4. 老後対策は、医療費や介護費用も考慮しておこう
シニア世代の医療費は、年齢を重ねるごとにかさんでいく傾向にあります。
厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(令和4年度、医療保険制度分)」より、60歳以上の各年齢層における、1人当たりの医療費計、および診療費における「入院+食事・生活療養」の割合について見てみましょう。
4.1 【60歳以上】1人あたり医療費計の推移
- 60~64歳:38万円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:37%
 
- 65~69歳:48万1000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:40%
 
- 70~74歳:61万6000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:42%
 
- 75~79歳:77万3000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:45%
 
- 80~84歳:92万2000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:50%
 
- 85~89歳:107万1000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:58%
 
- 90~94歳:117万9000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:65%
 
- 95~99歳:125万8000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:69%
 
- 100歳以上:123万2000円
	- 「入院+食事・生活療養」の割合:70%
 
医療費計は、60歳代前半の38万円から90歳代後半の125万円超へと、約3.3倍に増加しています。この金額の増加を特に押し上げているのは、「入院+食事・生活療養」にかかる費用です。
70歳代までは通院が中心ですが、80歳以降では医療費の50%超を「入院+食事・生活療養」のための費用が占め、90歳代では70%に迫ります。
国の高額療養費制度を使っても、毎月の上限額の自己負担に加え、食事代や差額ベッド代(全額自己負担)といった出費が続く点にも留意が必要でしょう。
介護費用についても、生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、一時費用(※1)の合計額で47万円、月々支払う費用はひと月あたり9万円(※2)。もちろん実際にかかる金額は、要介護度や介護をおこなう場所によっても個人差が出ます。
※1:住宅改造や介護用ベッドの購入費など
※2:いずれも公的介護保険サービスの自己負担費用を含む
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」における、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳。長寿時代を見据えたライフプランには、入院が長期化したり、介護にかかる費用、その間の生活を支えるための視点が不可欠と言えるでしょう。
5. 安心して老後を迎えたいから「準備」を
本記事を通じて、65歳以上世帯の平均生活費、貯蓄額、そして平均年金月額という3つの重要な指標を確認しました。
これらの数字が示すのは、公的年金は生活の「土台」であるものの、決して「すべて」ではないという現実です。年金月額と生活費の差額を見て、老後の資金計画に「足りない」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、不安に駆られる必要はありません。大切なのは、これから準備を始めることです。
老後まで多くの時間がある方は、iDeCoやNISAといった税制優遇制度を活用し、時間を味方につけた長期的な資産形成が有効な選択肢となります。
老後が目前に迫る方は、生活費を見直して支出を減らす工夫をしましょう。また、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金見込受給額を把握し、年金の受給開始年齢を遅らせることや、65歳以降も働くことなど、ご自身の状況に合わせた対策を検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費」
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
和田 直子
 
        
 
        