5. 老後に受けとる年金は「確定申告」が必要?
公的年金は「雑所得」に分類されますが、一定の条件を満たす場合には「確定申告不要制度」が適用され、確定申告をおこなう必要がなくなります。
5.1 確定申告が不要となる条件とは?
以下の両方に該当する場合、計算の結果、納税額がある場合でも所得税等の確定申告は不要です。
- 公的年金等(※1)の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※2)が20万円以下である
※1 国民年金や厚生年金、共済組合から支給を受ける老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金、老齢共済年金)、恩給(普通恩給)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金など
※2 生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金など
ただし、所得税の還付を受けたい場合(※3)は確定申告が必要となります。
また、所得税の確定申告が不要な場合でも、生命保険料控除や地震保険料控除など、源泉徴収票に記載されていない控除を適用したいケースや、公的年金などに係る雑所得以外の所得があり住民税の申告が必要となるケースがあります(※4)。
不明な点はお住まいの市区町村に問い合わせましょう。
※3 公的年金から源泉徴収された所得税を、医療費控除や雑損控除などにより取り戻したい場合
※4 所得税の確定申告をすれば、その情報が市区町村に送られるため、改めて住民税の申告をする必要はありません
5.2 確定申告はスマホでOK!令和7年分からさらに便利に
令和7年(2025年)分の確定申告は、スマートフォンとマイナンバーカードの連携が進み、さらに簡単になります。
スマートフォンのマイナンバーカードを利用すれば、マイナンバーカードをスマホで読み取らなくても、申告書の作成・e-Tax送信が可能です。
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で案内に沿って入力すると完成。自動計算機能によって計算ミスも防げます。
また、マイナポータル連携の機能を使うと、保険料控除証明書や源泉徴収票などの情報を自動取得し、確定申告書へ反映できます。書類を集めて入力する手間が省け、確定申告にかかる時間が大幅に短縮できるでしょう。
【要注意】マイナンバーカードと電子証明書の「有効期限切れ」には気をつけよう!
便利なサービスを継続して利用するために、マイナンバーカードと電子証明書の有効期限には注意が必要です。期限切れになるとe-Taxでの手続きができなくなります。
確定申告の時期は、市区町村の更新窓口が特に混み合うことが予想されます。時間に余裕をもって早めに更新手続きをおこないましょう。
6. 公的年金は老後生活の「土台」、この上に上乗せするものを準備していこう
今回は、公的年金の「2階建て」の仕組み、年代別の平均受給額の実態、そして年金受給者の確定申告不要制度について解説しました。
厚生年金(国民年金部分含む)の65歳以上の平均月額が14万円~16万円台、国民年金(老齢基礎年金)では5万円台という数字を見て、皆様はどのように感じられたでしょうか。
「思ったより少ない」と感じた方が多いかもしれません。
また、厚生年金の男女差や、現役時代の働き方(加入制度)によって、受給額に大きな差が出る現実もご理解いただけたかと思います。
物価上昇が家計を圧迫する中、公的年金はあくまで老後生活の「土台」であると再認識することが大切です。
40歳代、50歳代の現役世代は、この土台の上に、ご自身でどれだけの資産を上乗せできるかが、ゆとりある老後生活の鍵を握ります。
まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でご自身の正確な見込額を確認し、NISAなどを活用した具体的な資産形成プランの実行に移していきましょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
- 国税庁「令和7年分の確定申告はスマホとマイナポータル連携でもっと便利に!」
和田 直子
