厚生労働省が発表した「生活保護の被保護者調査(令和7年7月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯のうち、高齢者世帯が全体の55.2%を占めています。
この数字からも明らかなように、生活保護を利用している世帯の過半数はシニア層であり、多くの高齢者が経済的な困難を抱えている実態がうかがえます。
そうした高齢者の生活を支える制度のひとつとして「年金生活者支援給付金」がありますが、この給付金と生活保護は同時に受け取ることができるのでしょうか。
本記事では、「年金生活者支援給付金と生活保護」の基本的な仕組みと、併給の可否について解説します。
1. 【概要を整理】「年金生活者支援給付金制度」と「生活保護制度」の違いは?
「年金生活者支援給付金制度」と「生活保護制度」は、いずれも生活の安定を目的とした公的な支援制度ですが、その目的や支給の仕組みには明確な違いがあります。
ここでは、それぞれの制度の概要と役割を整理しながら、両者の違いを確認していきましょう。
1.1 「年金生活者支援給付金制度」とは?
「年金生活者支援給付金」は、公的年金やその他の収入が少なく、日々の生活に余裕がない高齢者世帯を経済的に支えるために設けられた制度です。
給付を受けるには、「老齢基礎年金(国民年金)」「障害年金」「遺族年金」のいずれかを受給していることが前提となり、そのうえで複数の要件を満たす必要があります。
1.2 「生活保護制度」とは?
生活保護は、日本国民が「健康で文化的な最低限度の生活」を送れないときに、その生活を保障し、自立を支援するために設けられた公的扶助制度です。
申請にあたっては、まず保有する資産を生活費に充てることや、働ける場合には就労によって収入を確保することが前提となります。
それでも世帯全体の収入が最低生活費を下回る場合に限り、生活保護が適用されます。
また、生活保護は「世帯単位」で審査されるのに対し、「年金生活者支援給付金」は「個人単位」で給付されるという点も、両制度の大きな違いといえます。