しかしながら2017年に入ると、不動産融資に過熱感が出てきたところから金融庁が監視を強化し始めました。監視強化により、銀行から見ると融資に対する手間やコストが増えるわけで、当然ながら融資に対するインセンティブは減少します。実際、銀行によるアパートローン向け融資は鈍化をし始めました(参考:貸出・マネタリー統計 19年1月、ニッセイ基礎研究所)。
アパート建設は多額の資金を必要とするため、アパートローンを組むことが通常です。つまりアパートローンの借入ができないとなると、当然アパートの建設も今までより難しくなります。サブリース業者から見ると、ビジネスの柱であるアパート建設受注や入居者数の成長率にマイナス材料となるわけです。
そんな中で2018年に起きたのが、かぼちゃの馬車の破綻とスルガ銀行の不正融資問題です。
シェアハウスであるかぼちゃの馬車を運営するスマートデイズという会社が、2018年に倒産しました。この会社は住宅系サブリース業を営んでおり、シェアハウスのオーナーに家賃保証を行っていましたが、その家賃を支払うことができず、オーナーは多額の負債を負ってしまいました。
そのオーナーに主に融資していたのがスルガ銀行です。スルガ銀行は、書類を改ざんし銀行内の審査プロセスを欺くなどし、不正に融資を行っていることが明るみになりました。
これを受けて、金融庁は不動産融資に対する監視を強化することとなりました。上記でも述べた通り、当然サブリース業者にさらなるマイナス材料となったわけです(参考:『投資用不動産、融資調査を強化 金融庁が行政方針 地銀の不正問題視』2018年9月27日、SankeiBiz)。
人口動態と空室率上昇への懸念
そもそも日本は2004年をピークに人口が減少し続けており、2050年には1億人を下回ると予想されています。にも関わらず、賃貸用アパートの新規着工はここ数年大きな伸びを記録してきました。その一因は2015年に相続税が増税されたことにあります。
サブリース業者にとって「相続税の節税効果」は、営業する際の常套文句です。たとえば、現金を5000万円そのまま相続するよりも、5000万円分の不動産を相続する方が相続税率が安いため節税効果が高いというわけです。
相続税増税が行われたことで、この節税効果が脚光を浴び、賃貸アパートの新規着工は大きく伸びました。結果、サブリース企業の株価も2015年以降大きな上昇を見せました。
しかし人口減少しているにも関わらず、住宅の供給が増えるということは空室率上昇のリスクも大きくなるわけです。サブリース業者は土地オーナーに家賃保証をしているため、空室率が高まれば家賃収入の減少により「家賃の利ザヤ」が少なくなって業績にマイナスの影響を与えます。
たしかに契約上、サブリース業者はオーナーに対して家賃保証の減額を行うことができる場合がほとんどなため、家賃保証額が家賃収入額を上回る「逆ザヤ」を回避することは可能です。しかしながらそのようなことが頻発すれば、土地オーナーから見ればアパート建設をすることの魅力が減少します。空室リスクが高まれば、結局サブリース業者の業績にはマイナス要因となるわけです。
株価は将来の業績成長の期待を反映します。以上のように、サブリース業者の業績成長へ懸念が高まるような問題や事象が起きていることが、サブリース業者の株価が低迷している要因と考えられます。
土門 善行