4. 【年金額が増えても実質目減り】老齢年金から《天引きされるお金》とは？
公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。2025年1月、厚生労働省は2025年度（令和7年度）の年金額を、前年度より1.9%引き上げることを公表しました。
3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド（※）」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。物価上昇に年金額が追い付けていないのです。
またシニアの多くは、下記の税や社会保険料を老齢年金からの天引きで納めています。
- 介護保険料
- 公的医療保険（国民健康保険・後期高齢者医療制度）の保険料
- 個人住民税および森林環境税
- 所得税および復興特別所得税
年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。
※マクロ経済スライドとは：「公的年金被保険者（年金保険料を払う現役世代の数）の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
5. 老後生活に向けた準備方法を考えておきましょう
老後の生活は公的年金が中心となりますが、受給額は現役時代の働き方や加入期間によって大きく異なります。
本記事でご紹介した平均額は全体像を把握するための参考値であり、ご自身の個別の状況とは異なる場合がほとんどです。
だからこそ、「平均額がこれだから自分も大丈夫だろう」と考えるのではなく、「自分自身が将来いくら受け取れるのか」知ることが、計画の出発点となります。
シニア世帯の家計データが示す通り、物価上昇や人生100年時代という背景において、公的年金だけで生活にゆとりをもつのは容易ではありません。
不足が予想される部分をどう補うか考えることが不可欠です。
その第一歩として、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を活用し、ご自身の年金見込み額を確認しておくことが大切です。
年末年始は、ご家族と将来について話し合い、ゆったりと時間を取れる貴重な機会です。
このタイミングを利用して、ご自身の年金額をチェックしたり、来年以降の貯蓄や働き方を考える時間を設けてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告（貯蓄・負債編）－2024年（令和6年）平均結果の概要－（二人以上の世帯）」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
安達 さやか
