てくださったらありがたいなと思っています。
鈴木が言ったことをなぞっただけみたいなお話になってしまったんですけれども、足場固めは順調です、ということを断言できます。もう1つ、苗木に育ったものの中には、もう実をつけ始めたものもございます。
いずれ「ほぼ日手帳」と同じ売上を上げるようなもの、苗木が大木に育ってくれることを準備中でございます。あまりホラを吹くわけにはいかないので、こんなところで私からの説明を終わりにします。
あとは、質問がございましたら答えられる限りがんばりますので、よろしくお願いします。
質疑応答:中国での「ほぼ日手帳」の状況について
質問者1:エース経済研究所のサワダと申します。ご説明ありがとうございました。大きく分けて2点あります。
1点目は、中国での手帳の状況をおうかがいしたいのですが、第1四半期で想定していたまでではなかったというお話がありますので、足元のご認識と取り組みなどがありましたら、ご紹介をお願いいたします。
糸井:ちょっと言いにくいこともあるんですけど、どこと組んでどうするかということの、力量の問題がございます。ですから、中国と仕事をする場合にはいろいろなケースがあるんですけれども、必ずしも一番いい方法を取れたかどうかは、もう1回洗い直す必要があるのではないか、というところはあります。
やはり、自分たちも知識がないところからのスタートだったので、それに対しての考え方というのは、中国から来たスタッフも中に入っておりますので、おもしろくなると思っています。
発表して、事を荒立てたくもないんですけど……つまり、そんなところです。
質問者1:ありがとうございます。2点目、「生活のたのしみ展」についてですが、今回、丸の内で開催されるということです。巡回展でもけっこういいポイントがたくさんあったということなので、どのあたりが直に反映されていくのかと、今回ポイントとなるようなところを、もう一度ご紹介いただけたらなと思います。
糸井:一番はっきりしているのは、「魅力のあるお店をどれだけ並べられるか」ということを、どの会社もやっているはずなんですね。ビルができるたびに、食べ物屋さんはどこが入って、商店はどこが入るかということを、本部機能の人たちが悩んでいるのはよくわかっています。僕らがやりたいことは、ある意味、売り切れ御免でもいいから、喜ばれるものを集められるということが、こういう小さい企業がやるときの強みになるわけですね。
それができるということで、その人気になった商品がまた欲しくなったときに、Eコマースができる、あるいは常設展に並べられるということで、融通の利く仕入れと、それからお客さんのほうでの融通ということで参加していただくという、非常にわがままなやり方です。必ずしも「これはあります」ということを言わなくていいやり方でしたので、欲しいに決まっているものを並べられるというのが、僕らなりの大きな特徴だと思います。
それだけのお付き合いを、それぞれの製作者・お店とやってきているということが評価されているんだと思います。これから、またその方々のお友達が参加する可能性も出てきますし、1回休みで、次にまた揃ったら行くよとか、人と人とのお付き合いで「生活のたのしみ展」ができるということで、お客さんもそれを感じていらっしゃるのではないかなと思います。
質問者1:どうもありがとうございました。
質疑応答:下期の赤字見通しについて
質問者2:期初計画が書いていないのですが、営業利益が上期8億円で、通期6億円ということは、下期は2億円の赤字ということになってしまいますけれども、そんなところだろうということなのでしょうか?
糸井:(鈴木さん)そんなもんだっていうことですか?
鈴木:基本的には、今はそういった見通しでやっております。
質問者2:それで確認なのですが、このレトルトカレーや「生活のたのしみ展」、PARCOの出店は、期初計画でどの程度織り込んでいらしたのでしょうか?
鈴木:まず、「生活のたのしみ展」に関しては織り込んでおります。PARCOに関しては、来期以降の話になりますので、今期とは関係ありません。レトルトカレーに関しては、「ある程度」というところが現実なところです。ですので、万が一とは言わないですが、大きく跳ねたときにはちょっとあれですけれども、どうなるかはまだ見えていないです。
質問者2:「生活のたのしみ展」とレトルトカレーは、赤字要因という感じでしょうか? それとも黒字要因ですか?
糸井:黒字要因です。
質問者2:大きく跳ねるかもしれないのはどっちでしょうか? どっちもですか?
糸井:「生活のたのしみ展」は、大きく跳ねることはないと思います。レトルトカレーについて、販路は今までのほぼ日のサイズで考えており、その次のレイヤーでの販売はしていないんですね。ですから、そこに差し掛かったときには跳ねるというか、たぶんレイヤーが変わったときに「跳ねた」と言うことになるんだと思います。
質問者2:細かいことを聞きますが、モスバーガーに「カレーの恩返し」が置いてありましたけれども、あれはこの予告編みたいなものですか?
糸井:違います。あれは「お見知りおきください」ということで、お互いに……モスバーガーさんは集客の1つのギミックとしておもしろいなと思ったんです。僕らはそこで名刺代わりに渡せることですし、楽しいことだったのでやりましたが、おかげさまでお互いによかったみたいです。
質疑応答:今回の「生活のたのしみ展」でのチャレンジングな点について
質問者2:丸の内は、今回は分散で……分散と言っていいのかはわかりませんが、分散でやられるというのは、初の試みかと思います。あえて分散に挑戦とか、そのあたりの塩梅はどうでしょうか?
糸井:分散以外にできなかったですね。丸の内の立地はすばらしいんですよ。無駄なところはなにもないんです。あれをつなげたらそこは無駄になるわけで、どう言えばいいんでしょう……丸の内の恐ろしさを感じています。今回はほぼバックヤードなしでやりますから、みなさんもそのサーカスを見に来てください。
(会場笑)
みんなが緊張感がものすごくあるのは、ロジスティックにずっと知恵を使いながら回さないと停滞するんですよね。「バックヤードがない。なのにこれができる」ということがもしうまくいったら、拍手ですね。
でも、求めているお客さんがいることは確かですし、僕らはやる気がある。三菱地所さんも「やりましょう!」と言っているので、どこでなにが停滞するかということも含めて、今回はハプニングだと思います。
今、ちょうど原稿を書こうと思っているんですけど、いよいよ「生活のたのしみ展」が「市」から「旅団」になった。つまり、隊商の行列みたいなものが砂漠の中で立ち往生していて、そこにお客さんが集まったみたいなかたちになるかもしれないんですよ。
そのときに、それを楽しめるようなことになればいいなと思っています。「だから、たのしみ展ってつけたんだよ」と、いま冗談を言ってきたんですけど、恐ろしいです、本当に。ただ、理論的にはやれないわけじゃないというのは確かです。
あと、人的(な部分が)すごいんですよ。アルバイトの人とかがどんどん優秀になっていくので、僕らも含めて、4回目になると、経験が作ってきたものがすごいというところがあります。たぶん、逆もわかっている人がリーダーシップをとってくれたりするので、そういう珍しい一因になります。心配もしていますけど、あとで喜びたいなという気持ちでいっぱいです。こんなところでいいですかね。
質問者2:今までもアルバイトのエピソードが非常におもしろかったですね。
糸井:おもしろいです。
質問者2:今回も、おもしろいエピソードがほかにありましたら教えてください。
糸井:また(手伝いを)やってくれそうな人にあらかじめ声をかけているんですけど、みんな来るんですよ。しかも、地方の人が来るんですよね。旅費は決まっているところしか出せませんから、中国地方から来る人に、どうしていいか。
もう1つは、相変わらず「お金をもらうと就業規則に触れるので」という方がいらっしゃる。そこは確か、払わないで解決したんじゃないかな。なんか、ありがとうみたいなことで……。
(会場笑)
糸井:たぶん、どっちもリーガルの問題も絡んでくる。「タダで雇って、いいんだっけ?」みたいな問題もあるんですけど、たぶん、それをぜんぶクリアしてるんだよね、みたいなことがあって。
おもしろいんです。家族で参加している人とかでも、違う場所に家族がいるんですよ。「あっちの売場にうちの息子がいますから」とか。
(会場笑)
糸井:サーカスについてきちゃう子どもみたいなものですよね。でも、誰かがこんな(生活のたのしみ展のようなおもしろい)ことをやっていたら、もし自分が仕事をしていても、そこでアルバイトしようかなという気になるんですよね。
そういえば、僕が知っている某会社のディレクターが、自分たちがイベントをするので、その勉強のために前回も(「生活のたのしみ展」の中に)入っていました。そこで勉強したことを生かして、自分たちのイベントをやっていますね。
教育システムがあるわけではないんですよ。こうしましょう、ああしましょうというのを、ただ伝えているだけなんですけど、根本的な倫理観が揃っている気がするんですよ。それがすごいなと思って。
大阪で開催した時に、キャンピングカーで行った人の話はしましたっけ? 犬の世話があるので、夫婦揃って、犬も一緒にキャンピングカーを借りて、東京から大阪までキャンピングカーで出かけていって、お父さんはその励ましのためだけに来ている。そして、お母さんはアルバイトしているというご夫婦もいました。なんでしょうかね。参加料を払ってでもやりたいみたいな気分が(あるんです)。みなさん、どうですかね、やりますか?
(会場笑)
糸井:お楽しみみたいなアルバイト。時給いくらだっけ?
鈴木:だいたいそれくらい(日給8,000円)です。
糸井:それくらいなんですよ。でもそれに代えられない何かがあるんですよ。僕もずっといますしね。曖昧なものは曖昧なままにして、進行させます。
(会場笑)
質疑応答:渋谷PARCOに出店する理由について
質問者3:本日はありがとうございます。エース経済研究所のヤスダと申します。2つほどありますして、1つは、PARCOに出店される件についてです。確か任天堂さんもPARCOに出店されるのですが、PARCOに出店する魅力がどういうところにあって、今回出店されようとしたのか、教えていただけますか?
糸井:言える範囲で言いますと、やっぱり口説かれ方が気持ちよかったというのが一番正しいんじゃないかな。僕は、最初に予感みたいなアプローチがあったのは、小沢健二のコンサートの時で、どこかの責任者の方が「はじめまして」とやってきてくださったんですけど、場所といいお話といい、まずは「へえ、PARCO、張り切ってるんだ」みたいなことを感じました。
そのあとで、徐々にお話が進んでいったんですけれども、両方がやる気なんですよね。建物は山ほどあるし、繁華街もいっぱいあるんですけど、どういう人が、どういう気持ちでやっているかが揃うことが何よりだったと思うので、お互いの息が合ったんだと思います。
質問者3:リアルの店舗でやろうと思うと、御社だけではなく、出す場所を提供されている側も、まずは店舗を出せるような環境を整えてもらえないと、御社としては出店するのはなかなか難しいということですか?
糸井:そんなややこしいことは、言わないですけど(笑)。先ほども(お話ししましたが)ほぼ日の手帳を作る会社を僕が全部見て回ったのも、同じことなんです。同じお客さまにサービスしている仲間なので、どこかやる気がないとか、ぜんぜん違うことを考えていたら、お客さまに対してのインターフェースが変わってしまう。その意味では、お互いに厳しいとは思います。
質疑応答:糸井氏が考える、今のほぼ日に足りない部分について
質問者3:2点目です。決算も非常に順調で、今は足元を固める時期だというお話をされたのはよく理解できました。その中で今、ほぼ日に足りない部分として糸井さんが思っておられることは、どういうところがあるでしょうか? そして、そのためにはどういうことをしたらいいと考えておられるのか、教えていただけますか?
糸井:足りない部分は、小さくはたくさんあるんですけど、どう言えばいいんでしょうか……素人がプロになっていった会社なので「初めからプロです」という人の数がまだ必要です。ですから、今は技術の面で素晴らしい人が入ってくれたんですけど、その人が入ってくれたおかげで、モノの整理の仕方や、どこをどうしていくかということが、非常に気持ちよく前に進んでいます。
だから、具体的に手を動かす人ももちろん必要なんですけど、大局から眺めて何が足りないかを、それぞれのジャンルでわかる人がいてくれるのは本当にありがたいことです。実はほかにも、内定したり、決まったりしている人もたくさんおります。
ですから、相変わらず「人」です。その「人」に「技術」がはまると……もともとうちのスタッフ、乗組員たちは、いいものを持っている人たちなので、本当に生まれ変わったようにまた動き始めます。
鈴木は、今日で(決算説明会は)2度目かな。鈴木が入ってくれたのも、先の計画をするということについて、ものすごく冷静で大胆で、僕らは頼っています。
そういう「人」が「いたか、いないか」の違いはすごくありますので、いい人が入って来られるような体制を作ることが、今までやってきたことだと思います。入ってくれたからには、次の局面への展開がやりやすくなる。今、まさしく転換点だと思っています。
質問者3:では、技能が上がってきた人たちをどう使いこなしていくかという定義の部分が、今は少し不足していて、その手当てを進めておられると考えておけばよろしいですか?
糸井:そういうまとめ方をすれば、そうかもしれないですね。でも、まだ生き物なので、技能として足りないところを補えばうまくいくというものじゃない。その意味では、そのあたりは、あまりまとめられないほうがありがたいです。
質問者3:我々も、ちょっとレポートを書かなければいけないので……。
糸井:そうなんですよね、すみません。言葉にすると、そこで(伝えたいことが)止まっちゃうんですよね。
質問者3:会社の中ではそういうイメージや考え方が共有できていればいいというお話だと思うのですが、我々外部の人間は、それをどう言葉で定義するかという問題があるので……申し訳ございませんでした。
糸井:変な会社ですみません。本当に申し訳ないです。
司会者:ほかにご質問はございませんか? ないようですが、会社さまから追加事項がございましたら、いかがでしょうか?
糸井:なんか、(今日の内容は)つまらなかったですか?
(会場笑)
糸井:もっと「生きのいい話」をしたいんですけど、まずは足固めができているというところを感じていただきたいなと思っています。みんな、がんばっています。ありがとうございます。
鈴木:ありがとうございました。
糸井:カレー、おいしいですから。それから、普通のレトルトの温め方よりも、フライパンにちょっとだけ水を加えて、フライパンでいっぺんに、強い熱で温めたほうがおいしいです。そこで、肉が足りなければ入れてください。けっこうたっぷり入っていると思いますけど、おいしいですよ、これは。ありがとうございました。