3. 半数以上が「苦しい」と回答...高齢者世帯のリアルな生活意識

厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の生活意識に関するリアルな結果を見ていきます。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯

3.1 高齢者世帯の生活意識

  • 大変苦しい:25.2%
  • やや苦しい:30.6%
  • 普通:40.1%
  • ややゆとりがある:3.6%
  • 大変ゆとりがある:0.6%

この調査結果からは、シニア世帯の暮らし向きが、経済状況によって大きく3つの層に分かれている様子が見えてきます。

まず、半数以上(55.8%)が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答し、日々の生活に経済的な厳しさを感じています。

その一方で、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯は合計してもわずか4.2%。経済的な余裕を実感できているシニア世帯はごく一握りのようです。

そして、これら両者の中間にあたるのが、40.1%を占める「普通」と回答した層です。この割合は「苦しい」層には及ばないものの、「ゆとりがある」層を大きく上回りました。

経済的な余裕があるとは言えないものの、堅実に暮らす一定数のシニア世帯が、厚い中間層を形成している様子もうかがえます。

4. 【豆知識】老齢年金、何歳からもらう?《図とグラフで分かる》繰上げ・繰下げ受給のメリット・デメリット

老齢年金の受給は原則として65歳ですが、「繰上げ」「繰下げ」も可能なことをご存じでしょうか。

ここでは、若い世代が知っておきたい「年金」の基本について、説明します。

4.1 Q 老齢年金は「繰上げ」「繰下げ」で受給可能って本当?

 →A はい、ご自身の状況に合わせて、繰上げまたは繰下げて受給開始時期を選べます!

老齢年金の受給は、原則として65歳からです。

しかし、受給開始時期は「繰上げ」または「繰下げ」を選ぶこともできるのです。

繰上げ受給とは?

65歳よりも早く年金を受け取り始める制度。年金額は繰上げ時期に応じて減額されます。

繰下げ受給とは?

66歳以降に受給を遅らせることで、年金額を増額させる制度です。

「繰上げ」「繰下げ」のどちらにもメリットとデメリットがあります。

4.2 繰上げ受給のイメージ:メリット・デメリット

繰上げ受給の減額イメージ

【グラフで分かる】繰上げ受給の減額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとにLIMO編集部作成

メリット

生活費の足しにしたい、早期リタイア後の収入源にしたいなど、早くから年金を受け取りたいというニーズに応えられます。

デメリット

繰り上げ請求をした時点に応じて、年金額が減額されます。この減額率は一生涯変わらないため、長期的に見ると受け取る年金の総額が少なくなる可能性があります。

4.3 繰下げ受給のイメージ:メリット・デメリット

繰下げ受給の増額イメージ

【グラフで分かる】繰下げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとに筆者作成

メリット

長生きする可能性が高い、老後の生活費をできるだけ増やしたい、などの理由で、将来の年金額を増やしたい方に向いています。

デメリット

受給開始年齢を遅らせる分、年金を受け取れない期間が発生します。その間の生活費をどのように確保するか、貯蓄や他の収入源など、しっかりとした計画を立てる必要があります。

年金受給開始時期の決定は、ご自身の健康状態や家計などを総合的に考えて、慎重に行うことが大切です。

5. まとめにかえて

今回は、公的年金制度の基本的な知識から、会社員だった男性が受け取る厚生年金のリアルな受給額分布、そして高齢者世帯の生活意識という3つの重要なデータをご紹介しました。

会社員男性の厚生年金(国民年金含む)の平均は月額約16.6万円で、全体の約3分の2(66.8%)が月額15万円以上を受け取っているという事実は、一つの目安となるでしょう。

しかし、その一方で、高齢者世帯の半数以上(55.8%)が「生活が苦しい」と感じているという調査結果は、年金収入があっても安心できない、厳しい現実を示しています。

このギャップの背景には、年金額の個人差に加え、物価上昇や医療費・介護費などの負担増が背景にあることが考えられます。

40歳代、50歳代の働き盛り世代が、まず取り組みたいことは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用し、ご自身の正確な年金見込額を把握することです。そして、公的年金を老後収入の「土台」と位置づけ、不足する金額を明確にする必要があります。

その不足分を補うために、働き方の見直しや、新NISAなどを活用した効率的な資産形成も選択肢に入れ、具体的な計画を立てることが大切です。

ご自身、そしてご家族の将来に向けた準備を本格的にスタートしてみてはいかがでしょうか。

参考資料

マネー編集部年金班