新しい年が幕を開け、寒さが一段と厳しさを増す1月中旬となりました。 お正月休みを終えて日常生活が戻るこの時期は、家計の見直しや新年度に向けた準備を始めるのに最適なタイミングといえます。
特に2026年度は、私たちの生活に密接に関わる年金制度において大きな転換点を迎えます。 2025年に成立した年金制度改革関連法により、働き方や受給の仕組みが段階的にアップデートされているからです。 なかでも注目すべきは、働くシニア世代の年金カットを緩和する在職老齢年金の見直しです。
物価高騰が続く昨今において、老後の収入源となる年金の動向を把握しておくことは、安定した生活設計を立てる上で欠かせません。
本記事では、2026年4月から適用される新基準を中心に、年金制度の改正ポイントや受給額の実態について分かりやすく解説します。 将来の自分や家族のために、最新の公的支援の枠組みを正しく理解しておきましょう。
※年金のデータは執筆時点のものです。
1. 年金制度改革関連法が成立!何が見直しになった?
2025年6月13日、国会において年金制度改革関連法が可決・成立しました。
本改正は、働き方や暮らし方が多様化する中で、より柔軟に対応できる年金制度の構築を目的としています。
内容としては、パートタイム労働者などの社会保険加入範囲の拡大をはじめ、遺族年金制度の再設計(遺族厚生年金における男女差の是正や、子どもが遺族基礎年金を受け取る際の要件緩和)など、重要な変更点が含まれています。
本章では、その中でも特に就労を続ける高齢者への影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」に焦点を当てて解説します。
1.1 「在職老齢年金制度」の見直しについて概要を整理
在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら就労している人を対象に、年金額(※)と給与や賞与などの報酬を合算した金額が一定の基準を上回った場合、年金の一部または全額が支給されなくなる仕組みを指します。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。
支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)
支給停止の基準となる調整額は、これまでも段階的な見直しが行われてきました。
- 2022年度:47万円
- 2023年度:48万円
- 2024年度:50万円
- 2025年度:51万円
- 2026年度:62万円
今回の制度改正では、2026年4月からの適用として、基準額が51万円(2025年度水準)から62万円へと大きく引き上げられることが決定しています。
厚生労働省による試算では、この見直しによって、新たにおよそ20万人が年金を満額受け取れるようになる見込みです。
基準額の引き上げにより、年金の減額を避けるために就労を控えていたシニア層も、収入を過度に気にすることなく、自身に合った働き方を選択しやすくなると考えられます。
2. シニア1世帯あたりの「平均的な所得額」はどのくらい?
まずは、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」をもとに、高齢者世帯(※)における「1世帯あたりの平均所得額」を見ていきます。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
高齢者世帯の平均所得金額(カッコ内は総所得に占める割合)
総所得:314万8000円 (100.0%)
【内訳】
- 稼働所得:79万7000円(25.3%)
- うち雇用者所得(※):66万5000円(21.1%)
- 公的年金・恩給:200万円(63.5%)
- 財産所得:14万4000円 (4.6%)
- 公的年金・恩給以外の社会保障給付金:1万8000円 (0.6%)
- 仕送り・企業年金・個人年金等・その他の所得18万9000円(6.0%)
高齢者世帯の平均総所得は年間314万8000円で、月ベースではおよそ26万円に相当します。
内訳を確認すると、全体の約3分の2にあたる月額約16万6000円が「公的年金」で占められており、加えて約2割となる月額約5万5000円が「雇用者所得」となっています。
この割合から、高齢者世帯は公的年金を中心に生活を支えながら、就労による収入を補完的に活用している実態がうかがえます。
※雇用者所得:世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額で、税金や社会保険料を含む
3. 【年金の基本】日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造!
日本の公的年金制度は、全国民が加入する「国民年金」を土台とし、その上に会社員や公務員などが加入する「厚生年金」が重なる、いわゆる2階建ての構造になっています。
3.1 【1階部分】国民年金(基礎年金)の対象・保険料・受給額
- 対象:20歳以上60歳未満の全国民
- 保険料:2025年度は月額1万7510円(一律)
- 受給額:40年間保険料を納めると、満額で月額6万9308円(2025年度基準)
3.2 【2階部分】厚生年金の対象・保険料・受給額
- 対象:会社員、公務員など
- 保険料・年金額:現役時代の収入や加入期間によって決まる(個人差あり)
- 将来受給する年金:国民年金に加え、厚生年金も上乗せして受け取る
加えて、老後資金をより手厚くするため、公的年金とは別に、次のような私的年金を組み合わせて利用することも可能です。
- 企業年金
- iDeCo(個人型確定拠出年金) など
4. 【厚生年金+国民年金】年金を「月額15万円以上受給する人」は何%?
厚生年金の受給者に限定してみると、月額15万円以上を受給している人は全体の約47.6%を占めており、ほぼ半数にのぼります。
もっとも、この数値は「支給額そのもの」を示したもので、受け取った金額すべてが自由に使えるわけではありません。
実際には、年金から税金や社会保険料(介護保険料や健康保険料など)が控除されるため、手元に残る金額は額面よりも少なくなる点に留意しておく必要があります。
5. 年間で約6万円が年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金制度」とは?
公的年金の受給額は人それぞれ異なりますが、公的年金などによる収入が一定の基準を下回る場合には、「年金生活者支援給付金」が支給される可能性があります。
たとえば、「老齢年金生活者支援給付金」については、主に次のような支給要件が設けられています。
【支給要件】
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は90万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
2025年度における老齢年金生活者支援給付金の基準額は5450円とされていますが、実際に支給される金額は、これまでの保険料の納付状況などを踏まえて、個別に決定されます。
6. 自分の将来の年金見込み額は「ねんきんネット」で確認できる
「ねんきんネット」は、年金の記録確認や将来の受給見込額の試算、各種お知らせの閲覧などができるオンラインサービスです。
スマートフォンやパソコンから、時間を問わず利用できる点が特徴といえます。
利用にあたっては、「マイナポータルとの連携」もしくは「ユーザIDの取得」が必要です。
ユーザIDを取得する場合は、基礎年金番号とメールアドレスを準備し、年金手帳や年金証書などで基礎年金番号を確認しながら手続きを行います。
また、「ねんきん定期便」に記載されているアクセスキーを利用して、ユーザIDを取得する方法も用意されています。
7. 家計の状況に合わせて「老後に向けた準備」を進めましょう
今回は、日本の年金制度の仕組みや国会で成立した年金制度改革関連法について詳しく解説していきました。
年金は人によって受給額が異なるため、ご自身の年金見込み額を、ねんきん定期便などで確認しておくことが大切です。
最近では物価高が続いており、日々の生活費の負担が増して、「お金を貯めるのが難しい」と感じられているご家庭も多いでしょう。
将来に向けた資金を計画的に貯めていくために、少しでも早いタイミングから準備しておききましょう。
今の家計がどうなっているのかよく把握し、将来に向けて貯蓄や資産運用など、できることからはじてみてはいかがでしょうか。




