3. 個人向け国債と定期預金、どちらを選ぶ?判断のポイントを比較
安全性の高い金融商品として、個人向け国債と定期預金のどちらを選ぶべきか悩む方は少なくありません。
ここでは、それぞれの商品の特徴を踏まえ、ご自身の資金計画や目的に合わせた選択のヒントを解説します。
3.1 個人向け国債が有利になるケース
個人向け国債は、国が元本と利息の支払いを保証するため、安全性が極めて高い点が最大の魅力です。
資産の安全性を最優先したい場合
判断の軸は「元本割れリスクをいかに避けるか」です。
個人向け国債は元本割れのリスクが非常に低く、退職金を受け取った方など、資産を確実に守りたい層に適しています。
また、投資経験が少ない方が、資産形成の第一歩として始めるのにも向いているでしょう。
今後の金利上昇に期待する場合
判断の軸は「金利の柔軟性」です。
変動10年型の個人向け国債は、半年ごとに適用利率が見直されるため、長期的に日本の金利が上昇すると考える場合に有利です。
多くの定期預金は満期まで金利が固定されますが、変動金利型の国債なら金利上昇の恩恵を受けて利息が増える可能性があります。
ただし、一部の金融機関では変動金利タイプの定期預金も扱っているため、比較検討してみるのもよいでしょう。
ポートフォリオの安定化を図りたい場合
判断の軸は「資産全体のバランス」です。
株式や投資信託といったリスクのある資産を保有している場合、ポートフォリオ全体の安定性を高めるために、安全性の高い個人向け国債を組み入れるのは賢明な方法です。
3.2 定期預金が有利になるケース
個人向け国債は安全性が高い一方で、いくつかの注意点もあります。状況によっては定期預金の方が適している場合もあります。
短期的な資金ニーズがある場合
判断の軸は「流動性」と「中途解約時の条件」です。
個人向け国債は、購入後1年間は原則として中途換金(解約)ができません。
1年経過後に解約する場合も、直近2回分の利子相当額が差し引かれるペナルティが課されます。
一方、定期預金は中途解約しても元本は保証され、ペナルティはありますが、国債ほど厳しい条件ではないことが一般的です。
近い将来に資金を使う予定があるなら、定期預金の方が柔軟に対応できます。
市場金利が急上昇している局面
判断の軸は「金利反映のスピード」です。
変動10年型の国債は、適用利率の見直しが半年に一度です。そのため、市場金利が急激に上昇しても、その変化がすぐに利率に反映されるわけではありません。
この時間差により、より高い金利の定期預金が次々と登場するような局面では、収益機会を逃してしまう可能性があります。
4. 個人向け国債や定期預金以外の選択肢を検討すべきケース
個人向け国債や定期預金は、安全性と金利収入が魅力ですが、目的によっては他の金融商品が適していることもあります。
4.1 インフレリスクに備えたい場合
判断の軸は「実質的な資産価値の維持」です。
物価が上昇するインフレの状況下では、国債の利息収入だけでは物価上昇率に追いつけず、資産の価値が実質的に目減りする恐れがあります。
リスクは高まりますが、株式や投資信託など、より高いリターンが期待できる金融商品の方が、インフレに対応しやすい場合があります。
4.2 より高いリターンを目指したい場合
判断の軸は「機会損失をどこまで許容できるか」です。
個人向け国債は安全性が高い分、リターンは比較的低めに設定されています。
資金を国債で運用することで、より高い利回りが期待できる他の金融商品(高配当株など)への投資機会を逃す「機会損失」が発生する可能性も考慮する必要があります。