世界的に低金利が続くにもかかわらずハイパーインフレ(極超インフレ)になっている国といえば、ベネズエラ、南スーダン、コンゴがトップ3。2017年の年間インフレ率はそれぞれ、1100%、188%、42%となっており、日本が年間2%のインフレを達成でずに四苦八苦しているのが不思議なくらいです。
足元ではベネズエラのインフレ率は250万%超と言われており、インフレが亢進するスピードのすさまじさが分かります。
ちなみに、このインフレ率を物価の値上がり倍率に換算すると、ベネズエラの物価は1年間で12倍、南スーダンは2.9倍、コンゴは1.4倍になる計算です(ベネズエラのインフレ率が250万%なら、物価は年間で2万5000倍)。
さて、インフレになる理由は様々ですが、インフレとは需要に比べてモノが少ない状況で、物価が上がり続けることですね。
ベネズエラの場合は、原油市況が低迷して外貨を稼ぐことができず国内生産が低迷し(モノが少なくなる)、その上現政権が現金ばらまき政策を広めたおかげで、モノは少ないのにお金が増え、物価上昇に拍車がかかったというわけです。
これを逆に見ると、モノの価格が2万5000倍になるということは、お金の価値が2万5000分の1になるということです。モノの本質的な価値が変わらないとすれば、お金の価値はインフレ率分減価されていくわけですね。
ではこれを、通貨の価値がどう変わるかという観点で見ていきましょう。
たとえば今から1年前の今日、1円=1ベネズエラ・ボリバルだったとしましょう。その後1年間でベネズエラのインフレ率は年間250万%まで亢進し、日本のインフレ率は0%(インフレはない)だったとします。この場合、1年後の今日の各通貨の価値はこのようになります。
1年後の円:1円 → インフレ率は0%なので、価値は変わらず。
1年後のベネズエラ・ボリバル:0.00004(1÷25000) → インフレ率が250万%なので、価値は2万5000分の1になる
1年後の為替レート:1円=25,000ベネズエラ・ボリバル(1÷0.00004)
つまり、1年前は1円のモノを買うためには1ベネズエラ・ボリバル紙幣を1枚払えばよかったのですが、今日では250万%というハイパーインフレのため、1円のモノを買うためには25,000ベネズエラ・ボリバルの札束が必要なわけです。
モノの価値は本質的に変わらないのに支払う紙幣ばかり増え、インフレ国の通貨は弱くなるということがお分かりになりましたでしょうか。
実はこれ、インフレと同じく、金利が高い国の通貨も安くなるのですね。
米ドルと円を例に考えてみましょう。現在、1ドル=110円、米国の金利は年間3%、日本の金利は0%だとします。1年後の1ドルは金利が付いて1.03ドルに、円は金利が付かないので110円のままです。この条件で1年後の為替レートを計算すると、
110円÷1.03ドル=106.8円
つまり、1年後のドル円為替レートは1ドル=106.8円になり、現在の1ドル=110円と比較すると、円高ドル安になっていることがお分かりになるでしょうか。
このように、インフレ率や金利がより高い国の通貨は安くなり、インフレ率や金利が低い国の通貨は高くなるのがセオリーです。
もっとも、日本では預貯金の金利はほとんどゼロで困ったものなのですが、それは裏返せばインフレがない証拠。日銀が頑張ってインフレ率を2%に上げようとしていますが、一般庶民のお金が預金に滞留し、モノがあふれている日本ではそうそう簡単にインフレにはならないのです。