7. 年金制度の見直し、社会保険の加入拡大「将来受け取る年金額が増える?」

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、パートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大が盛り込まれました。

いわゆる「106万円の壁」の撤廃に繋がる大きな動きと言えます。

7.1 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し

2025年6月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者の人が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(←いわゆる「106万円の壁」に関連)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている

今回の改正では、このうち「賃金要件の撤廃」と「企業規模要件の撤廃」が盛り込まれました。これにより、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、いわゆる「106万円の壁」が3年以内に廃止されることになります。

また、社会保険に加入する企業規模も、10年かけて段階的に拡大され、最終的には働く企業の規模に関わらず加入するようになります。

8. 年金制度の見直し、在職老齢年金の基準額引き上げ「働くシニアを後押し」

内閣府が公表した「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数と就業率はいずれも上昇傾向に。

男女別に見た、各年齢層での就業者の割合は以下の通りです。

  • 65~69歳:男性62.8%、女性44.7%
  • 70~74歳:男性43.8%、女性27.3%
  • 75歳以上:男性17.3%、女性8.5%

一般的な年金受給スタート年齢である「65歳以降」も、働き続けるシニアは増加中です。

なお、2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、在職老齢年金制度の見直しが盛り込まれました。

これにより、2026年4月から、厚生年金をもらいながら働く際に「年金が減額される基準額」が月51万円(※2025年度の金額)から62万円へ引き上げられます。

収入増による年金カットを懸念していたシニアの「働き控え」が緩和され、より柔軟な働き方が可能になると期待されており、厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

9. 年金制度の理解、暮らしを守る大切な情報

今回は、公的年金の平均受給額について、男女別と年代別に見ていきました。また年金制度の改正についても主なポイントをみてきましたが、年金制度の理解は暮らしを守るうえで欠かせない情報になります。今後の年金ニュースにもぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

また、厚生年金は、加入期間や年収によって個人差があります。男女別にも差があるのは、女性は特に出産や育児など、ライフステージの変化が影響を受けていると考えられます。本記事で平均年金受給額を確認し、年金だけでは不十分と感じられた方も多いのではないでしょうか。

老後資金を形成していくには、時間がかかります。早めの段階から老後に備えていくことで、将来への安心に繋がるでしょう。この機会に、今のうちから老後に向けてできることを検討してみてはいかがでしょうか。

参考資料

菅原 美優