2025年も残すところあとわずかとなりましたが、年末に向けて金融市場は依然として不透明な状況が続いています。 長引く物価高騰と低金利政策からの脱却に向けた動きは、シニア世代の生活設計に大きな影響を与えています。

特に、年金生活を送る70歳代の二人以上世帯にとって、老後資金の残高と毎月の収支は、生活の安心感を左右する重要な要素です。

本記事では、金融経済教育推進機構の最新調査をもとに、70歳代二人以上世帯の貯蓄の「リアル」を探りました。 平均値は高いものの、実際には「貯蓄ゼロ」世帯が2割を占める一方で、3000万円以上を持つ富裕層も同程度存在し、貯蓄格差が顕著であることが明らかになりました。

また、厚生年金や国民年金の平均受給額、さらに総務省の家計調査から判明したシニア夫婦の平均的な家計が毎月約3万4000円の赤字であるという厳しい実態にも焦点を当てています。 この赤字は、年金収入だけでは生活費を賄えず、貯蓄を取り崩して補填していることを意味しています。

年の瀬を迎え、家計を見直す絶好の機会となる今、あなたの世帯の貯蓄状況と年金収入は、この「平均」や「実態」と比較してどうでしょうか。 本記事を通して、自身の老後資金が抱える課題を明確にし、安心できるセカンドライフのための具体的な行動を考えるきっかけにしていきましょう。

1. 70歳代・二人以上世帯、シニアの貯蓄の平均はどのくらいなのか?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」をもとに、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認していきましょう。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

70歳代・二人以上の世帯における平均貯蓄額は1923万円となっていますが、これは一部の高額貯蓄世帯が全体の平均を押し上げているため、実態より高めに見える可能性があります。

実態に近い中央値で見ると、貯蓄額は800万円にまで下がっており、多くの世帯がこの水準付近に分布していることがうかがえます。

以下に、各世帯の貯蓄額分布の内訳を示します。

  • 金融資産非保有:20.8%
  • 100万円未満:5.4%
  • 100~200万円未満:4.9%
  • 200~300万円未満:3.4%
  • 300~400万円未満:3.7%
  • 400~500万円未満:2.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:6.4%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:8.9%
  • 3000万円以上:19.0%
  • 無回答:3.5%

最も多いのは、金融資産をまったく持たない「貯蓄ゼロ」の世帯で、全体の20.8%を占めています。

一方、3000万円以上の貯蓄がある世帯も約19.0%とほぼ同程度あり、その差が大きいことがわかります。

このように、70歳代の世帯では貯蓄額に大きなばらつきが見られます。

貯蓄が少ない世帯では、年金だけで生活するのが難しいケースも想定されます。