6. 【ポイント解説】年金制度改正で「標準報酬月額の上限、引き上げ」決まる

2025年6月13日、国会で年金制度改正法が成立しました。今回の改正の見直しポイントには、働き盛りの現役世代の暮らしと関わり深い項目がいくつかあります。

今回はこのうち「保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ」について紹介します。

6.1 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

厚生年金保険料や健康保険の保険料、年金額を計算する際には、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った「標準報酬月額」という基準額が用いられています。

2025年7月現在、標準報酬月額の上限は月65万円。月の収入が65万円を超えた場合でも、保険料や将来の年金額の計算に使われるのは上限の65万円までとなっています。いくら稼いでも保険料や年金額が「頭打ち」となるのです。

厚生労働省によると、現在会社員男性の約10%がこの上限に該当。賃金が上限を超えると保険料負担は相対的に軽くなりますが、老後に受け取る年金額も低くなります。

今回の改正では、この標準報酬月額の上限を段階的に「月65万円→75万円」へ引き上げることが盛り込まれました。

標準報酬月額の上限《引き上げイメージ》

  • 2027年9月~:月68万円
  • 2028年9月~:月71万円
  • 2029年9月~:月75万円

これにより、高収入層の保険料負担は増えますが、これまでよりも現役時代の賃金に見合った年金を受給することが可能となります。

7. まとめにかえて

公的年金は、老齢厚生年金と老齢基礎年金が2カ月分まとめて支給されるため、厚生年金のモデル年金を受け取る標準的な夫婦世帯では一度に約46万5000円が振り込まれます。

しかし、この金額は夫婦2人分であり、税金や社会保険料が天引きされるため、この数字だけで「豊かな老後」は約束されません。

現役世代が気にしておきたいことの一つが、2025年の年金制度改正により厚生年金の標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられる点です。これは、高収入層の将来の年金受給額と現在の保険料負担の両方に影響する見直しポイントです。

年末のこの機会に、ご自身の「ねんきん定期便」などで見込み額を確認し、今回の標準世帯の例と比較検討してみましょう。

公的年金制度の最新動向を把握し、新NISAやiDeCoなども活用した長期的な家計管理サイクルを構築することが、安心できる未来へと繋がります。

参考資料

マネー編集部年金班