病気やけがで高額な治療費が必要になったら、誰でも不安になりますよね。医療の進歩で選択肢は増える一方、薬価や検査費の高額化も進んでいます。そんなときに頼りになるのが「高額療養費制度」。当初、今年の8月に予定されていた限度額引き上げなどの見直しは一旦見送られ、現行制度が続きます。

今回はこの高額療養費制度の基本と、実際に給付を受けるために知っておきたい「多数該当」「世帯合算」「外来特例」の3つのポイントを図解で分かりやすく解説します。

1. 【高額療養費制度】所得によって自己負担の上限額が変わるしくみ

《現行》患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額

《現行》患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額

出所:厚生労働省「第4回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会資料」

高額療養費制度とは、同じ月である1か月にかかった医療費が高額になった場合、所得に応じて設定された「自己負担限度額」(上限額)を超える分が払い戻される制度です。同じ月(暦月)でなければ合算できません。

70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)

70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

たとえば、70歳以上で年収約370万円〜約770万円(3割負担)の人が、医療費100万円の治療を受け、窓口で30万円を支払った場合を考えてみましょう。この場合の自己負担限度額は、次の計算式で8万7430円となります。

  • 自己負担の上限額:8万100円+(100万円ー26万7000円)×1%=8万7430円

制度の対象は医療保険が適用される費用(診察、薬、検査など)で、1か月単位で判定されます。

この制度には、主に2つの利用方法があります。

1.1 窓口での支払い上限化「マイナンバーカードでさらに便利」

あらかじめ保険者に申請して「限度額適用認定証」を取得し、医療機関の窓口で提示することで、支払いを自己負担の上限額までに抑えられます(一時的な全額支払いが不要)。これは入院時など、事前に高額な費用がかかることがわかっている場合に便利です。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、事前の申請なしにこの上限額までの支払いとする仕組みを窓口で利用できます。

1.2 後日払い戻し

認定証を提示しなかった場合や、月をまたぐ治療、複数の医療機関の合算などで上限額を超えた場合は、後日、申請によりその超過分が払い戻されます。