12月に入り、年末を前に家計のやりくりや2026年の収支を見直す人もいるのではないでしょうか。
そんな中で、高市首相が11月24日の所信表明演説で述べた「税と社会保障の一体改革」で、とくに注目を集めたのが「給付付き税額控除」です。
給付付き税額控除は、もともと野党からも導入が求められていた「所得税の減税」と「給付」が一体化した仕組みですが、高市総理が議論を進めていくことを表明したことで、今後与野党間で本格的に協議される見通しです。
そこで今回の記事では「給付付き税額控除」について、あらためて解説します。
1. 給付付き税額控除とは?制度の仕組みを理解
高市首相が協議の表明をしたことで注目が集まっている「給付付き税額控除」。もともとは立憲民主党をはじめとして、野党も導入を訴えてきた税制です。
日本の税制は、税負担を調整するため、所得控除と税額控除の2つの控除があります。
1.1 所得控除とは?
所得控除とは、所得から一定の金額を差し引く制度で、課税対象になる所得金額を減らす制度です。
税金の計算では、所得からこれらの控除を差し引いて課税所得を算出し、その額に税率をかけて最終的な税額を決める仕組みになっています。高所得者ほど控除による軽減効果が大きくなるのが特徴です。
主な所得控除
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、寄付金控除、医療費控除など
1.2 税額控除とは?
税額控除は、税金そのものから一定額を直接差し引いて税金を減らす制度です。税金が低い方や非課税の方にとっては恩恵が小さいのがデメリットです。
主な税額控除
住宅ローン控除、税額控除など
1.3 給付付き税額控除とは?
給付付き税額控除は、税額控除で税額を減らすだけでなく、控除額が税額を上回る場合には、その差額を現金として支給する制度です。
今回、政府が検討する給付付き税額控除は、「減税」と社会保障的な意味合いのある「給付」がセットになる案であり、低中所得者が恩恵を受けやすいのが特徴です。
2. 現金給付ではなく、なぜ給付付き税額控除?その理由とは
今までの経済対策では、一定金額の給付金支給等も行われてきました。給付金に代わる「給付付き税額控除」の導入が検討されている背景には何があるのでしょうか。
2.1 消費税の逆進性を緩和できる
給付付き税額控除を導入すると、消費税の負担が低所得層ほど大きくなる「逆進性」を緩和できるようになります。
消費税はある意味、公平な税制ではありますが、納税者には現役世代もいればリタイア世代もおり、所得の高い方もいれば低い方もいます。
さまざまな背景があるにもかかわらず一律の税率を課税するとなると、たとえば所得の低い方の場合、食品や生活必需品などの割合が収入比で高いため、消費税の負担も比例して重くなります。これを消費税の逆進性と言います。
給付付き税額控除が導入されれば、所得を正確に把握することにより、低所得者に対して一定額を後から給付するなど、ピンポイントに給付を行うことができます。
消費税を支払ったとしても給付が受け取れるので、トータルで見ると税の負担は軽減し、消費税の逆進性を緩和することになります。
2.2 所得の再分配機能を強化できる
給付金の支給は迅速に全体への支援がいきわたるという即効性がある一方で、低所得者よりもサポートの必要性が低い場合でも同額の給付が行われるという効率の悪さも指摘されていました。
また、財源の問題から一時的な支援にとどまり、長期的な支援ができにくいこともデメリットに挙げられます。
給付付き税額控除では、非課税世帯だけでなく課税世帯まで、所得水準などで対象者を絞って給付を増やすことができるようになり、中低所得層の所得を増やすための対策が行いやすくなります。
そのため、限られた財源のなかから効果的な再分配ができ、税体系の見直しで長期的な支援が可能になることも期待されています。
3. 給付付き税額控除の具体例・3つのパターンで見る
それでは給付付き税額控除がどのような形で行われるのか、納税額別に3つのパターンを見ていきましょう。ここでは、控除額を仮に10万円とします。
3.1 ➀納税額が30万円のケース
10万円全額が減税され、納税額は30万円から20万円に減り、税負担が軽くなります。
3.2 ②納税額が8万円のケース
10万円が税額控除されますが、納税額が8万円なので引ききれません。この場合、引ききれなかった2万円は給付されることになります。
3.3 ③非課税のケース
納税額がゼロなので、税額控除の対象となる課税金額がありません。この場合、10万円が給付されることになります。
4. まとめにかえて:制度理解が得するカギ
今回の記事では、「給付付き税額控除」について解説しました。
高市首相は就任後の記者会見で、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と発言したことが注目されました。
この発言との関連は無いと思いますが、首相が労働時間規制の緩和検討を指示したこともニュースで大きく報じられ、時間外労働の上限規制や裁量労働制の拡大などが見直される可能性も出ています。
関連があると目されているのが、給付付き税額控除のひとつの型である「勤労税額控除」です。勤労インセンティブを促す控除で、所得が増加するにつれて控除額が増加するなどの仕組みがあります。
ただし、これらの制度にも問題点はあり、給付つき税額控除の導入までにはさまざまなハードルを越える必要があります。
とくに個人の所得や資産の把握は、給付を決定する上でも欠かせないので、国民の理解を得る必要もあるでしょう。
各党でも制度設計に関する方針は異なっているため、今後の議論の行方に注目です。
