年末を迎える12月は、暖房費や医療費などの支出がかさみやすく、75歳以上の後期高齢シニア世帯にとって家計の見直しを考える時期でもあります。
年金収入を中心に生活する夫婦世帯では、「毎月いくらあれば生活できるのか」「貯蓄はどの程度あれば安心なのか」といった不安を感じる人も少なくありません。
そこで本記事では、統計データをもとに、75歳以上の後期高齢シニア夫婦世帯における平均的な生活費・年金受給額・貯蓄額を整理します。
あわせて、医療費の自己負担が変わる「後期高齢者医療制度」の1割・2割・3割負担の違いについても確認し、老後の家計を考えるための基礎情報をまとめます。
1. 【75歳以上の後期高齢シニア世帯】「ひと月の生活費」は平均いくらかかる?
総務省「家計調査 家計収支編(2024年)」をもとに、後期高齢シニア夫婦(75歳以上の無職二人以上世帯)の平均的な家計の状況を確認してみましょう。
なお、平均世帯主年齢は80.8歳、持ち家率は95.4%です。
実収入: 25万2506円
- うち社会保障給付(主に公的年金給付): 20万7623円
実支出:27万3398円
- 消費支出: 24万2840円
- 食料: 7万6039円
- 住居: 1万7261円
- 光熱・水道: 2万2973円
- 家具・家事用品: 1万1301円
- 被服及び履物: 5050円
- 保健医療: 1万7280円
- 交通・通信: 2万4520円
- 教育: 390円
- 教養娯楽: 2万1536円
- その他の消費支出: 4万6490円
- 非消費支出: 3万0558円
- うち直接税: 1万1058円
- うち勤労所得税: 471円
- うち個人住民税: 2877円
- うち他の税: 7709円
- うち社会保険料: 1万9481円
- うち公的年金保険料: 1963円
- うち健康保険料: 1万0244円
- うち介護保険料: 718円
毎月の家計収支
- 実収入:25万2506円
- 実支出:27万3398円
- 家計収支:▲2万892円(赤字)
- 黒字率:▲9.4%
- 平均消費性向(※1)109.4%
- エンゲル係数(※2):31.3%
調査結果を見ると、後期高齢シニア夫婦の家計は毎月約2万1000円の赤字となっており、年金などの収入だけでは生活費をまかなえない状況が続いています。
そのため、日々の生活は貯蓄の取り崩しで補っている形になります。
この赤字をどのように埋めていくかが、老後の安心感を大きく左右するポイントと言えるでしょう。
平均消費性向……可処分所得(いわゆる「手取り収入」)に対する消費支出の割合
エンゲル係数……消費支出に占める食料費の割合
支出面の特徴として、まず住居費がかなり低いことが挙げられます。
この世代の持ち家率は95.4%と非常に高く、住宅ローンを返済している世帯はわずか1.6%。
家賃やローンの負担がほとんどないため、現役世代と比べて住居費が大幅に抑えられている点が家計の大きな特徴です。
また、この家計調査の支出には介護費用が含まれていません。
実際には、介護サービスの利用料などは状況によって大きな出費になる可能性があります。
そのため、介護が必要になれば、先ほどの赤字額はさらに拡大し、貯蓄の取り崩しペースが速まることに注意が必要です。
1.1 【補足】ゆとりある老後生活費はいくら?
生命保険文化センターの「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」によれば、夫婦2人で暮らす場合の老後の最低日常生活費は平均23万9000円、ゆとりある生活を送るために必要な金額は平均39万1000円となっています。
これに対し、実収入(約25万円)は最低日常生活費をわずかに上回る程度で、ゆとりある生活費とは毎月約13万円の開きがあります。
この差をどのように補うのか、あるいは支出をどこまで抑えられるかが、老後の生活の質を大きく左右することになります。
そこで重要になるのが、リタイア後の生活を支える基盤となる「年金」と「貯蓄」です。
