2018年第4四半期の半導体ランキングは、インテルが2兆円強の売上高となり、1位に躍り出た。約2年間にわたり世界チャンピオンであったサムスン電子は、実に前年同期比25%減という惨憺たる有様で、売上高1兆7000億円強となり2位に後退した。パソコンやサーバーなどを中心にロジック系が回復を見せる中で、メモリーはまさにバブル崩壊の様相を呈しているのだ。

SKハイニックスの巨大投資に韓国政府は最大の支援

 それにしても韓国半導体はひたすらメモリーという展開が続いている。韓国のDRAM占有率はここ数年世界シェア70%を超えてきており、一方NANDフラッシュメモリーについても世界シェア50%を大きく超えてきている。そんななかで中国経済の大きな後退によるスマホの低迷や、期待をかける世界のデータセンターの着工遅れが重なり、メモリーを主力とする韓国半導体は一見して追い詰められたように見える。

 ところがである。今や世界3位となっている韓国SKハイニックスは、京畿道龍仁市の敷地約500万㎡に、世界最大とも言われる半導体クラスター団地を建設することを決めたのだ。日本を代表する半導体工場としては東芝の四日市工場があるが、この敷地が80万㎡であることを考えれば、この6倍スケールの500万㎡は、まさにサプライズという以外にはないだろう。

 もちろん韓国という国家はどうあっても半導体で生き抜くしかないことを自覚しており、韓国政府はこのSKハイニックスの半導体団地建設に最大の支援をすることを決めている。今のところは4つの大型半導体新工場を建設し、これらが完成すれば月産80万枚のウエハーを生産できることになる。投資額はなんと12兆円というスケールであり、2018年の世界の半導体設備投資が9兆円であったことを思えば、信じがたい巨大投資ということになる。この半導体団地にはSKの協力企業50社以上が入居し、雇用効果は約10万人とも言われているのだ。2022年に着工し、2024年には一部量産を開始するという。

 韓国経済はもはやどん底であり、メモリーバブル崩壊にあえいでいるというのに、またしても「不況下における大型投資こそが勝利の方程式」と考えるのが、半導体業界の韓流と言えるのかもしれない。

日韓の明暗を分けた17年前の投資判断

 筆者が思い起こすのは、今から17年前の韓国半導体の決断力である。日本国内の半導体メーカーの2002年度設備投資は、前年度に続いて著しく低調であった。国内36社トータルで5076億円となり、その2年前の2000年度水準が1兆6961億円であったことを考えれば、信じがたい低水準であったのだ。

 これに対してサムスンは実に4000億円の設備投資を断行し、ハイニックスも1300億円を投入するに至った。亜南半導体など他のメーカーも含めれば、韓国半導体業界は全体で2001年の5000億円から大幅に増額した6000億円の投入を断行していたのだ。そしてニッポン半導体の設備投資は、韓国半導体に比べて1000億円も少なかった。結果としてその後、ニッポン半導体の大幅な後退と韓国半導体の一大躍進を招くことになる。

東芝との連合でサムスンを追撃

 さてSKハイニックスは、2017〜19年にかけて1.5兆円規模の新規投資を実行するというプランをもともと進めていた。DRAMに偏った半導体事業からの脱却を試みているのだ。これを推進するうえで、重要な拠点となっているのが18年から稼働を開始した清州の3D-NANDフラッシュメモリー専用工場「M15」である。

 またSKは2017年9月に東芝の連合コンソーシアムに参画している。このころ東芝メモリのNANDフラッシュ市場シェアは16.1%で業界2位であった。そしてSKハイニックスは同10.6%で5位にランクされていた。両社のシェアを合わせれば業界トップのサムスン電子を急追することができると考えたのだ。いわば反サムスン連合軍の結成である。

 脱DRAMを掲げるSKハイニックスは、中国無錫に200mmファンドリー工場を中国企業と合弁で立ち上げている。中国企業からの受注獲得を見込んだものであり、また子会社のSKハイニックスシステムICが保有している200mmウエハー対応製品が中国内需市場に食い込めると考えている。

 ソニーがぶっちぎりの世界首位となり疾走しているCMOSイメージセンサーの分野においても、SKハイニックスは本格参入を考えている。清州工場のM8ラインにおいては200mmウエハー月産8万枚があり、90nmから180nmプロセスを利用し、CMOSイメージセンサー拡大を進めていく。また利川本社の300mm工場にあるM10ラインを利用し1300万画素タイプの量産も決めている。

 韓国半導体と言えばサムスンにばかり視線が向いてしまうが、日本の東芝とも連合軍を組むSKハイニックスの今後の動きに一層の注意を払う必要があるだろう。

産業タイムズ社 社長 泉谷 渉