発行部数がピーク時の約4分の1に落ち込んだとはいえ、今でも約170万部を誇る「少年ジャンプ」の存在感は圧倒的に大きいと言えます。発行部数第2位の「少年マガジン」の2倍以上あるわけですから、“さすが少年ジャンプ!”というところでしょうか。
発行部数は減ってもなお、間違いなく、漫画週刊誌の巨人と言えましょう。
漫画アプリの登場で電子版の普及が進み、2017年は紙媒体の売上を上回る
さて、こうした状況を鑑みると、政府が推進する“クールジャパン”を代表する重要コンテンツの1つである漫画の将来は大丈夫なのか?という懸念が高まります。しかしながら、最近ではモバイル普及を背景とした漫画雑誌の電子版の人気が急速に高まっています。既に2017年の漫画市場では、電子版の売上が紙媒体(漫画雑誌)を上回ったことが明らかになっています。
そして、この電子版急拡大の最大要因となっているのが、いわゆる“漫画アプリ”の登場です。漫画アプリの多くは、電子コミックのコンテンツ配信サービスを兼ねており、作品の一部を無料で閲覧できるサービスも充実しています。これが若年層に受け入れられ、その数は50以上あるのではと推測されています。
漫画雑誌の発行部数は激減しても、日本の漫画文化は不滅のようです。
漫画アプリの普及で“漫画雑誌”という概念は消滅へ?
しかし、こうした漫画アプリを通じた電子版拡大には、今後の漫画界に対する懸念も少なくありません。というのは、漫画アプリが定着することで、“漫画雑誌を読む”という行動が“漫画単品を読む”という行動に変わりつつあります。つまり、読まれない漫画はあっという間に退場する(コンテンツから除外される)ことになります。
競争原理の徹底と言えばそれまでですが、漫画雑誌が担ってきた“新たな漫画家の育成”が置き去りにされることを危惧する声も少なくありません。3月17日の「漫画週刊誌の日」は、このような問題を改めて考える機会になりそうです。
葛西 裕一