5. 公的年金の増額は物価上昇には追いつかない
公的年金は、物価や賃金の変動に合わせて毎年度その支給額が見直されます。直近では2023年度(2.2%増)、2024年度(2.7%増)に続き、2025年度(令和7年度)も1.9%の増額となり、3年連続のプラス改定となりました。
しかし、この「増額」を手放しで喜ぶことはできません。注意すべきは、年金の増額率が物価上昇率を下回っているという点です。
例えば、2025年度の改定を指標で見ると、その差は一目瞭然です。
- 物価変動率: +2.7%
- 年金額の改定率: +1.9%
このように、物価の伸びに対して年金の伸びが追いつかない現象が起きています。これは、年金制度の持続性を高めるための調整機能(マクロ経済スライド)が働くためです。
具体的に考えれば、年金額が月1000円増えたとしても、食料品や光熱費などの生活コストが月3000円値上がりしていれば、家計全体では「実質2000円のマイナス」になります。数字の上では増えていても、「買い物のしやすさ(購買力)」はむしろ低下しているのが実態です。
老後の生活設計を立てる際には、額面の増減に一喜一憂せず、こうしたインフレによる「実質的な目減り」を想定した資産運用や生活防衛策を検討しておくことが重要です。
参考資料
和田 直子
執筆者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
元銀行員/一種外務員資格(証券外務員一種)/LIMOマネー編集部金融ライター
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行に入社。三井住友信託銀行に転職後、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。
現役世代からシニア層、富裕層と幅広い個人顧客に対し、資産運用コンサルティングを行う。
<主な専門領域>
投資信託、ファンドラップ、外貨預金、生命保険、医療保険、住宅ローン、事業性ローン、贈与、相続、遺言信託、不動産など、多岐にわたる金融サービスと承継対策をワンストップで提案。特に、長期的な資産形成や富裕層向けのウェルスマネジメント、シニア世代への承継・相続の分野で豊富な知識と実績を持ち、表彰歴多数。
現在は、株式会社モニクルリサーチが運営する「くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のマネー編集部にて企画・執筆・編集・監修を担当。
厚生年金保険と国民年金保険(老齢年金・障害年金・遺族年金)、年金制度の仕組み、社会保障、貯蓄、資産運用を専門とする。
NISA、iDeCo、住宅ローン、カードローンなどの国民生活に直結する金融情報を始め、FX、株式投資、金(ゴールド)などの投資経験をいかし仕組みやリスクなどを分かりやすく解説。Yahoo!ニュース経済カテゴリでアクセスランキング1位を多数達成【2025年11月11日更新】
監修者
マネー編集部年金班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、地方自治体の公務員や生命保険会社等の金融機関にて勤務経験が豊富な編集者が中心となり、厚生労働省や官公庁の公開情報等をもとに公的年金(厚生年金保険と国民年金)、年金制度の仕組み、社会保障制度などをテーマに、丁寧で読者にとってわかりやすい記事の情報発信を行っています。
マネー編集部年金班に所属する編集者は地方自治体職員出身の太田彩子、日本生命保険相互会社出身の村岸理美、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵、野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか等のファイナンシャルアドバイザー経験者等で構成されており、表彰歴多数の編集者も複数在籍しており、豊富な金融知識をもとにした記事に定評があります。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。生保関連業務経験者は過去に保険募集人資格を保有。(最新更新日:2025年6月8日)