元気なその姿からは想像もつきませんが、実はメンドリたちは、国内の動物保護施設の1つ、「アニマル・リホーミング」からやって来ました。以前鶏卵場でケージ飼いされていたニワトリなのです。

知り合いが施設のスタッフに聞いたところでは、ケージから出してもらい、施設にやって来た時のメンドリたちはみじめな姿だったとのこと。羽は抜け落ち、爪は伸び放題、くちばしは欠けていたそうです。そしてニワトリなのに、ニワトリの習性を失っていたといいます。

スタッフの根気よい世話のおかげで、再び草を食べ、羽根を広げ、歩き、止まり木にとまり、砂浴びができるようになったのです。

引き取ろうと考えた知り合いは、まず予定している飼育エリアの写真を撮って、申し込みをしました。そしてさらに「家が都市部に位置していないか」「すでにニワトリを飼っているか」「ほかにペット動物がいるか」などの質問を受けたそうです。

隣家が近いと、鳴き声がトラブルのもとになります。ほかにすでにいるペットたちとの折り合いも考えなくてはいけません。人にとっても、ニワトリにとっても幸せであることが肝心です。こうして知り合いはメンドリ4羽を家族として迎えました。

メンドリがメンドリらしくなっていく

同施設からニワトリを引き取るのにお金はかかりません。私たち人間同様、ニワトリといっても1つの命。命には値段をつけられないという方針です。その分のお金で、受け入れ先の家庭はニワトリに必要なものをきちんと揃えるのが条件なのです。

不幸な生い立ちを経たメンドリたちだからこそ、これからは幸せにしてやりたいもの。栄養価の高いエサを、欠けたくちばしでも食べられるよう工夫するのはもちろん、羽がないために余計に感じる寒さへの対策をしたり、タカなどの天敵に狙われないよう守ったりと気を配ります。

知り合いはそれでも苦にならないと言います。むしろ世話をしてやって、メンドリがメンドリらしくなっていく姿は感動的だとのこと。見かけによらず、ニワトリはなかなか社交的な動物だそうで、家族の誰とでもすぐに「仲間」になり、意思疎通ができるとか。時々産んでくれる卵は「ご褒美」と笑います。

残念ながら、元ケージ飼いのニワトリたちはあまり長くは生きられず、5、6年の命といいます。私たちのために、おいしくて栄養価の高い卵を産んでくれたニワトリたち。余生ぐらい、人間の手でのんびりした生活を送らせてやってもいいのではないでしょうか。

クローディアー 真理