年間の支出額で最も多かったのは「5万円~10万円未満」の21.8%。平均金額は12万8,269円という結果になっています。

とはいえ、平均額で一般化することはできず、2万円未満の支出は15.4%、20万円以上の支出が15.3%と、支出額のバラつきが見られます。中には年間50万円以上のお金を支出している人も。

子どもの世帯と経済的に一線を引いているシニア世代と、たっぷりと家計のサポートをしているシニア世代とでお金の使い方には大きな差が生じているようです。

また、仮に子どもや孫のための支出が60歳を過ぎても続く場合、シニア世代の家計の大きな負担となる場合があります。

内閣府が60歳以上の男女3,000人に対して行った『平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果』によれば、19.8%が子や孫のための出費が「大きな割合を占める支出」と考えており、11.2%が「負担を感じている」と回答しています。

現役を引退したシニア世代の経済的な余力が残っているうちに始めた子・孫のサポートが思いのほか長期化した場合、老後の資金に影響が出てくることもあると推測できます。

お金、育児、家事…子育て家庭を全面的にサポートするシニア世代も

ここまで、孫にまつわる支出についてお届けしましたが、現在のシニア世代の中には、経済的なサポートのみならず、共働き家庭を支える「家事・育児サポーター」の役割を期待されている人もいます。

長らく専業主婦として夫と子どもを支えてきたシニア女性が、今度は子育て世帯の「主婦」として孫をケアし、園の送り迎えをして、平日の役所手続きを担い、食事を作って、折に触れてお金を出して……という家庭は少なくなく、増加する共働き世帯の「縁の下の力持ち」として機能している場合もあります。

シニア世代が喜んで手を差し伸べてくれる場合を除いて、親のエネルギーと財力がいつまでも変わらない「打ち出の小づち」だと子のほうが勘違いしてしまったとき、親子の仲がこじれる原因となることもあるでしょう。

一方で、行き過ぎた金銭サポートを通じて子どもの家庭への発言権を強め、子・孫の精神的な自立の障壁となっている場合もあるかもしれません。

子どもを育てるために必要な愛情、エネルギー、お金。仮に子育て中の家庭にどれかが欠けているとき、シニア世代のサポートは大きなセーフティネットとなります。ところが、それらを全く得られない家庭もあり、外からは見えにくい「育児リソース格差」が生じています。

シニア世代にとっては「どこまで孫にお金と手を出すか」、子育て世代にとっては「どこまで親世代に頼るか」という点のすり合わせは、なあなあにせず、お互いができるだけハッピーでいられるような線引きが必要となりそうです。

【参考】
シニアの生活意識調査2018」(ソニー生命保険株式会社)
平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(概要版)」(内閣府)

北川 和子